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映画『浅田家!』の写真家・浅田政志さんが撮る三重。
神島・答志島に暮らす人々

2020.12.18 PR
映画『浅田家!』の写真家・浅田政志さんが撮る三重。<br>神島・答志島に暮らす人々

三重の海に浮かぶ、歴史と文化に彩られた美しい島々。海とともにたくましく、しなやかに生きる島の人々を、映画『浅田家!』の原案者である三重県津市出身の写真家・浅田政志さんが撮影しました。

浅田政志さん
1979年、三重県津市生まれ。日本写真映像専門学校卒業後、写真家として独立。専門学校在学中から撮りためた家族写真をまとめた写真集『浅田家』(赤々舎)を発表し、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。 国内外で個展を開催し、著書も多数。新作写真集『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)が10月に刊行

島に生きる人々の、誇りと絆

海女(あま)として、漁師として、受け継いでいく様々な思い。ふたつの島で浅田さんが出会ったものとは?

寝屋子制度で育った答志島の漁師さんたち。写真右から、勢力満さん、勢力良文さん、浜口康さん、浜口一利さん、中村多助さん

大好評を博した映画『浅田家!』のモデルとなる写真集『浅田家』を手掛けた三重県津市出身の写真家・浅田政志さん。故郷である三重県は豊かな海に面し、個性的な島々を擁している。今回、鳥羽市の沖合に浮かぶふたつの島を浅田さんが訪れた。

鳥羽マリンターミナルから定期船に乗り、約40分。鳥羽湾に4つある有人離島の中で最も遠い、神島(かみしま)に到着だ。三島由紀夫の小説『潮騒(しおさい)』の舞台になった地であり、5度にわたる映画化のたびにロケが行われた。「“神の島”という名前にも惹かれていて、ぜひ一度来てみたかったんです」と浅田さん。

漁師とともにこの島の営みを支えているのが海女。320人あまりの人口に対して、実に30〜40人が海女として活動している。年齢も20代から70代と幅広く、親子2代、3代にわたって海女というケースも。新しく海女になろうとする人の数は増えているそう。

みなさん現役! 神島の海女さんたち

「三重では小さい頃から海女さんに親しみがあって、僕自身も海女さんに扮した家族写真を撮りました。この島に、こんなにたくさんいらっしゃるとは!」と圧倒される浅田さん。海女漁は4月の初めにワカメ漁が口開けになり、本格的なシーズンは5月20日からお盆前まで。八代(やつしろ)神社で海女さん全員が祈祷を受けてから始まる。海の幸を獲り尽くしてしまわないように、操業するのは期間中の20日間のみで、サザエや岩牡蠣、アワビなどを求めて潜る。神島は外洋に面しているため潮流が速く、危険と背中合わせだが、「晴れた日は海が透き通ってて気持ちいいねえ。何より、岩みたいにおっきなアワビを見つけた時の気分は最高!」とベテラン海女さんが笑う。そんな思いが詰まった、神島の海の幸。海女文化を感じながら、ぜひ味わってみたい。そして、浅田さんが撮影場所に選んだのは、海の神様を祀る八代神社。神聖なる“仕事場”の海をバックに、マーメイドたちの笑顔がはじけた。

かつて、島の時間を知らせた唯一の時計だった時計台。八代神社や洗濯場へと続く道の途中にある

次に目指したのは答志島(とうしじま)。ここには全国でも唯一ともいわれる独特の制度「寝屋子(ねやこ)」がある。中学校を卒業した男子たちが、寝屋親と呼ばれる地域の大人の下で「グループの誰かが結婚するまで」共同生活を送る風習だ。戸籍上つながりのない者同士が、実の親兄弟のように深い絆で結ばれ、それは寝屋子が解散しても生涯にわたり続く。

「朋輩(ほうばい・寝屋子仲間)は、ええことも悪いことも連帯責任。思春期には反発もあったな。でも、いまじゃ親戚よりも絆を感じる」と漁師の浜口康さん。その朋輩の勢力良文さんは続ける。「寝屋親は怖かったね(笑)。でも挨拶の大切さを叩き込まれたり、相談に乗ってもらったり、心強い存在やった」。

現在は少子化に伴い、寝屋子の在り方も変わりつつあるという。「寝屋親の家に泊まるのは週末や行事のときだけ、というケースも多くなってきた。守っていきたい制度だけど、難しいのかな」と浜口一利さん。実の家族とはまた違う“親兄弟”と共に過ごし、大人になる。「いまの世の中のヒントが、寝屋子にあるのかもしれない」と、家族を撮り続けてきた浅田さんは感慨深げにつぶやいた。

10月初旬から1月末までの期間限定で食べられる「答志島トロさわら」の活け造り。トロのような上品な脂が美味。写真は宿・美さきのお料理

答志島で水揚げされるのはサワラやシラス、鯛、伊勢えびなど。「漁師さんは何が好きなんですか?」と浅田さんが尋ねると「これ、ガオ」。差し出されたのは大型のヤドカリ。「伊勢えびより旨いよな」と笑い合う海の男たちの顔は、10代の頃の朋輩に戻ったようだ。寝屋子文化で培った絆は、遠来のお客も快くもてなしてくれる。ぜひ、答志島の“人”に会いに来てみては。

三島由紀夫の名作『潮騒』の舞台
「神島」

鳥羽港の北東約14㎞に位置。周囲約4㎞で、島を一周するウォーキングが人気。港から山頂にかけて家々が階段状に密集し、島の南端部には石灰石が風化してできたカルスト地形があり、市の天然記念物に指定されている。『潮騒』にちなみ恋人の聖地としても有名。

【A】神島灯台
海の難所といわれる伊良湖水道を見守ってきた灯台。島きってのビュースポットで「日本の灯台50選」にも選ばれている

【B】八代神社
海の神さま「綿津見命(わたつみのみこと)」が祀られている。214段の石段を上がった先の景色は圧巻
【C】監的哨跡(かんてきしょうあと)
戦時中、旧陸軍が伊良湖から試射する大砲の着弾点確認のため建てられた。『潮騒』の名シーンでも登場

【D】潮騒の宿 山海荘
宿を守るご家族と浅田さん
【D】潮騒の宿 山海荘
プリプリの刺身盛り合わせに焼き魚、タコ飯などが付く刺身定食1200円。写真の煮魚付きなら1600円

【D】潮騒の宿 山海荘
住所|三重県鳥羽市神島町75
Tel|0599-38-2032
料金|1泊2食付8000〜1万5000円(税別)※ランチの予約は3日前まで www.sankaiso.net

寝屋子制度など古い慣習が残る
「答志島」

3つの集落に約1900人が暮らす、鳥羽湾最大の島。海の幸に恵まれているため漁業が盛んで、独特の寝屋子制度は市の無形民俗文化財にも。戦国時代に活躍した鳥羽城主・九鬼嘉隆にまつわる史跡でも知られ、夏は海水浴も楽しめる。年間を通し魅力が尽きない。

【A】美さき
風情ある海辺に佇む宿。仲買人の資格をもつご主人が、島の市場で毎日魚介を目利きする。答志島温泉「玉藻の湯」で寛ぎたい
【A】美さき
近海で水揚げされた伊勢えびやアワビの刺身。豊かな甘みと海のエキスがみなぎる
【B】八幡(はちまん)神社(答志)
島の守護神で、大漁と海上・家内安全を祈願する八幡祭でも知られる。入り口には柿本人麻呂が島を題材に詠んだ歌の歌碑が残る


【C】まるみつ寿司
熟成させて旨みを引き出したサワラなど、地魚に丁寧な仕事をした寿司が楽しめる
【C】まるみつ寿司
上にぎり2200円。海鮮丼も名物
【D】海女小屋
観光用につくられた海女小屋で炭火で焼いた魚介類を味わえる
【D】海女小屋
海女小屋で炭火を囲み、漁師さんたちと団らんする浅田さん
【E】美多羅志(みたらし)神社
答志と和具地区の氏神。子宝と縁結びのご利益でも知られる。「龍神さん」と呼び親しまれる龍の顔のかたちをした椎の木は必見

【A】美さき
住所|三重県鳥羽市答志町415
Tel|0599-37-2141
料金|1泊2食付9900円〜(税込、入湯税別)
http://misakiryokan.co.jp

【C】まるみつ寿司
住所|三重県鳥羽市答志町1106
Tel|0599-37-2314
営業時間|11:00〜21:30
定休日|なし
www.amigo.ne.jp/~marumitu

【D】海女小屋
Tel|0599-37-3339(島の旅社推進協議会)※ツアー形式で実施、要予約

鳥羽を基点に島めぐりを

鳥羽湾の島々へは鳥羽駅から徒歩約5分の鳥羽マリンターミナルからの定期船を利用して。本数が限られているので計画的に訪れたい。

運賃|鳥羽~和具550円、鳥羽~神島740円、和具~神島510円
定期船問い合わせ先|鳥羽市定期船課
Tel|0599-25-4776
観光スポット問い合わせ先|鳥羽市観光課
Tel|0599-25-1157

鳥羽へのアクセス
【名古屋方面から】名古屋駅から鳥羽駅まで近鉄特急で約1時間30分
【大阪方面から】大阪難波駅から鳥羽駅まで近鉄特急で約2時間
【フェリーを利用する場合】
東名・新東名高速道路豊川ICから伊良湖のりばまで車で約1時間30分
伊良湖のりばから鳥羽のりばまで伊勢湾フェリーで約1時間

text: Aya Honjo photo: Maiko Fukui
協力=みえ観光の産業化推進委員会(三重県観光魅力創造課) 衣装協力=鳥羽市
2021年1月号「温泉と酒。」


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