理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ
noma×京都を彩るニッポンのうつわ作家たち【後編】
ノーマ京都のすべて⑪
nomaの料理の魅力をいっそう引き出すうつわの数々。さまざまな作風の中から選ぶ過程で目に留まったのは、日本の作家たちだった。コペンハーゲンとは違う顔ぶれになったnoma×京都のうつわ。創作の現場へ足を運ぶと、彼らが共鳴した理由が見えてきた。
夜──。うつわと料理への想いはシンクロする。
nomaの二人と壷田夫妻で料理をつくった贅沢な宴がはじまった。話が弾む中、亜矢さんは神尾さんとはじめて話した日のことを振り返る。「デンマークからビデオ電話がくるなんて想像もしていなかったから、宇宙人と話している感覚だったのよ(笑)」。今回のうつわ作家の多くもそんな驚きと興奮に満ちたはじまりだったのかもしれない。「うつわのテーマは『アーシー(earthy)』。自然な感じの作風で、コペンハーゲンでも使えるものを探してほしいとレネから話がありました」と神尾さん。選ばれたのは日本人作家20名、海外作家7名。「日本開催だから日本人を優先したのではなく、日本の多様性に気づき、自然と依頼させていただくかたちになりました」。
高千穂に来てからより自然体で仕事をするようになったと話す和宏さんは、nomaが本国で使っていたナチュラルなうつわを見て共感を覚えたそうだ。そこに共通点を見出していた髙橋さんは「壷田さんのうつわはどこか北欧的」と語る。「北欧の人は仕事だからこれをつくらなきゃとか、そういう力みがない。壷田さんのうつわにもそれを感じます」。人は環境に左右される生き物。住む場所とクリエイティビティは密接に関係している。髙橋さんは以前、レストランのシェフにもつくれないようなワッフルをスウェーデンで食べたことがある。「牛飼いの方がつくっておられて、それを食べたレネはあの環境がこの味をつくっていると言っていました」。nomaは北欧で、壷田夫妻は高千穂で。その土地でしかつくれないものをつくり続ける両者には、表現の違いこそあれども、そこには同じ哲学があるのかもしれない。
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01|世界一のレストラン《noma/ノーマ》が京都にやってきた
02|【noma×日本料理】京都の野山を味わう“八寸”から
03|【noma×日本料理】ニッポンの海と懐石料理の文化を再発見
04|みんなでひとつを生む、nomaのつくり方。
05|世界一のレストランnomaのキーマンはヘッドR&Dシェフ・髙橋惇一さん
06|nomaが惚れた、ニッポンの食材
07|【noma×日本料理】限りなく無作為な自然をいただく。
08|【noma×日本料理】文化、食材への“探求”=nomaだ
09|最高の食事とサービスを提供するノーマ京都の舞台裏を公開
10|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【前編】
11|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【後編】
12|【noma×うつわ】うつわ選びへのこだわり
13|【noma×うつわ】noma×京都の料理を彩ったうつわ作家たち
text: Mayumi Furuichi photo: Maiko Fukui
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」