「ファム デ バトー アオキ」
鎌倉の竜宮城へようこそ【後編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン
思いがけないところに、思ってもみなかったいい店がある。日本のレストラン文化はこんなに奥深い!と感激する店を探してきました!今回訪れたのは、神奈川県鎌倉市のレストランFemme de Bateau Aoki(ファム デ バトー アオキ)」。自ら漁に出るオーナー・青木園子さんの魅力と、センスあふれるご馳走の数々を前後編で紹介します。
犬養裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン、食文化を取材。最近は日本の地方に注目。郷土料理を守るだけでなく、その土地の生産者とともに新しいレストラン様式に挑戦するシェフを取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員
メニューの基本はシンプルに素材を生かす和食。
そこにイタリアンやエスニックのテイストで
変化をつけるセンスが抜群
献立は毎日変わる。ただ、素材は変わっても、定番になったひと皿もある。たとえば、色鮮やかな“カルパッチョ”。刺身の内容は変わるが、花や野菜と一緒に味わうスタイルは変わらない。
また、伊勢海老が入ったときはトマトと玄米のリゾットがオンメニュー。伊勢海老1尾を丸ごと使う、青木さんならではの大胆なスペシャリテだ。素材そのものを味わってほしいときは和風。時々、ハーブやスパイス、チーズと合わせてイタリアンやエスニック風に仕上げる。
「何料理ですかと聞かれると困る。魚を美味しく楽しむ料理ですと答えています」。全体に油を控えているので、食べた直後は満腹でも、すぐに胃が軽くなる。締めの麺や飯ものは追加注文したくなる充実度。酒も純米酒中心に揃う。
ある日のアラカルト
お通し
メカブ/わかめとヤリ烏賊の煮つけ
天然わかめで2パターンのお通しを用意。メカブはわかめの根元の部分を使用。煮つけはこの時期ならではの色と軟らかさを楽しむ。
刺身
サザエの刺身
朝捕れのサザエ。薄切りにした刺身を花束のように盛りつける。涼しげなガラスのうつわもセンスがいい。心遣いがうれしい。
刺身
ホウボウの刺身
ホウボウは上品な甘みをもった白身魚。最初は塩で。その後は芽ネギ、かぼす、ワサビなど、薬味で変化を味わう。
野菜
生ウニと帆立貝のカルパッチョ
登場すると歓声が上がる華やかなひと皿。ドレッシングに黄ニンジンとアーリーレッド(甘みのあるタマネギ)を使うのがポイント。
野菜
地蛤と鎌倉筍の白ワインバター蒸し
春を代表する2大素材のマリアージュ。双方をつなぐのがフランスのエシレバターを使用したソース。香りも味も濃厚。
揚げ物
小坪産とら河豚唐揚げ
青木さんはふぐ調理師免許も取得。唐揚げに添えた薬味はパクチーとライム! この自由な発想が印象に残るひと皿を生む。
麺・飯
シラスと地だこの全粒粉Pizza
シラスと地ダコ、ミョウガとアオサ海苔の和のトッピングがたっぷりのチーズとよく合う。全粒粉の生地もパリパリと軽い!
麺・飯
平目のカツレツサンドイッチ
豆乳、酢でつくる自家製マヨネーズを使って、ピクルスを足してソースに。贅沢な平目のフライにぴったり。
麺・飯
鮑の玄米粥
青木さん自身がオススメするのはこの一品。アワビの深い旨みを丸ごと楽しめる。じんわりと旨みが身体の隅々まで浸透していくよう。
麺・飯
伊勢海老とフレッシュトマトの玄米リゾット
伊勢海老を丸ごと使う、青木さんらしいゴージャスなスペシャリテ。トマトの酸味と相性がよく玄米リゾットも旨みたっぷり。
ようこそ、鎌倉の“竜宮城”へ
オーナー 青木園子(あおき・そのこ)さん
東京都生まれ。8歳のとき、材木座に引っ越して以来、湘南住まい。20代は鎌倉の料理店で基本を学ぶ。その後、由比ヶ浜で独立。9年目に、小町の現店舗に移転。この頃から漁に出るようになり、通の間で話題に
Femme de Bateau Aoki(ファム デ バトー アオキ)
住所|神奈川県鎌倉市小町1-5-9
Tel|0467-53-8339
営業時間|17:30〜21:00(L.O.20:00)
定休日|水・木曜
予算|1万円前後 ※アラカルトのみ
※新型コロナウイルス感染防止対策のため営業時間は変動あり。要確認
text:Yumiko Inukai photo: Muneaki Maeda
Discover Japan 2021年6月号「うまいビールとアウトドア。」