FOOD

nomaが惚れた、ニッポンの食材
ノーマ京都のすべて⑥

2023.8.8
nomaが惚れた、ニッポンの食材<br><small>ノーマ京都のすべて⑥</small>

レネ・レゼピさん率いるnomaが京都でポップアップを開催。このニュースにどれだけ多くの人が沸き立ったことか。デンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く精鋭集団が春の京都でどんな景色を見せてくれたのか。ある日のディナーを紹介しながらその詳細をお届けしたい。

≪前の記事を読む

地域と会話しながら、食材の縁をつないでいく。

「食材を探すために高知に行ったとき、偶然赤ショウガに出合ったんです。その味に感動して、そこにおられた生産者の方と話しているうちに料理のイメージも膨らんできました。ポップアップに使いたかったので、どれくらいの量を仕入れさせてもらえるかその場で交渉しました。いいメニューはいい食材から生まれます。そのことはコペンハーゲンでも常に頭にあります」。そう声を弾ませるヘッドR&Dシェフの髙橋惇一さんらスタッフは、2020年には日本へ来て食材探しに奔走した。
 
nomaの食材探しは常にアクティブだ。店にこもらず、外に出て探すという考えがベースにある。出合いはさまざまで、マーケットもあれば人からの紹介もある。しかし、最もベーシックなパターンは自分たちの足で見つけ、まずは口に入れてその味を確かめることだ。たとえば道端の草花も気になったものは即座に食べてみる。どんな味なのかを自分の中に落とし込むのだ。ある意味、野性的で直接的なのはnomaのDNAといえるかもしれない。メニュー開発には味のインプットを増やしておくことが不可欠で、自然の中にこそ未知なるものがあることを皆が共有している。斬新なアイデアは、こうした探求心の先に生まれている。
 
nomaが世界にその名を知らしめたとき、コペンハーゲンの食材でつくることが話題になった。レネさんも当初の軸足はそこにあったが、やがてその範囲を広げていく。基本は地産地消、しかし最も大事なことは最高に美味しいものをつくること。柔軟な考えは、今回も見られた。はじめは京都を中心に関西の食材をピックアップ。懐石料理や精進料理で多用される湯葉も京都で賄った。高知で出合った赤ショウガは、京都の麦麹と合わせている。しかし、テーブルの景色をガラリと変えた6品目の海藻のしゃぶしゃぶの海藻は、沖縄産が中心。そういえば1品目の八寸に、エキゾチックな香りを運んだコウシンバラも沖縄の石垣島産。nomaは、小さな島国の食材のポテンシャルを外からの視点で引き出している。これらの食材を魅力的にしたのは、紛れもなくnomaの技術とアイデア。これまでに培ってきたものが日本の食材を得て、さらにパワーアップした。

読了ライン

<nomaが惚れた、ニッポンの食材>
◎1〜5品目 八寸/湯葉(京都)、行者ニンニク(北海道)、野草(京都 大原)、赤ショウガ(高知)、米麹・麦麹(京都)、トマト(高知)、サルナシ(長野)、コウシンバラ(沖縄 石垣島)、桜の葉(三重)、ハスカップベリー(北海道)、黒ニンニク(京都)
 
◎6品目 海藻のしゃぶしゃぶ/海藻(沖縄 九州 北海道など)、小夏(高知)、シーベリー(北海道)
 
◎7品目 タケノコとヤリイカの出汁/タケノコ(九州 四国 京都)、ヤリイカ(和歌山)
 
◎8品目 メカジキと昆布/メカジキの腹身(宮城)
 
◎9品目 青大豆豆腐と生アーモンド/青大豆豆乳(東京)、生アーモンド(山形)
 
◎10品目 キンキ/キンキ(北海道)
 
◎11品目 蓮根ステーキ/蓮根(徳島 茨城)、シジミ(滋賀 琵琶湖)
 
◎12品目 山菜/山菜(秋田 京都など)
 
◎13品目 伊勢海老/伊勢海老(徳島 三重)
 
◎14品目 緑米と薔薇/緑米(神奈川)、オクミドリ緑茶(奈良)/コウシンバラ(沖縄 石垣島)
 
◎15〜17品目 柚子ソルベと貴醸酒/ユズ(高知)、デコポン(愛媛)/満寿泉 貴醸酒(富山)、苺の餅/あまおう(福岡)、カニステル/カニステル(沖縄)、シークー(鹿児島)
 
※旬に合わせて、その時期のベストなものを仕入れているため、食材や産地が異なる場合があります。

 

【noma×日本料理】
限りなく無作為な自然をいただく。

 
≫次の記事を読む

 

《ノーマ京都のすべて》
01|世界一のレストラン《noma/ノーマ》が京都にやってきた
02|【noma×日本料理】京都の野山を味わう“八寸”から
03|【noma×日本料理】ニッポンの海と懐石料理の文化を再発見
04|みんなでひとつを生む、nomaのつくり方。
05|世界一のレストランnomaのキーマンはヘッドR&Dシェフ・髙橋惇一さん
06|nomaが惚れた、ニッポンの食材
07|【noma×日本料理】限りなく無作為な自然をいただく。
08|【noma×日本料理】文化、食材への“探求”=nomaだ
09|最高の食事とサービスを提供するノーマ京都の舞台裏を公開
10|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【前編】
11|理想のうつわを求めて、宮崎・高千穂へ【後編】
12|【noma×うつわ】うつわ選びへのこだわり
13|【noma×うつわ】noma×京都の料理を彩ったうつわ作家たち

text: Mayumi Furuichi
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」

京都のオススメ記事

関連するテーマの人気記事