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《東京国立博物館》
日本で最も長い歴史を誇る博物館【後編】

2022.10.18
《東京国立博物館》<br><small>日本で最も長い歴史を誇る博物館【後編】</small>

2022年に創立150周年を迎えた東京国立博物館。10万㎡以上という広大な敷地面積を誇り、敷地内には重要文化財指定の建物を含む6つの展示館に加え、四季折々の自然が楽しめる美しい庭園が広がっている。

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本館
日本美術の多彩な魅力を体感する
2階では日本美術の変遷を時代別に展示し、日本美術の豊かな魅力を凝縮。1階では彫刻、近代美術、刀剣など、より深く知りたいジャンルをじっくり鑑賞できる流れとなっている。アイヌ文化や琉球文化の歴史資料も多く、世界的にも重要なコレクションだ

表慶館
建物自体を“美術品”と呼べる明治末期の代表建築
片山東熊の設計により1909年に開館。中央と左右にあるドーム屋根、製図用具や楽器をモチーフにした外壁上部のレリーフといった外観の美しい意匠に加え、内装にもさまざまな趣向が凝らされている。現在は特別展や催し物の開催時のみ開館

東洋館
独自に発達した東洋の美の世界を堪能
「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトに、中国、朝鮮半島、東南アジア、インド、エジプトなどの美術、工芸、考古遺物を展示。秋からは今年で9回目となる恒例企画「博物館でアジアの旅」を開催。今回のテーマである「発見」にちなんだ名品を随所で紹介する。

法隆寺宝物館
貴重な法隆寺献納宝物の数々を間近で鑑賞できる
1878年に法隆寺から皇室に献納され、戦後に国有となった約300件の文化財を収蔵・展示する施設として開館。金銅仏、伎楽面(ぎがくめん)、押出仏(おしだしぶつ)、仏画、経典、仏具などがあり、11件が国宝、182件が重要文化財に指定されている。7世紀の宝物が数多く含まれており、「正倉院宝物と双璧をなす」と高い評価を受けている

平成館
教科書で目にしたアレに出合えるかも?!
1階の考古展示室は通史展示とテーマ展示からなり、旧石器時代から江戸時代までの考古遺物が並べられている。通史展示は壁沿いに時代別で展開、内側の空間ではさまざまなテーマによる展示が行われ、大人も子どもも楽しく鑑賞できる構成。このほか1階には企画展示室や大講堂もあり、2階は特別展専用の展示室となっている

黒田記念館
日本近代洋画の父と称される黒田清輝の作品を展示
洋画家・黒田清輝の遺言により、彼の遺産によって建てられた。黒田清輝の油彩画約130点、デッサン約170点、写生帖などを所蔵し、年に3回公開される特別室では、代表作を展示。岡田信一郎設計の建物は、中世ヨーロッパの貴族の館を参照したとされる

収蔵品が見られる6つのギャラリーで構成

趣の異なる6つの展示館で構成された東京国立博物館は建築も魅力。現在の本館は1938年に建てられたもので、渡辺仁が設計した。コンクリート造に瓦屋根をのせた帝冠様式の代表建築とされ、重要文化財に指定されている。重厚感ある空間で、日本の美術工芸品が共鳴し合うさまは実に素晴らしい。宮廷建築家の片山東熊が手掛けた表慶館も重要文化財指定を受けており、明治期を象徴する建物として知られている。

東洋館は谷口吉郎による設計。半階ずつ上り展示室をめぐる空間構成で、東洋諸国の美術工芸品を展示している。吉郎の息子である谷口吉生が設計したのが、法隆寺宝物館だ。法隆寺宝物館は光あふれるエントランスとは対照的に、展示室は文化財保存のため外光を遮断。静寂の中宝物が鎮座している。平成館は昭和建築の本館との連続性を意識し、周囲の環境に調和した建築。敷地の西側には岡田信一郎の設計による黒田記念館が建ち、洋画家黒田清輝の作品をいまに伝えている。

どこから鑑賞するのか迷った際は、「日本美術の歴史」、「東洋美術を巡る」、「仏像伝来の足跡」など、興味のあるテーマに沿って見学するのがおすすめだ。東京国立博物館は探究心を培う、新たな発見に満ちている。

実は庭園も素晴らしい
本館北側に広がる庭園には、池を中心に配された5棟の茶室があるほか、数種類の桜や蓮、銀杏、紅葉などが見られ、四季を通じて美しい景観をつくり出している。5代将軍徳川綱吉が法隆寺に献納した五重塔や、第2回内国勧業博覧会の碑、初代博物局長(館長)町田久成の顕彰碑などもあり、のんびりと散策するのも一興だ

学びを深め体験できるワークショップや
ガイドツアーも

今年度、毎月第4日曜日は「トーハクキッズデー」として、当日の受付で参加できる子ども向けのイベントを開催。展示中の作品に関連した昔話の読み聞かせを行う紙芝居のイベントなどが、毎回好評を博している。また事前申込制で、同館の研究員が講師を務める大人向けの講演会も実施。詳しくはウェブサイトで事前確認を

カフェ・レストランも充実
「ホテルオークラレストラン ゆりの木」では、「オテルオークラ」の技が生きる多彩なメニューが味わえる。天ぷら、刺身、煮物などの和食を詰め込んだ「東博弁当(2350円)」は、外国人観光客にも人気だとか。ほかにも「上島珈琲店 黒田記念館店」、キッチンカーの出店などもある(一部休業中)

ホテルオークラレストラン ゆりの木
Tel|03-5685-5125
営業時間|11:00〜17:00(L.O.16:20)
定休日|東京国立博物館休館日に準ずる

東京国立博物館
住所|東京都台東区上野公園13-9
Tel|050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間|9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日|月曜(祝日の場合は翌平日休)
ほか、臨時休館、臨時開館あり
料金|一般1000円、大学生500円(特別展は別料金)
施設|庭園、レストラン、カフェ、ショップ
 
 

  

text: Nao Ohmori photo: Shinsuke Matsukawa
Discover Japan 2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

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