マグロ一本釣りをレポート!
マグロはこうして水揚げされる!
【マグロ一本釣り漁師密着レポート】
マグロが食卓へやって来るまでには長い道のりがある。今回はその始まりである<水揚げ>までを、大間と並びマグロ一本釣りの漁で名高い壱岐・勝本の一本釣り漁に同行させてもらいレポートした。
ご協力いただいたのは、漁師歴30年の中村さん。最高時速160㎞で泳ぐマグロの行動に、海流や地形などを合わせ読み、どうやって餌を食わせるか――。そこが漁師の技と勘どころだ。「マグロが釣られたことに気づかんうちに釣るのが理想」とのこと。
1.朝方2~3時に出漁。先に生餌を釣った後、5時くらいに漁のポイントへ到着。マグロの群れを魚群探知機で探しながら船を走らせる。
釣れない日は釣れない。地味な根気勝負を耐えた末に大物がかかる
2.サンマやイカなどの生餌の背に釣り糸をつけて海に投げる。釣り糸を海に投げ、反応がなければすぐに上げて、餌を調整。また海に投げては上げ、投げては上げ……。釣れない日は何時間かけても釣れない。地味な根気勝負が続く。反応があったらマグロが暴れないように時間をかけて引き揚げる。
釣り上げてからは時間との勝負
3.釣り揚げたらすぐに、血抜きをして内臓やエラを除き、尾と脳天から神経締めして、氷づけにする。氷の入った船倉で冷やし、帰港してからもすぐ氷につけ込む。この一連の作業を素早くやらなければ、マグロの体温が上昇し身が焼けて、売り物にならなくなる。
高品質は、丁重な水揚げ作業があるからこそ
4.水揚げの作業の際、柔らかな腹をつぶさないように、常に腹を上にする。氷の入れ方にも注意して、皮の艶、キラキラ感がはがれないようにする
築地へ出荷 そして消費者のもとへ
5.100kg以上の大きなマグロは手作りした専用の木箱に入れる。氷が当たって傷をつけないようにボディも尾もラップカバーして守る。ひと晩冷やし込んでから、築地へ向けて出荷する。
「長く続けること」を絶対条件に
SDGsでも、目標の14に「海の豊かさを守ろう」が掲げられているが、中村さんたち壱岐の漁師の皆さんは、さらに最近、一本釣り漁法の骨柱として「サスティナビリティ(持続可能)」を掲げた。ここ10年で激減した水揚げ量に、去年から漁師たち自ら、夏の産卵期の禁漁など資源管理の漁を試みている。「10年、20年後もマグロを釣りたいんですよ」と若手漁師が言う。
「長く続ける」ことは、量を捕ることよりもっと強い絶対条件だ。そういう意味で、「丁寧に釣り上げた質のいい一本釣りのマグロは新しい価値を持ったマグロになる」と中村さんたちは信じている。