【noma×日本料理】
京都の野山を味わう“八寸”から
ノーマ京都のすべて②
レネ・レゼピさん率いるnoma(ノーマ)が京都でポップアップを開催。このニュースにどれだけ多くの人が沸き立ったことか。デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く精鋭集団が春の京都でどんな景色を見せてくれたのか。ある日のディナーを紹介しながらその詳細をお届けしたい。
noma cuisine
まず運ばれてきたのは、茶懐石や懐石料理で供される八寸に着想を得た5種の味からなる料理。テーブルにざわめきが起こるようなファーストディッシュ。デンマークの作家が日本の編み方で編んだ籠に、色とりどり並ぶ様子は“若菜摘み”の文字が浮かぶ、まさに京都の春だ。春の野山の景色を巧みに切り取るのは、京の料理人も得意とするが、八寸という枠組みをこれほどまで押し広げ、エキゾチックに仕立てた発想に驚く。一見、奇抜に見えて京都にマッチしているのは、日本の食文化や自然をよく理解しているからだろう。八寸を担当したヘッドR&Dシェフの髙橋惇一さんをはじめ、スタッフ全員が日本を学ぶことからポップアップははじまっている。
丁寧な仕事が、レネ・レゼピさんの信頼を得ている髙橋さんは、5品の料理を完成させ、それをひとくくりに八寸とした。nomaはアイデアのプロといわれるだけあり、どれもが口中で何度も味を確かめたくなるほど重層的。「日本の食文化をリスペクトした上で、自分たちらしさを出しています。お皿の上にあるのは、技術だけでなく食材の生かし方も、nomaが20年かけて培ってきたもの。これまでに開発してきたソースを使って、ハッとしていただけるような料理をつくりました」
京料理に影響を与えた、精進料理に欠かせない湯葉を使った「湯葉と行者ニンニク」は、まさしくそんなひと皿だ。湯葉の中には煮詰めた味噌と燻製バターのペーストを詰めている。馴染みのある食材に新しい道が開けたようなひと皿は、試行を重ねたnomaだからこそ生み出せた料理。「ポーレンのジェル」もそう。髙橋さんが何度も挑んでつくり上げ、高知産のトマトのジェルにポーレン(ミツバチの花粉)をのせ、さらにカシスの枝のオイルで風味づけ。「トマトの花」は、トマトや果実をセミドライにして食感にも変化をつけた。「麦麹と赤しょうが」は京都の麦麹を炭火焼きに。「桜の葉と黒ニンニク」は、塩抜きした桜の葉に黒ニンニクのペーストを合わせる斬新さだ。酒は、ヘッドソムリエ・メースさんがリサーチトリップで出合った「日々醸造」とペアリング。京都開催を踏まえ、地元の酒からスタートした。
<料理>
湯葉と行者ニンニク、麦麹と赤しょうが、トマトの花、桜の葉、ポーレンのジェル
<ペアリング>
日々醸造/京都伏見
大人の肩幅ほどの大きさの籠に盛りつけられた八寸。春の野山に分け入り、そこで目にした草花を摘み取ったようなイメージでつくられた。野趣あふれる趣向は、テーブルクロスを使わないnomaのテーブルによく似合っていた。「日々醸造」の酒が、酸味や甘み、旨みなど、さまざまなフレーバーを受け止めている。
読了ライン
ニッポンの海と懐石料理の文化を再発見
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01|世界一のレストラン《noma/ノーマ》が京都にやってきた
02|【noma×日本料理】京都の野山を味わう“八寸”から
03|【noma×日本料理】ニッポンの海と懐石料理の文化を再発見
04|みんなでひとつを生む、nomaのつくり方。
05|世界一のレストランnomaのキーマンはヘッドR&Dシェフ・髙橋惇一さん
06|nomaが惚れた、ニッポンの食材
07|【noma×日本料理】限りなく無作為な自然をいただく。
08|【noma×日本料理】文化、食材への“探求”=nomaだ
09|最高の食事とサービスを提供するノーマ京都の舞台裏を公開
10|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【前編】
11|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【後編】
12|【noma×うつわ】うつわ選びへのこだわり
13|【noma×うつわ】noma×京都の料理を彩ったうつわ作家たち
text: Mayumi Furuichi
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」