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《瀬戸内海》
地形の生む潮流が
瀬戸内海を豊かに
|ニッポンの魚が美味しい理由

2024.12.31
《瀬戸内海》<br>地形の生む潮流が<br>瀬戸内海を豊かに<br><small>|ニッポンの魚が美味しい理由</small>

ニッポンの魚が美味しい理由は「プレート」にあり!? 日本の地形と和食の関係を探る、マグマ学の世界的権威の巽 好幸たつみ よしゆきさんに、日本の魚が美味しい秘密を教えてもらった。今回は、「瀬戸」や「灘」の生む潮流が瀬戸内海の魚を美味しくしている理由や地形についてご紹介。

高速潮流の中で育つ瀬戸内海の魚

「トラフグ」の産卵地・山口の 「ふく刺し」
古くからフグ漁が行われてきた下関や萩が漁場として知られるが、中でも下関には加工場や料理店も多く、現地では縁起を担いで「ふく」と呼ばれる。「ふく刺し」は菊盛りや鶴盛りなど盛り方も多彩

大小約700の島々が風光明媚な多島美をつくり出す瀬戸内海。古くから名高い「明石鯛」、「明石ダコ」をはじめ、穴子、サワラなど豊富な魚介に恵まれる。美味しい魚には旨み成分のイノシン酸の元となるATP(アデノシン三リン酸)の多さが重要とされるが、瀬戸内海の魚は高速潮流の中で育つため筋肉質になり、エネルギー源であるATPが多く、これが美味しさの要因と考えられる。

瀬戸内の「ハモ」が京料理の 食材になった!?
京料理の伝統食材・ハモ。生命力が強いため瀬戸内海からも生きたまま運べたことから定着したといわれる。小骨が多いため「骨切り」が必要で、京料理職人はこれができて一人前といわれる
筋肉質な鯛を味わう 香川の「鯛そうめん」
鯛の姿煮をそうめんと大皿に盛りつけた、香川県伝統のハレ食。婚礼や棟上げなどのお祝いの席で食べられる。江戸時代には「鯛麺」として、武家の献立に残っている

地形が潮の流れが速い理由?

沈降域である大阪湾や播磨灘、燧灘、伊予灘、その間に明石海峡、備讃瀬戸、来島海峡……と、灘と瀬戸や海峡が交互に並んでいることがわかる
産業技術総合研究所地質図Naviを基に作成

瀬戸内海の潮の流れが速い理由は地形にある。瀬戸内海には、隆起で陸がせり出して海が狭くなった「海峡」や「瀬戸」が点在する。それらの間には、沈降で盆地状に窪んだ、海が広い「灘」がある。つまり隆起域と沈降域が交互に繰り返して分布しているのだ。この地形のために太平洋からの潮の満ち引きの波が遅れて伝わり、速い潮の流れが生み出される。そしてこの隆起域と沈降域の連なりはほぼ同じ北東─南西方向を向いているという。

約300万年前にフィリピン海プレートの動きが北から北西に方向転換し、西日本は北向きの圧縮と西向きの力を受けるようになった。その結果、隆起と沈降が交互に形成され、シワのような地形に。隆起域と沈降域の境界には断層が存在し、このために1995年の兵庫県南部地震が起こった。美味なる恩恵と厳しい試練はやはり表裏をなしているのだ。

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text: Miyo Yoshinaga photo: Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries “Uchino Kyodoryori
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」

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