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《大阪中之島美術館》
黒いキューブが特徴的な大阪の新たな美術館。

2021.10.31
《大阪中之島美術館》<br><small>黒いキューブが特徴的な大阪の新たな美術館。</small>
南側から見た外観

2022年2月、大阪の中核の一つであり、水都のシンボルである中之島にいよいよ新しい美術館「大阪中之島美術館」が誕生する。1990年に準備室が設置されてから30年もの年月が過ぎ、目指すべき美術館像は時代の流れの中で変わってきた。そんな「大阪中之島美術館」の新しい姿とは……。

南側の入口から見た1階パッサージュ

大阪中之島美術館誕生の歴史は、1983年に大阪市制100周年記念事業基本構想の一つとして近代美術館の建設が決まったこと、大阪の実業家・山本發次郎氏が収集した佐伯祐三コレクションなど約600点の作品群がまとまって寄贈されたことから始まった。

その7年後の1990年11月、大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室(当時)が設立され、いよいよ計画が前に動き始めた。

2021年の秋には、大阪中之島美術館準備室の設立から30年の節目を迎える。

これからの「大阪中之島美術館」

4階から5階へ上がる緩やかな階段

1|歴史をつなぎ、未来を創造する
美術館の基本を「いま」に結び、「これまでにない」を目指す。19世紀後半から現代までの美術とデザインを専門とし、収集・保存、調査・研究、展示・公開・普及という美術館の本格的機能を果たすとともに、既存の枠にとらわれない大阪の進取の精神にならい、新しい創造活動を発掘していく。

2|情報や知識、発見や感動の循環をうながす
美術館の扉を開くだけに留まらない。さらに先へ、進みひらいていくこと。誰でも気軽に立ち寄ることができる「パッサージュ(遊歩空間)」を中心に、魅力的な「場」として、知識や経験が交わる「機会」を生み出す美術館として、情報・人的資源の芽を育み、社会へと送り出し、その循環と活用を促進させていく。

芝生広場側の入口から見た2階

3|つながりを原動力とする
「足りないこと」を可能性としてとらえ、手をとり合う相手を探すこと。多様な第三者との連携によって機能や事業の発展を図る「協働する美術館」、市民と共に学び合う「共育する美術館」として、大阪・中之島をはじめ、さまざまなコミュニティの一員として社会と共に変化し続ける。

4|大阪に貢献する
大阪の「これまで」を活かし、世界に「これから」を発信し、中之島にて、ひと・こと・ものが、歩みを共にすること。大阪の歴史が培ってきた文化的土壌に根を下ろし地域文化を育み、中之島の芸術文化ゾーンの中心的かつ大阪の新しいシンボルとなる美術館として、大阪から全国へ、また世界に向けて、人々の心を動かす創造力を発信していく。

建物をつらぬく「パッサージュ」

エスカレーターが交差する2階パッサージュ

大阪中之島美術館の建築の核となる思想は「パッサージュ」。「パッサージュ passage」とは、フランス語で歩行者専用のアーケードで囲われた通路や自由に歩ける小径のこと。大阪中之島美術館にとってパッサージュとは、誰もが気軽にアクセスでき、訪れる人にとって居心地の良い場所。美術館に興味がある人も、ない人も、誰もが自分の「居場所」を見い出せるような存在となる場所を象徴している。大阪のまちを移動する人びとが通り抜け、そこはときにアートを体感できる、アートの活動拠点となり、さまざまな活動ができる流動的な空間。そして、建物の内と外を融合する空間となっている。

建築家・遠藤克彦氏が設計を担当し、「さまざまな人と活動が交錯する都市のような美術館」をコンセプトにしている。パッサージュは、建物の「spine=背骨」であり、1〜5階までの吹き抜け天井から柔らかく光が降り注ぐ立体的な空間として美術館の中心に位置付けられている。

設計者
建築家/茨城大学大学院准教授
遠藤克彦(えんどう・かつひこ)
1970年横浜市生まれ。1992年武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部建築学科卒業。1995年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。同大学院博士課程進学。1997年遠藤建築研究所設立。2007年株式会社遠藤克彦建築研究所に組織改編。2017年大阪オフィス開設。2017年「大阪新美術館公募型設計競技 最優秀」受賞。そのほか、主な受賞に「佐々町庁舎建設工事基本設計・実施設計業務委託に係る公募型プロポーザル 最優秀」(2020年)、「本山町新庁舎基本計画・基本設計業務プロポーザル 最優秀」(2019年)、「茨城県大子町新庁舎建築設計業務公募型プロポーザル 最優秀」(2018年)、「第15回公共建築賞 優秀賞(豊田市自然観察の森ネイチャーセンター)」(2016年)などがある。

“黒い箱”の中を探訪しよう!

南北の大きなガラス窓が印象的な5階

3階から5階は黒い外壁で覆われ、2階はガラス張り。まるで大きな黒い箱が宙に浮いているかのような外観の美術館建築は、中之島の水辺の風景に、斬新なインパクトがある。

建物の内部を大胆につらぬく、立体的なパッサージュ
大阪中之島美術館の中に一歩足を踏み入れると、縦にも横にも広がる内部空間の、その広大さにまず驚く。

5階建ての建物の、まさしく1階から5階までを、大きな吹き抜けが貫き、メインエントランスとなる2階から展示室がある4階までは、長いエスカレーターに乗って一気に移動できる。各階には開放的な大空間が、南北または東西の端から端まで広がり、広々とした空間の様子は、建物の外壁に切り込まれた大きな窓からも見える。

まちとつながり、まちの一部となる美術館
美術館の建物へは、1階と2階、どちらからでも入れる。どちらの階も、展覧会チケットがなくても行き来できる無料エリアで、美術鑑賞が目的でも、そうでなくても誰でも気軽に立ち寄れるパブリックスペースとなっている。

1階にはレストランやショップ、ホールが入り、街のにぎわいを一層盛り上げる。2階は、近隣施設と歩行者デッキでつながる。

4階の吹き抜けから望む2階

大阪中之島美術館のハイライト、5階・展示室
2階から4階直通の長いエスカレーターを、さらに乗り継いで5階へ。5階の展示室は企画展を主としたフロア。この階の展示エリアの総面積は1700平米以上。そして天井高は6メートルで、大型の巡回展に十分対応できるスペース。

企画展・コレクションとじっくり向き合える、4階展示室
4階は床面積約1500平米以上の展示スペースが、吹き抜けを囲むように並ぶ。大阪中之島美術館コレクションは、現在すでに6000点超。19世紀後半から現代までの国内外の美術作品とデザイン作品を、幅広く所蔵し、これらを様々な切り口によって展示される。5階と合わせて東西南北に貫かれたパッサージュには各方面に大きな開口が配置され、水都大阪を代表する中之島の素晴らしい眺望を楽しめます。

また開館を記念する展覧会として「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」と「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」、記念公演として「大阪中之島美術館開館記念公演 森村泰昌×桐竹勘十郎 人間浄瑠璃」「新・鏡影綺譚」の開催が決定。

北側から見た外観

視覚的にも機能的にも洗練された建築美を感じながら、快適に鑑賞体験ができる「大阪中之島美術館」の新しい姿に注目だ。

大阪中之島美術館
オープン日|2022年2月2日(水)
住所|大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開館時間|未定
入館料|展覧会ごとに異なる
https://nakka-art.jp/

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