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グリーンインフラとは?
都市緑化がもたらす持続可能な社会
|みどりのあるまちづくり②

2025.4.21
グリーンインフラとは?<br>都市緑化がもたらす持続可能な社会<br><small>|みどりのあるまちづくり②</small>

みどりあるまちづくりは、都市にどんな未来をもたらすのか?2024年11月に運用がはじまった、国土交通省の「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」を通して、みどりのもつ価値を考える。今回、国土交通省 都市局 都市環境課の酒井翔平さかい しょうへいさんにお話を伺い、みどりを増やすための取り組みについて学ぶ。

国土交通省 都市局 都市環境課
酒井翔平(さかい しょうへい)
北海道生まれ。2008 年、北海道大学大学院農学院を修了、国土交通省(造園職)入省。公園や都市計画、都市農地に関する業務やケニアでの勤務等を経て、2024年より現職。

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〈知っておきたいキーワード〉
「グリーンインフラ」とは?
緑地や河川、農地などの自然がもつ多様な機能(CO₂の吸収、生物の生息・生育の場の提供、雨水貯留・浸透による防災・減災、景観形成、心身のリラックスなど)を、社会資本整備や土地利用といったインフラのハード・ソフト両面に活用するという考え方。都市や環境のさまざまな課題を解決し、持続可能で魅力ある国土や地域の実現を目指す。

TSUNAG認定でみどりの価値を見える化する!

「優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)」は、グリーンインフラとして多様な機能をもつ都市の緑地の活用などの推進に取り組む「まちづくりGX」の一環として、「都市緑地法等の一部を改正する法律」に基づいて創設された。緑地の「質」と「量」の観点から、民間事業者などによる良質な緑地の確保の取り組みを評価・認定する。この制度の目指すところについて、国土交通省都市局都市環境課の酒井さんに話をうかがった。

「環境や健康への効果など、みどりのもつ役割の大きさが世界的に再認識されているところですが、日本の都市の緑地は減少傾向にあります。そこには、みどりの価値はわかりづらいため、その価値が市場経済の中では評価されず、その確保が限定的になっているという背景があります。TSUNAGは、良質な緑地確保の取り組みの価値を国として評価・認定し、“見える化”することで、市場の原理で、緑地の確保が進むことを目指しています」

対象は、新たに緑地を創出・管理する事業と、既存緑地の質の確保・向上に資する事業に関する計画で、樹林地、草地などの緑地(屋上・壁面緑化、農地など)を含む敷地全体が評価・認定される。

審査にあたっては「気候変動対策」、「生物多様性の確保」、「ウェルビーイングの向上」に加え、これらを通じて期待される「地域の価値向上」と、「先進的取り組み」を、「緑地の質」として合計150点満点で点数化し、「緑地の量」を加味して評価。さらに「マネジメント・ガバナンス」、「土地・地域特性の把握・反映」の適合判定を行う。要件を満たした上で、緑地の質として合計点数50点以上を得ると、評価レベルに応じて3段階でランクが付与される。

「都市の緑地はまちづくりのキーのひとつとして今後も進展が見込まれます。日本が後追いではなく、世界をリードしていくことも大事な視点だと考えています。いずれは、国際基準として日本から世界に発信していきたいと思っています」と酒井さん。

愛称のTSUNAGには、みどりのもつさまざまな価値を“見える化”することで、みどりと人々、みどりと都市、みどりと社会、みどり同士の”つながり”を生み出し、未来につなげるという想いが込められている。

「みどりは生き物なので、つくって終わりではなく、時間の経過による変化とともに育んでいくことが重要です。今後、みどりを活用したまちづくりを進めるにはこれらの理解が必要で、先行指標であるTSUNAGを通して、その理解が広がることを期待しています」

TSUNAGがもたらすつながりにより、みどりはさまざまな機能を発揮する。そしてその先に、豊かで持続可能な未来が続いている。

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text: Miyu Narita
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」

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