FOOD

《美食地質学》
日本の地形と和食の関係
|ニッポンの魚が美味しい理由

2024.12.31
《美食地質学》<br>日本の地形と和食の関係<br><small>|ニッポンの魚が美味しい理由</small>

ニッポンの魚が美味しい理由は「プレート」にあり!? 日本の地形と和食の関係を探る、マグマ学の世界的権威の巽 好幸たつみ よしゆきさんに、日本の魚が美味しい秘密を教えてもらった。今回は、地形に特徴があり、美味しい魚が獲れる地域をピックアップして解説していく。

監修=巽 好幸(たつみ よしゆき)
1954年生まれ。ジオリブ研究所所長。理学博士。地球の進化や超巨大噴火のメカニズムをマグマ学の視点で探究。著書に『「美食地質学」入門』(光文社)など

プレートがもたらす美味なる恩恵とは?

日本列島の地震と活火山の分布。太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの4枚のプレートが相接する、世界でもまれな場所にある日本列島。世界のマグニチュード6以上の地震の約10%が集中し、111もの活火山が分布している(ジオリブ研究所の図表を基に作成)

瀬戸内海の鯛、富山湾のホタルイカ、琵琶湖のコアユなど、日本の各地で多彩な名物魚が捕れるのはなぜだろうか?そんな疑問を地質学の観点からひも解くのが、マグマ学の世界的権威・巽好幸さんの「美食地質学」だ。

2024年1月の能登半島地震をはじめ、日本に地震が多いことはこの国の誰もが実感していることだが、あらためて上図を見てみよう。地球の表面を覆う十数枚の硬い岩盤(プレート)のうち、4枚のプレートが日本列島付近でせめぎ合っている。これらのプレートが動くために地震が頻発し、世界中で起こるマグニチュード6以上の地震の約10%が日本で起こっている。さらに地球上の活火山の約7%が日本に密集している。日本列島は世界で最も地震や火山が集中する“変動帯”にあるのだ。

その地殻変動は我々に大災害をもたらす一方で、多様な地質環境をつくり、各地に美味なる食材という恩恵も与えてくれた。日本の食材や和食の背景を「豊かな自然に育まれた」と語るにとどまらず、自然の成立原因を知ることで、その美味しさは過酷な試練と表裏一体にあることが見えてくる。

《三陸海岸》
断崖とリアス海岸が生んだ
東北の魚介の宝庫

北と南で対象的な地形をもち、魚介の名産である三陸海岸。北部は断崖が続く隆起海岸、岩の多い磯浜で、海底には海藻が茂り、ウニやアワビの好漁場に。南部の海岸は沈降海岸で、狭い湾と入り江が入り組んだリアス海岸が発達し、養殖真牡蠣の名産地だ。なぜ、北と南で海岸の地形が異なるのかも解説していく。

 

≫記事を読む

《富山湾》
高低差4000mが美味しさの秘密

山と海の底まで高低差4000mの地形をもつ富山湾。日本海へ突き出した能登半島で西側が塞がれているおかげで回遊魚が誘い込まれ、“天然の生け簀”と呼ばれる。「寒ブリ」や「シロエビ」、ホタルイカが名産だ。特異な地形と2層の海水についても触れていく。

 

≫記事を読む

《若狭湾》
日本列島のくびれが
若狭を御食国にしました

古代、若狭国は「御食国」のひとつとして若狭湾で捕れる海産物で都の食を支えた。また京都へ通じる街道群は、若狭湾の鯖が運ばれたことから近年になって「鯖街道」と呼ばれている。鯖やグジで有名な若狭湾の地形はどのようになっているのか。

 

≫記事を読む

《琵琶湖》
世界有数の古代湖で
育まれた固有種たち

約400万年前に生まれた、世界でも珍しい古代湖の琵琶湖。長い歴史の中で生物は独自の進化を遂げ60種以上の固有種が生息している。琵琶湖で獲れる魚や歴史とは?

 

≫記事を読む

《日本海》
ズワイガニが捕れるのは
日本海の成り立ちと関係!?

冬を代表するスペシャル魚介といえば、カニ。中でもブランドガニの産地が集中するのが山陰や北陸の日本海沿岸だ。ズワイガニがを獲れる理由を日本海の成り立ちから読み解き、プレートの大きな動きを解説していく。

 

≫記事を読む

《瀬戸内海》
「瀬戸」や「灘」の生む潮流が
瀬戸内海を豊かにしていました

大小約700の島々が風光明媚な多島美をつくり出す瀬戸内海。古くから名高い「明石鯛」、「明石ダコ」をはじめ、穴子、サワラなど豊富な魚介に恵まれる。隆起域と沈降域が交互に繰り返して分布している地形が瀬戸内海を豊かにする理由とは?

 

≫記事を読む

《コラム》
日本列島の成り立ち

弓形に曲がった本州と大小の島々からなる日本列島がいまの姿になったのは、悠久の地球の歴史においては最近の出来事だった。地球の誕生まで遡り、日本列島ができるまでをご紹介。

 

≫記事を読む

line

text: Miyo Yoshinaga photo: Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries “Uchino Kyodoryori
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」

RECOMMEND

READ MORE