ARTS & CRAFTS

共創する場としての未来の学び舎が完成
大阪芸術大学アートサイエンス学科新校舎

2018.12.15 PR
共創する場としての未来の学び舎が完成 <br/>大阪芸術大学アートサイエンス学科新校舎

テクノロジーを駆使したエンターテイメントが世間を賑わせて久しい。その基礎となるアートとサイエンス、2つの異なる分野をつなげ、未来のクリエイターを育成する教育の場が大阪芸術大学に誕生。拠点となる新校舎がこのたび竣工し、お披露目となるイベントが行われた。

1957年に大阪美術学校として設置以来、数々の著名人やクリエイターを輩出する、西日本を代表する総合芸術大学である大阪芸術大学。2017年4月、新たに創設されたアートサイエンス学科は、デジタル化、情報化が進む現代において、芸術、情報、社会という3つの領域を横断しながら、これまでの大学教育の枠にとらわれない21世紀型の次世代クリエイターの育成を目的に掲げている。
これからの社会に求められる最先端の人材を育成するアートサイエンス学科にふさわしい学び舎として、学科設立2年目で新校舎が落成。この度、その竣工記念のテープカット、記念講演、アートサイエンス学科の客員教授陣によるパネルディスカッションなどが行われた。

アートサイエンス学科には、関連する分野を牽引する、多彩な顔ぶれが客員教授として名を連ねる。たとえばマサチューセッツ工科大学メディアラボ副所長の石井裕氏、チームラボ代表の猪子寿之氏、メディア・アーティスト、アルスエレクトロニカの総合芸術監督ゲルフリート・ストッカー氏、情報系の論客としても知られるメディアアーティストの落合陽一氏などだ。
竣工式当日には、石井氏、猪子氏らとともに客員教授を務めるNAKED Inc代表村松亮太郎氏、インタラクティブメディア研究者の筧康明氏が参加し、塚本邦彦学長、塚本英邦副学長、校舎の設計を手がけた建築家の妹島和世氏がテープカット、そして記念講演に登壇した。

新校舎は地上2階建て地下1階の構造。キャンパスの突端にある丘の上に建てられており、周辺が緑に囲まれたとても気持ちのよい環境だ。
新校舎建設にあたり、大学側からは、妹島さんが思う「アートサイエンス」をつくってほしいと依頼があったという。
「設計の依頼をいただきこの場所を訪れました。高橋靗一先生が1964年から1994年という30年の歳月をかけてつくられたキャンパスを改めて拝見し、すべてがつながっているように感じたんです。丘の下にたどり着き、坂を登り、キャンパスの入口にあたるこの敷地に立つと、その場所へ続いていくものをつくりたいという想いがこみあげてきました」(妹島さん)
塚本英邦副学長も「すごいものができたという印象でした。建物内もとても居心地がいい空間です。学校として教育プログラムはもちろんですが、学生たちが学ぶ『場所』が大切だと考えています。日本初となるアートサイエンス学科の校舎としては、ただの四角い箱ではなく、ほかに類をみない空間の中で発想することが重要だと思っています。それが学生たちにもしっかり伝わる建築を妹島先生につくっていただきました」

妹島さんが大切にしたのが、敷地が丘にあることを意識させ、キャンパス全体につながっていくオーガニックな建築であること。街も緑も見える場所ということから、周りと調和する建物をつくりたかったという。
「アートサイエンス学科という昨年誕生したばかりの学科だったので、新しい分野を学ぶ場所にふさわしい建築にしたいと思いました」(妹島さん)

建物の前はバス広場になっており、他の学科の学生たちも行き交う場所。違う学科の学生たちが出会うことで新しい発見につながり、自然と交流できる場所を目指した。
建築の構成は丸形をした3つのスラブ(床)が少しズレながら重なり、庇(ひさし)空間の連続による日本伝統の「軒(のき)」がつくり出す、内部でも外部であるような建物。
地面と近く、どこからも出入りでき、自然に建物につながっていく丘の地形の一部のような構造が楽しい。屋外に出ても上階の床が庇のような役割を果たし、内でも外でもない、まるで民家の縁側のよう。ディスカッションや休憩スペースとして賑わいそうだ。

この、外からも中からもアプローチできる開放感のある建築は、妹島さんの近年の代表作のひとつであるローザンヌ連邦工科大学の建築(2009年)の反省と発展の意味を込めてつくったという。
建物が自然と周りの景色や活動につながっていくような、有機的な曲線を生かしたオーガニックな建築への志向が、大阪芸術大学アートサイエンス学科の校舎に結実している。

建物は天井まで吹き抜け、外周をガラスに覆われた明るい1階部分と、デジタルファブリケーションを備えたアートサイエンス作品の制作や展示ができる閉じられた地下空間による構成。
バス待合広場に面しているエントランスを抜けると、公園のような開放感あふれる空間が広がっている。

独自性のある建築を可能にした構造設計は、妹島さんによる多くの作品で協働する、佐々木睦郎構造計画研究所の犬飼基史さんが手がけた。
構造は基本的に3つの要素で構成されている。フラットスラブというRCのスラブと、それを支える太さの異なる鉄骨の円注、建物の外周にしつらえたV字型の斜めのブレースによる耐震要素だ。その構成により、内部に圧倒的な開放感をもった空間を実現した。

アートサイエンス棟の向かいには、大阪芸術大学の設計を皮切りに、幾つもの大学の設計に携わった建築家・高橋靗一によるコンクリート造の建築が建つ。妹島さんも校舎をつくるにあたり、隣接するこの建築を意識したという。

竣工式当日、キャンパスではチームラボやNAKEDのインタラクティブな映像作品、アートサイエンス学科の教授陣の作品などが展示された。
また竣工記念として、芸術・先端技術・文化の祭典であり、メディアアートに関する世界的なイベントで知られる、アルスエレクトロニカによる映像とピアノ演奏のパフォーマンスも行われた。

アート&サイエンスではなく、アートサイエンス。この聞きなれない言葉は、大学の学科名として文部科学省から正式に認定を受けていることからも分かるように、アートサイエンスにおける表現や研究は、いまや世界的な常識となっている。
そしてアートや最先端のテクノロジーのフィールドに限定されることなく、公共やエンターテイメントの場へと、世界規模で広がりつつある。AIやバーチャルリアリティといったテクノロジーを生かした表現やアートが次々と登場している現代。当然ながらそれらは物理学や社会貢献といったアート以外の場においても活用の場が広がっている。
その流れはテクノロジーの進化にともない、今後さらに加速するだろう。異分野が共創し、変化に対応しながら多様なものが共存することが求められている時代にあって、それらを具現化しイノベーションを加速させ、また人々が集いコミュニティのハブとなる場所として、妹島和世氏がつくった大阪芸術大学アートサイエンス学科新校舎の意義は大きい。

(text: Takashi Kato photo: Manami Takahashi)