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瀬戸内海という名の芸術作品に浮かぶ名旅館「ガンツウ」。
瀬戸内海をゆく宿「ガンツウ」を大解剖!

2019.10.12
<b>瀬戸内海という名の芸術作品に浮かぶ名旅館「ガンツウ」。</b><br>瀬戸内海をゆく宿「ガンツウ」を大解剖!
これまでの豪華客船とはひと味違う魅力があるガンツウ。スタイリッシュな旅館のような空間が、瀬戸内海をクルージングする

瀬戸内海をめぐる客船「ガンツウ」。木材を多用した船らしからぬ姿は、まさに海に浮かぶ宿。その魅力を4回にわたって紹介する《瀬戸内海をゆく宿「ガンツウ」を大解剖!》の初回。

切妻屋根が印象的なガンツウ。屋根はチタン亜鉛合金製。側面には開閉式のポンツーン(浮き桟橋)を備え、そこからテンダーボートに乗り換え瀬戸内の港町や島々に寄港する

「ガンツウ」とは、尾道でイシガニを指して使われる愛称。ワタリガニの一種でいい出汁が取れるため、おもに地元で味噌汁などに入れて食べるのだとか。この船には、地元で親しまれている滋味深いカニのように、ゲストにも地元の人にも愛される存在となるようにという意味が込められている。

そのコンセプトからもわかるように、ガンツウはこれまでの豪華客船とは一線を画す。豪華客船が大型ラグジュアリーホテルの船版だとすれば、ガンツウは小さな名旅館が海に浮かんでいる趣。外観は決して華美ではなく、人の営みのある瀬戸内の海になじむように設計されている。そして地元の人に瀬戸内海を案内してくれるように、クルーたちがゲストをもてなしてくれる。

障子があしらわれ、モダンな茶室を思わせるラウンジルーム。炉が切られたカウンターでは抹茶とともに、目の前でつくられる季節の練り切りや最中がいただける

乗船時刻までは、船が発着するベラビスタマリーナのラウンジで過ごす。このラウンジは、瀬戸内海を水陸両用機で空から周遊する遊覧飛行のゲストと、ガンツウの宿泊客専用。ロビーはボーディングブリッジ仕様で、ますます旅の気分を盛り上げる。

船に一歩入ると、装飾を排除したモダンな空間のエントランスロビーが出迎える。船内でのチェックイン作業は特になく、直接客室に案内される。わずか19室の客室は、全室50㎡を超えるスイートルームで、部屋タイプは4種。露天風呂を備えた部屋もある。

ザ・ガンツウスイートの露天風呂は、檜風呂の柔らかな湯に浸かりながら潮風を感じる、なんとも贅沢なプライベート空間。湯上がりには、バスローブをまとってテラスへ

どの部屋にも窓が大きくとられ、目の高さに水平線を眺める。海が見えるというより、海に包まれているという感覚のほうが近い。オープンエアのテラスから眺める景色は文字通り刻一刻と変わっていく。

稜線が幾重にも連なってグラデーションを描く島々、しまなみ海道をくぐり抜け真上に見上げるダイナミックな風景、のように対岸に浮かぶ高松の街並み……、1秒として同じ景色はないため、飽きることはない。

オープンデッキは、ドリンクを楽しむ、朝食をとるなど思い思いの時間を過ごせるスペース。夕焼け色に染まる瀬戸内海に、しばし息をのむ

夕暮れ時になると、自然とゲストがオープンデッキや縁側に集まりはじめる。この時間には船の錨も下ろされ、瀬戸内海に沈む夕陽が織りなすスペクタクルがスタート。その終焉と時を同じくして、漁船や島の裾野にはひとつ、ふたつと明かりが灯される。

これら瀬戸内の風景をひとつの芸術作品と考えると、ガンツウは作品の中に入りこんで鑑賞できる唯一のアプローチともいえる。瀬戸内という作品になじむように、あるいは、もともとその一部であったかのように風景の中に浮かぶ。

縁側では、切妻屋根の軒から瀬戸内の風景を堪能できる。ゲストが腰を下ろした際に、ガラス越しではなく直接海が見えるよう一段高く設計されている

豪華客船やクルーズトレインとは異なる世界観を提案するガンツウ。瀬戸内のためにつくられた小さな客船は、新時代のラグジュアリーに向けてかじを取る。

文=山本章子 写真=中村香奈子
2017年11月号 特集「この秋、船旅?列車旅?」

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