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《伝教大師最澄1200年大遠忌記念》
伝教大師最澄が説く
“一隅を照らす”に込めた想いとは?
東京国立博物館 特別展「最澄と天台宗のすべて」

2021.10.16
<small>《伝教大師最澄1200年大遠忌記念》</small><br>伝教大師最澄が説く<br>“一隅を照らす”に込めた想いとは?<br><small>東京国立博物館 特別展「最澄と天台宗のすべて」</small>

大遠忌のいまだからこそ知りたいことがひとつある。生涯を閉じてなお1200年の長きに渡り、教団を存続させた最澄とはどんな人物だったのか。現代のビジネスマンにもぜひ知ってもらいたい「一隅を照らす」という教えに込めた想いに迫ります。

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国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 最澄
年代:平安時代(11世紀) 所蔵:一乗寺(兵庫)
※特別展「最澄と天台宗のすべて」出品作
展示期間:10月12日(火)〜11月7日(日)(東京会場)
展示会場:東京、京都

伝教大師最澄は、琵琶湖の西岸・近江国(現在の滋賀県)坂本の生まれ。信心深い両親の影響でわずか12歳にして仏門をたたき、14歳で得度した。さらに奈良の都で研鑽を積み、東大寺で250戒にも及ぶ具足戒を授けられ、一人前の僧侶となる。

その後、故郷に戻った最澄は、たった一人で未開の霊峰比叡山に分け入った。このとき、まだ19歳。後に根本中堂の礎となる一乗止観院を建て、一刀三礼で本尊の薬師如来を手ずから刻み、灯明に火を灯した。

「そこで詠まれた歌が新拾遺和歌集に残されています。『明らけく後の仏の御世までも 光りつたへよ法のともしび』。これはお釈迦さまが亡くなり56億7000万年後に弥勒菩薩がお出ましになる日まで、灯火が世の中を照らすようにと願いを込めたもの。1日たりとも絶えず輝く『不滅の法灯』のはじまりです」と延暦寺参拝部主事の星野最宥さん。

延暦寺総本堂の根本中堂の内陣で輝き続ける不滅の法灯。信長の焼き討ちの際には山形の立石寺に分灯された火を移し、難を逃れた

当時、最澄がどれほどスーパーエリートでも、彼一人の力では1200年もの歴史を紡げない。組織の存続・発展の鍵を握るのは人材育成。そのことに早くから気づいていた最澄は、入山当初から比叡山を人づくりの山にすると誓いを立てていた。

「伝教大師最澄さまが嵯峨天皇に宛てた書物に、『一隅を照らす。これすなわち国宝なり』という有名な一文があります。“一隅を照らす”とは、自らが光となり周囲を照らすという意味。すなわち、与えられたその場所で全力を出し切って、必要とされる人間になりなさいということです」

このような人材こそが“国の宝である”と最澄は述べている。さらに言うなら、よく発言し、理解力を伴ってよく行動する者を“国宝的人材”とし、日本の仏教界を担う後進に育て上げた。


国宝 天台法華宗年分縁起(部分)
最澄筆 年代:平安時代(9世紀) 所蔵:延暦寺(滋賀)※特別展「最澄と天台宗のすべて」出品作 展示期間:10月12日(火)〜10月31日(日)(東京会場)展示会場:東京、九州

今年10月から東京国立博物館を皮切りに、全国3都市で大遠忌の特別展「最澄と天台宗のすべて」が開催される。平安時代に誕生した稀代のリーダーの生涯から強い組織の育て方、自覚が芽生える働き方をぜひこのチャンスに学んでほしい。

2021年10月、東京国立博物館で
最澄の教えに触れられます!

全国から天台宗ゆかりの国宝・重要文化財をはじめ、仏像、絵画、書、工芸品などを一堂に集めて展示。中には各寺院で秘仏とされる仏像も含まれている。門外不出の貴重な宝物に出会えるまたとない機会です。

伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期|2021年10月12日(火)〜11月21日(日)
会場|東京国立博物館 平成館
住所|東京都台東区上野公園13-9
開館時間|9:30〜17:00
休館日|月曜
観覧料|一般2100円(前売日時指定券)※事前予約制
問い合わせ|050-5541-8600(ハローダイヤル/9:00〜20:00)
https://saicho2021-2022.jp

※本展は2022年に九州国立博物館、京都国立博物館に巡回予定です。
※展示作品、会期、展示期間、開館日、開館時間、観覧料、販売方法等については、今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は展覧会公式サイトなどでご確認ください。

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text: Junko Nakao photo: Mariko Taya
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」

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