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「ガンツウ」大解剖!それは瀬戸内海に浮かぶ日本旅館

2019.10.28
「ガンツウ」大解剖!それは瀬戸内海に浮かぶ日本旅館

瀬戸内海をめぐる客船「ガンツウ」。これまでの豪華客船とはひと味違う、木材を多用した船らしからぬ姿は、まさに海に浮かぶ宿だ。今回は「ガンツウ」の魅力をご紹介。

浮かぶ名旅館「ガンツウ」とは?

切妻屋根が印象的なガンツウ。屋根はチタン亜鉛合金製。側面には開閉式のポンツーン(浮き桟橋)を備え、そこからテンダーボートに乗り換え瀬戸内の港町や島々に寄港する

「ガンツウ」とは、尾道でイシガニを指して使われる愛称。ワタリガニの一種でいい出汁が取れるため、おもに地元で味噌汁などに入れて食べるのだとか。この船には、地元で親しまれている滋味深いカニのように、ゲストにも地元の人にも愛される存在となるようにという意味が込められている。

そのコンセプトからもわかるように、ガンツウはこれまでの豪華客船とは一線を画す。豪華客船が大型ラグジュアリーホテルの船版だとすれば、ガンツウは小さな名旅館が海に浮かんでいる趣。外観は決して華美ではなく、人の営みのある瀬戸内の海になじむように設計されている。そして地元の人に瀬戸内海を案内してくれるように、クルーたちがゲストをもてなしてくれる。

木と潮の香りに包まれるシンプルモダンな空間

90㎡の広さを誇るガンツウスイート。唯一、進行方向に窓がある特別室で、ベッドルームからも両サイドに向けて流れゆく景色を眺めることができる

ガンツウのデザインは、「竹林寺納骨堂」や「阿佐ヶ谷の書庫」で知られる建築家の堀部安嗣さん。船内は木材をふんだんに使ったシンプル・ラグジュアリーな空間で、木の温かみとすがすがしい香りに包まれる。無駄な装飾が一切なく、質のよい木の風合いが最大限に生かされているのも印象的。

瀬戸内の海、土、人の豊かさを味わう至福の食事

ある日の食材は、アコウ、メバル、ホゴメバル、アオリイカ、牛ヒレ、イチボなど。ゲストは好きなものを好みの調理方法で

瀬戸内の食の楽しみといえば、なんといっても海の幸。瀬戸内海は浅瀬が多く、海の底まで光が届くため、プランクトンが発生しやすく、小さなエビやカニ、小魚も豊富に育つ。それらを餌にするため魚介類の味わいが深くなる。

ガンツウでは、港から持ち込む食材を使用するほかに、その日に揚がった魚を船の上で直接漁師から受け取る。何が揚がるかはその日の“お楽しみ”。地元の人々とこういった信頼関係を築けることも、この船の強みだ。

地元の人々と交流も楽しめる!
船外体験の魅力

靖国神社の大鳥居や日本銀行本店などに使用されている良質の花崗岩に恵まれた北木島。地元の人との交流も魅力

ガンツウではアクティビティが多数用意されており、船を降りて瀬戸内の島々をめぐる船外体験も豊富。航路によって行き先は異なるが、瀬戸内の日常を垣間見ることができるのが「朝さんぽ」だ。

鞆の浦や尾道といった古い町並みの残る港町、古くから採石で栄えた北木島など、どの航路にも見どころのあるスポットが多く、瀬戸内の魅力がひとつではないことがよくわかる。

「ガンツウ」での船旅は、スタイリッシュな旅館のような空間に身を置き、魅力たっぷりの瀬戸内海を存分に堪能できる。とびきりの贅沢を味わおう。

2017年11月号 特集「この秋、船旅?列車旅?」

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