日本の都市は緑地が少ない?
都市開発のキーは“緑化”にあり!
|みどりのあるまちづくり①

実は日本の都市は世界の中でも、緑地の充実度が低いということをご存じでしょうか? 「森記念財団都市戦略研究所」の「世界の都市総合力ランキング(GPCI-2023)」で緑地の充実度世界一はオーストラリア・メルボルン。対して東京はなんと40位。日本のみどりの現状を見てみよう。
日本の都市の緑地を世界48都市と比較
〈環境全体の評価では東京・福岡は中間層に〉

「森記念財団都市戦略研究所」の「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)は、世界の主要都市の「総合力」を経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野と70項目の指標で評価し、順位づけしたもので、2008年以降、毎年発表されている。
東京は総合ランキングの上位常連。2016年からは、3位の座を守り続けている。2023年版(GPCI-2023、対象48都市)は経済10位、研究・開発4位、文化・交流5位、居住3位、環境16位、交通・アクセス8位。環境だけがトップ10から唯一外れてしまっているのが現状だ。
〈しかし、緑地の充実度ではランキング下位に〉

環境は、持続可能性(環境への取り組み、再生可能エネルギー比率、リサイクル率)、空気環境(1人あたりのCO₂排出量の少なさ、空気のきれいさ、気温の快適性)、都市環境(水質の良好性、緑地の充実度、都市空間の清潔さ)という3グループ・9項目の指標で評価される。このうち、東京の順位が最も低いのは緑地の充実度で40位。総合で37位の大阪も、緑地の充実度では46位と順位が下がる。
都市のみどりの割合の推移

同指標で1位のメルボルンは、街の至るところに公園や緑地があり、〝ガーデン・シティ〟とも呼ばれる。2012年からは、気候変動や人口増加、都市の温暖化などの課題解決を目指し、「Urban Forest Strategy」(都市森林戦略)に取り組み、その中で2040年までに樹冠被覆率※1を22%から40%まで増加するという目標を掲げている。
さらに、市内に200カ所以上ある路地とそこにある建物の壁面を緑化するプロジェクト「Green Your Laneway」(路地をグリーンに)も進めている。
※1 土地の面積に対し枝や葉が覆う面積の割合

一方、東京の樹冠被覆率は2013年時点で9.2%、2022年には7.3%にまで減少したという調査結果もある※2。
また、この10年では、23区で公園・緑地が微増しているものの、多摩部で農用地や樹林などが減少しているため、全体の緑被率は減少。ほかの政令市や地方都市も同じく減少傾向にある。各都市の魅力を増すためには、みどりの充実度を上げていくことがキーとなりそうだ。
※2 東京大学新領域 都市・ランドスケープ計画(寺田徹)研究室
〈東京のみどりの割合は10年で減少傾向〉

近年のみどり率は横ばいで推移しているものの、1991年から2016年の25年間で、農地3000ha以上(山手線内側の約半分に相当)が失われるなど、都内のみどりは減少傾向にある(参考|東京都都市整備局都市づくり政策部緑地景観課「東京の緑」)。
〈中央区では公園などの増加により緑被率が上昇〉

都心部では、みどりの創出や保全の取り組みを評価する仕組みにより緑化が促進。開発が進む中央区、千代田区、港区では緑被率が増加している(参考|東京都都市整備局都市づくり政策部緑地景観課「東京の緑」)。
〈政令市や地方都市でも緑被率は減少中〉

2018~2020年の衛星画像解析データでは、全国の市街化区域など全体における緑被率は約24%(参考|「都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する基本的な方針」)。東京の多摩部同様、農地や樹林地の減少などにより、政令市、地方都市でも緑被率は減少傾向にある。それを受けて、緑化の減少に歯止めをかけるための取り組みを行っている都市もある。
横浜市では2009年度から「横浜みどりアップ計画」として緑化計画を推進。名古屋市は2008年に「緑化地域制度」、宮崎市は2003年に「宮崎市緑のまちづくり条例」を策定している。また、水戸市では市民の意見を公募で集め、「水戸市緑の基本計画(第2次)」の策定を計画中。
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text: Miyu Narita
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」