FOOD

梅干しで善玉菌を活性化!
非常時に役立つ日本の食の知恵 第5回

2020.4.9
梅干しで善玉菌を活性化!<br>非常時に役立つ日本の食の知恵 第5回

Discover Japan vol.103の特集『日本人は何を食べてきたの?』にも登場していただいている食品学者・松本栄文さんに、非常時に知っておきたい「日本の食の知恵」の生かし方を教えていただきます!「緊急事態宣言」が発せられたいまの機会に知っておくと、きっと役立つはずです。

【梅干(殺菌力.整腸作用編)】

非常食の王道食材といえば「梅干」。柑橘類の酸味と同じ「クエン酸」を多量に含んでいます。梅の果実を塩分25~30%で漬込み、炎天下の夏土用に干し、再び漬込むのが昔ならではのつくり方です。奈良時代に隋から伝わったもので、もともと梅干は「梅酢」をつくる副産物でした。黒焼きにして腹痛治癒、虫下、解熱、内消毒に有効なものとして漢方に用いられました。

梅干の酸度は㏗2.0であり、レモンの㏗2.1より強く、胃酸㏗1.8に近いものです。強い殺菌力があることから、戦国時代では保存食としてだけではなく、傷口消毒や戦場での食中毒、伝染病予防に欠かせぬ戦略物資のひとつでした。ちなみに抗酸化作用の強い「赤シソ」を加えるようになったのは江戸時代からのことです。

体調不良の療養中、お粥と梅干はゴールデンコンビですが、これは梅干を見ることで条件反射のひとつで強い酸味を想像し、唾液分泌が促され、デンプン質の消化吸収を高める働きがあるからです。そして実は便秘解消の作用も強いのです。腸内がアルカリ性に近いと悪玉菌が増殖し、有害物質やガスを発生させます。そこで梅干を食べて弱酸性に近づけることで善玉菌を活発化し、運動不足の非常時でも腸内運動が起こりやすい環境へ整えてくれるのです。

松本 栄文(まつもと さかふみ)
一般社団法人日本食文化会議理事長。花冠「陽明庵」主人。「日本文化を愛でる会」を主宰し、日本の伝承・伝統の普及に努める。著書『日本料理と天皇』では、グルマン世界料理本大賞2015で「殿堂」、「創設最高賞」をW受賞。

 

第6回は「味噌で体温と筋力維持を」編です!

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《緊急企画!長期の非常時に役立つ日本の食の知恵》
01|はじめに
02|お米
03|そうめん
04|片栗粉
05|梅干
06|味噌
07|黒糖
08|豆苗
09|クレソン
10|煮干
11|乾物スルメイカ
12|ドライマンゴー
13|柚子胡椒


 

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