《三陸海岸》
断崖とリアス海岸が生んだ
東北の魚介の宝庫
|ニッポンの魚が美味しい理由
ニッポンの魚が美味しい理由は「プレート」にあり!? 日本の地形と和食の関係を探る、マグマ学の世界的権威の巽 好幸さんに、日本の魚が美味しい秘密を教えてもらった。今回は、北と南で対象的な地形をもち、魚介の名産である三陸海岸をご紹介。
北と南で対照的な地形が
恵む東北の魚介
陸奥、陸中、陸前の三国にまたがる三陸海岸は、北と南で対照的な地形を呈し、それぞれ魚介の名産も異なるのが特徴だ。
三陸海岸の背後には南北に北上山地が走るが、いまも続くその隆起によって北部は断崖が続く隆起海岸となっている。海岸は岩の多い磯浜で、海底には海藻が茂り、ウニやアワビの好漁場に。この地域で生まれた郷土料理が、ウニとアワビの吸い物「いちご煮」だ。 一方、南部の海岸は沈降海岸で、狭い湾と入り江が入り組んだリアス海岸が発達。波が穏やかで北上山地からの栄養分が流れ込む内湾は養殖真牡蠣の名産地だ。
なぜ北と南で海岸の地形が異なるのか?
なぜ北は隆起海岸、南は沈降海岸、と地形が異なっているのか。2011年の東北地方太平洋沖地震の発生時に三陸海岸で急激な沈降が起こったように、海洋プレートの沈み込みに伴う巨大な海溝型地震が起きると、震源域の陸のプレートはいったん急激に沈降する。
しかし時間の経過とともに、薄くなった地殻を補うようにマントルが上昇して、地盤は隆起し回復していく。南三陸海岸が沈降海岸となっているのは、たび重なった巨大地震による沈降量のほうが回復期の隆起量より大きかったためと考えられている。このことから、日本海溝沿いでこれまでに何度も発生してきた巨大地震の震源は南三陸沖に集中していたのでは、とも推測されている。
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text: Miyo Yoshinaga photo: Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries “Uchino Kyodoryori
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」