【noma×日本料理】
文化、食材への“探求”=nomaだ
ノーマ京都のすべて⑧
レネ・レゼピさん率いるnomaが京都でポップアップを開催。このニュースにどれだけ多くの人が沸き立ったことか。デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く精鋭集団が春の京都でどんな景色を見せてくれたのか。ある日のディナーを紹介しながらその詳細をお届けしたい。
noma cuisine
絵画のような「山菜」に心が落ち着いたところに、13品目の「伊勢海老」が運ばれ、再び沸き立つ。こちらのフレーバーはバラ。懐石料理に欠かせない木の芽とすだちの香りも利かせている。ワインは、メースさんと10年以上のつき合いのある「ドメーヌ タカヒコ」をセレクト。14品目のご飯もの「緑米と薔薇」は、土鍋の中で咲くバラの美しさに目を奪われる。料理は間違いなくアート。nomaがそれをあらためて教えてくれた。
コースを締めくくるデザートは3種で、シジミを象ったソルベは遊び心に富んでいる。「カニステル」は甘酒も使って日本らしさを匂わせた。「苺の餅」は、今回のコース料理の物語性を見るような一品。はじめの八寸は確かに京都の野山だったが、〆の景色は同じ足元にある自然を描いたものでも、それは北欧の森のよう。彼らはポップアップを終えれば、本国へと旅立つ。一度きりのポップアップは、茶の湯の「一期一会」そのものだ。
nomaが見せてくれた世界は素晴らしかった。本当の心地よさとは何なのかを料理、サービス、空間のすべてで伝えてくれた。
<料理>
伊勢海老
<ペアリング>
ドメーヌ タカヒコ/北海道 余市
新潟の郷土調味料・かんずりとバラのオイルを塗りながら焼いた伊勢海老の下にトウモロコシ節が。ペアリングに国産ワインを選んだのは、世界中のフーディに日本のワインの素晴らしさを伝えたかったからだ。
<料理>
緑米と薔薇
玄米の一種である緑米を、柔らかな風味の煎茶「オクミドリ」で炊いている。茶飯は日本各地にある食文化。奈良の僧侶が食したのがルーツともいわれている。献立の一つひとつに日本文化への深い理解が垣間見える。
<料理>
ユズ シジミ、ハマグリ、苺の餅、カニステル
<ペアリング>
福岡正信自然農園/愛知 伊予
「シジミ」には貴熟酒のジュレが。「苺の餅」は求肥とサフランとカルダモンのキャラメルをイチゴで挟んでいる。「福岡正信自然農園」の果実酒は、400本限定生産のものをすべて購入。シトラスの風味は、「デザートには甘いお酒という定説を覆す」とメースさん。ポップアップはすべて日本の酒でペアリングした。
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ノーマ京都の舞台裏を公開
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01|世界一のレストラン《noma/ノーマ》が京都にやってきた
02|【noma×日本料理】京都の野山を味わう“八寸”から
03|【noma×日本料理】ニッポンの海と懐石料理の文化を再発見
04|みんなでひとつを生む、nomaのつくり方。
05|世界一のレストランnomaのキーマンはヘッドR&Dシェフ・髙橋惇一さん
06|nomaが惚れた、ニッポンの食材
07|【noma×日本料理】限りなく無作為な自然をいただく。
08|【noma×日本料理】文化、食材への“探求”=nomaだ
09|最高の食事とサービスを提供するノーマ京都の舞台裏を公開
10|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【前編】
11|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【後編】
12|【noma×うつわ】うつわ選びへのこだわり
13|【noma×うつわ】noma×京都の料理を彩ったうつわ作家たち
text: Mayumi Furuichi
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」