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《琵琶湖》
世界有数の古代湖で
育まれた固有種たち
|ニッポンの魚が美味しい理由

2024.12.31
《琵琶湖》<br>世界有数の古代湖で<br>育まれた固有種たち<br><small>|ニッポンの魚が美味しい理由</small>

ニッポンの魚が美味しい理由は「プレート」にあり!? 日本の地形と和食の関係を探る、マグマ学の世界的権威の巽 好幸たつみ よしゆきさんに、日本の魚が美味しい秘密を教えてもらった。今回は、約400万年前に生まれた、世界でも珍しい古代湖の琵琶湖をご紹介。

約400万年前に生まれた
古代湖に生息する固有種

滋賀県の面積の約6分の1を占める琵琶湖は、最も幅の狭い部分に架かる琵琶湖大橋を境に、北湖と南湖と呼び名が変わる。それぞれ湖盆の形状や水質、水深、透明度などが異なる

言わずと知れた日本最大の湖・琵琶湖。総面積は約670㎢で、東京23区や大阪市よりも広い。山々に囲まれた盆地状の構造に位置し、約450もの河川が流れ込む。一方、流出河川は瀬田川と人工の琵琶湖疏水のみで、京阪神の飲料水としてもお馴染み。約400万年前に生まれた、世界でも珍しい古代湖でもある。

その長い歴史の中で琵琶湖の生物は独自の進化を遂げ、ビワマスやニゴロブナ、ホンモロコ、セタシジミなど、60種以上の固有種が生息している。また一生の大半を琵琶湖で過ごすコアユ、大豆と煮た料理「えび豆」で知られるスジエビなど、郷土の食文化に根づく魚も多い。

琵琶湖のサケ
「ビワマス」は琵琶湖の固有種の一種。サケ科に属し、琵琶湖で回遊の後、産卵のために生まれた川を遡上する。脂がのった上品な味わいで、刺身のほか、炊き込みご飯でも美味しく味わえる

その琵琶湖が、かつては現在より50㎞も南にあったと信じられるだろうか。いまから約400万年前、当時は北向きに沈み込んでいたフィリピン海プレートの圧縮により、中央構造線の南側は隆起する一方、北側は沈降し低地が形成。東西方向に長い「東海湖」が生まれた。これが琵琶湖の原型である。

その後約300万年前に、フィリピン海プレートの移動が北から北西に方向転換した影響で、東海湖は分断。それ以降、北陸の若狭湾から東海の伊勢湾に至る沈降帯で形成される低地が北へ広がるとともに、琵琶湖も北上。約100万年前にほぼ現在の位置に移動したと考えられている。

祭礼にも奉納された「ふなずし」
古来の伝統であるなれずしの一種「ふなずし」は、五穀豊穣を祈る神社の祭礼にも奉納される滋賀の食文化。ニゴロブナをまるごと漬け込むと発酵中の乳酸効果で骨まで軟らかく。酒肴にもぴったり
「コアユ」は伝統の山椒煮で
琵琶湖のアユは大部分が湖で生活するため成魚でも10㎝程度にしかならず「コアユ」と呼ばれる。旬は5~8月。骨が軟らかくまるごと食べられるのも魅力で、山椒を利かせた佃煮や天ぷらが人気

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text: Miyo Yoshinaga photo: Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries “Uchino Kyodoryori
Discover Japan 2024年12月号「米と魚」

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