《36ぷらす3》で九州感動体験!
九州の自慢がまるごと詰まった列車旅
世界で36番目に大きな島「九州」。その数字に3をプラスしてサンキュー(39)列車と親しまれているのが「36ぷらす3」だ。JR九州が感謝の輪を広げたいと思い描くこの列車には、どんな体験が待っているのだろう?
観光列車の最先端は
人とつながる感動列車
列車大国といわれるまでにさまざまな観光列車をつくり上げてきたJR九州。その最たる例がD&S(デザイン&ストーリー)列車だろう。子どもたちが楽しめる仕掛け満載の「あそぼーい!」、船と連携し、列車を超えて地域の旅を拡張した「A列車で行こう」、食のおもてなしが楽しめる「或る列車」…すべてのD&Sに極上の九州が詰まっている。その集大成として2020年10月、満を持して運行を開始したのが「36ぷらす3」だ。
コンセプトは「九州のすべてが、ぎゅーっと詰まった“走る九州”といえる列車」。木〜月曜まで5日間かけて九州を周遊する。それぞれの路線に赤、黒、緑、青、金とテーマカラーを設定し、その地域にまつわるエピソードを搭載。乗る曜日によってまったく違う体験ができる。たとえば土曜に運行する宮崎空港〜別府ルートは緑がテーマ。亜熱帯植物に囲まれた「青島」、神話が息づく緑鮮やかな「西都原古墳群」、石菖が敷き詰められた別府の「鉄輪むし湯」など緑にまつわる7つのエピソードを列車内で紹介していく。もちろん、エピソードだけではない。サンキュー列車にひとたび乗車すれば、大自然を感じる秘境駅に到着。地元の人と交流ができる特設物産展が停車駅で開催されたり、一流料理店の限定弁当が味わえたりと、路線によって乗車時間は異なるが、緑の路の5時間半はあっという間に過ぎ去ってしまう。まるで1泊2日の旅と同等か、それ以上の価値を感じるコンテンツの充実ぶり。九州の豊かな自然と温暖な気候、日本の窓口としてさまざまなものを吸収し、育んできた文化があるからこそ生まれた列車なのだ。
JR九州の極上コンテンツは各地域にも影響を与え、「ななつ星in九州」のような豪華列車に追随する列車も各地で散見される。水戸岡鋭治さんの唯一無二のデザインや観光、ローカル視点という要素はいままでも多く語られてきた。しかしJR九州の観光列車の神髄は、実はソフト面にあることを、この36ぷらす3に乗車すれば誰もが感じるだろう。
「お客さまの今日の体調、いま何を求めているかを常に考えています」とクルーは話す。36ぷらす3で用意しているのは5色35のエピソード。36番目はゲスト自身が旅の中で見つける。乗車の感想、九州で発見した新たな色のこと、一緒に乗っている相手への感謝、自分への労い…すべてを受け止めて、列車は走る。そして終盤、ゲストが書いた36番目のエピソードは車内でもアナウンスされるのだ。
「今日、実は自分の誕生日であり、30回目の乗車記念日なんです。いつ来ても違う接客に感動しています。36ぷらす3は何度でも乗りたい、格別な列車です」と、ある日の乗客。パチパチと拍手の音が少しずつ重なり、一体感が生まれる瞬間だ。クルーからゲストへは手書きのメッセージが渡された。ゲストに寄り添うコンテンツや特別なおもてなしこそ、ここでしか味わえない感動体験なのだ。
自然、食、伝統、モノ、地域交流…
サンキュー列車はあらゆるエピソードを積んで走行中!
1|全国屈指の秘境駅で観光タイム
2|停車駅から広がる九州の輪
3|宮崎の食材をふんだんに
使用したイタリアンに舌鼓を打つ
「パッパカルボーネ」のシェフ、三角光作さんは、イタリアをメインにスイス、ロンドン、スペインなどで修業を積む。故郷に恩返しがしたいと地元で開業。宮崎の食材にこだわった、丁寧な仕事が生きるイタリアン弁当はこの列車でしか味わえない。
4|九州の伝統工芸に触れる
5|唯一無二のクルーのおもてなしを味わう
ソニックに乗り換えて、
もっとディープな九州旅を!
36ぷらす3から「ソニック」へ乗り換えて、途中下車を楽しむのもまた一興。いまだ知られざる九州の扉を開けるべく、ソニック沿線のローカルへ飛び込もう!
列車の旅は途中下車もまた醍醐味。思い立って降りてみると、そこにはまだ見ぬローカルが…。ネットで調べられる誰かの情報もいいけれど、自分で発見する楽しさこそが、いつまでも記憶に残る旅となる。徳川の譜代大名が治めていた杵築の城下町、別府の住民が愛する公共浴場、記念日が制定されるほどの特産品である中津のハモなど、ソニック沿線の九州ローカルを開拓しよう。
読了ライン
杵築エリア
日本唯一のサンドイッチ型城下町
別府エリア
温泉天国で癒しのひとときを
鉄輪(別府)エリア
36ぷらす3「緑の路」のエピソードを実際に体験!
宇佐エリア
国営の農地開発事業から生まれた安心院ワイン
中津エリア
中津はハモの骨切り発祥!?
「36ぷらす3」とは?
Train Data
名称|36ぷらす3
車両数|6両編成 席数|105席(全席グリーン)
施設|ビュッフェ、マルチカーなど
商品概要|食事付き「ランチプラン」、乗車のみ「グリーン席プラン」の2種類
料金|ランチプラン大 人 1名1 万2600 円(座席)〜、1万7600 円(個室)〜
Rail Data
木曜|博多>熊本>鹿児島中央
金曜|鹿児島中央>宮崎
土曜|宮崎空港・宮崎>大分・別府
日曜|大分・別府>小倉・博多
月曜|(佐世保行)博多>佐賀>肥前浜>武雄温泉>早岐>佐世保(博多行)佐世保>早岐>有田>武雄温泉>江北>佐賀>新鳥栖>鳥栖>博多
edit & text: Wakana Nakano photo: Hiromasa Otsuka plan: A2WORKS Design & Illustration by Eiji Mitooka + Don Design Associates
2023年4月号「すごいローカル、見つけた!」