直島に現れた2つのアートシンボルとは?
瀬戸内海に浮かぶ直島は、「アートの聖地」とまでいわれる島。草間彌生をはじめとするアーティストの作品が自然のなかに溶け込む形で多数存在し、毎年多くの観光客を呼び寄せている。
すでに見どころであふれる直島に、今年また新たな顔が加わった。「直島パヴィリオン」と「直島ホール」。直島という環境を存分に生かした個性的な2つの建築物は、まさに体感するアート! 一度は訪れたい、注目の2作品を紹介しよう。
“作品の中”を歩き回って、腰かけて。「直島パヴィリオン」
1点目に紹介するのは、建築家・藤本壮介氏が手がけた「直島パヴィリオン」。大小27つの島々から成る直島の「28番目の島」というコンセプトでつくられたという、浮遊感のある建物だ。床に置かれているというより、島のように浮かんでいる、という方が正しいような、軽やかなその建築物の内部に柱はない。床から壁、天井までゆるやかにつながっている。繋ぎ合わせた約250枚のステンレスメッシュから成る内部には誰でも入ることができ、そのゆるやかな起伏によって、歩けば実際に浮遊しているような不思議な体験を味わうことができる。
設計者である藤本氏はいう。
「周囲の風景に対して開放的であると同時に、包まれるような居心地のいい感覚をつくり出したいという思いからこの構造に至りました」
藤本氏の「その時々で腰かけたり、歩き回ったりしながら、自分なりの居場所を見つけてほしい」ということばのとおり、「直島パヴィリオン」にはコーヒーを片手に読書をする人も。ライトアップされた姿も格別に美しいので、ぜひ時間を作って夜まで堪能したい。
一面に塗られた真っ白な漆喰、“天井に穴”!? 自然が息づく「直島ホール」
町民のための施設としてつくられた「直島ホール」は、三角屋根が特徴的な建物。中に入れば一転、外観からは想像もつかないような、天井に穴の開いた白く輝く空間が現れる。一面に漆喰が塗られた空間は、おそらく日本最大級。圧倒的な存在感でこちらに迫ってくる。
“天井の穴”にはワケがある―2年半の現地調査による自然を知り尽くした設計
この直島ホールの特徴は、直島の自然を生かしていること。だが、それは漆喰の天井や総ヒノキの床、土壁など、建材に天然素材を使用していることだけではない。建築家・三分一博志氏は設計にあたって、約2年半にもわたり直島の調査を実施。中世から受け継がれてきた自然に寄り添う直島固有の建物のつくりを導き出した。
その結果、直島ホールに施したのは、屋根に風穴を設置するという大胆な設計。この地に特有の南からの風が抜けることで、自然と換気がなされるという自然空調の考えを取り入れた。ほかにも地下水を利用して空気を冷やす仕組みなど、土地の力と伝統を落とし込んだデザインが散りばめられている。建築が地球の一部になることをテーマに設計を行う三分一氏ならではの、直島へのアプローチだ。
いかがだろうか。どちらも鑑賞者が体験することで完成する作品だ。ぜひこの夏、瀬戸内に足を運び、自分の目と体で、建築物が自然とともにある姿を、感じてみてほしい。