ART

大人も子どもも楽しめる美術館
《テーマ別ミュージアムガイドカタログ55》

2022.11.15
大人も子どもも楽しめる美術館<br><small>《テーマ別ミュージアムガイドカタログ55》</small>
写真提供=ROKKO森の音ミュージアム

日本人なら誰もが一度は見たことがある名作や、自然と調和した屋外作品、スーパーマニアックなコレクションなど、この夏はどんな作品を楽しみたい気分ですか?全国の美術館や博物館を知り尽くしたマニアの方々に、テーマ別におすすめしたいミュージアムを教えていただきました。ミュージアムに行くのは、興味のある企画展が開催されているときだけ。そんな方にこそおすすめしたい、もっとミュージアムめぐりを楽しむための完全保存版です。

≪前の記事を読む

〈お話をうかがった方〉
藤田 令伊(ふじた・れい)
鑑賞ファシリテーター。
単に知識としての「アート」にとどまらず、見る体験としての「アート鑑賞」が鑑賞者をどう育てるかに注目し、楽しみながら成長できる鑑賞の在り方を探っている。モネの『ラ・グルヌイエール』を見て、「絵が動いている!」と感動したことがアートにはまったきっかけのひとつ。各種市民講座などアウトリーチ活動にも注力。主な著書に『アート鑑賞、超入門!』、『現代アート、超入門!』(ともに集英社)など。プラスリラックス共同代表。

大人も童心に帰って楽しめる!

実は、子どもは美術館には煙たがられているといったら驚くでしょうか。美術館では静粛な鑑賞環境が求められており、建前はともかく、現実には大きな声を出したりしがちな子どもは歓迎されないことが少なくありません(子どもが少ししゃべっただけで監視員が注意しに来たりなど)。

子ども連れにとって美術館は、そのように意外とハードルが高い施設ですが、一方で積極的に子どもを招いているところもあります。ここでご紹介するのは、大人が訪れてもおもしろいですが、子どもたちが何の心配もなく存分に楽しめる施設ばかりです。

子どもに目線を送る美術館は「体験」を重視していることが多いです。ただ単に展示作品を静的に、受動的に見るだけではなく、身体を動かしたり、五感を総動員したりして、自ら鑑賞をつくり出していくことが期待されています。その結果、鑑賞者はより主体的で能動的な見方が可能に。

「インクルージョン(包含)」という概念が注目されつつある昨今、子どもと気兼ねなく訪問できることは、これまで以上に意義のあることといえるでしょう。文化施設は、大人も子どもも楽しめてこそ、と考えたいものです。

日本におけるアート教育の変化

我が国の美術教育は、かつては知識教授一辺倒でしたが、近年では様相が変化。単に知識を与えるだけではなく、「自分なりの見方」を育むことが重視されるようになり、対話型鑑賞など新しいメソッドが採り入れられつつあります。主体的な「生きる力」の育成が目指されているのです。

あの名シーンに大人も子どもも没入体験
「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」

ⒸFujiko-Pro

『ドラえもん』の作者、藤子・F・不二雄こと藤本弘氏にちなんだ美術館。ドラえもんだけでなく、コロ助やパーマンといったお馴染みのキャラクターたちが来館者を出迎えてくれます。藤本氏直筆の原画が観られるほか、マンガがつくられるプロセスも学ぶことができます。子どもたちに人気なのは屋上の「はらっぱ」。空き地の土管やどこでもドアなど、マンガの世界が再現されており、大人も童心に帰ってワクワクすること間違いありません。まんがコーナーではマンガ読み放題!

作品に登場するアンキパンも!

川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム
住所|神奈川県川崎市多摩区長尾2-8-1
開館時間|10:00〜18:00
休館日|火曜、ほか不定休あり
料金|一般・大学生 1000円、高中生 700円、4歳〜小学生 500円、3歳以下無料 ※事前予約制
Tel|0570-055-245
施設|カフェ、ショップ、ミニシアター
https://fujiko-museum.com/

身体を使って学べる東京の新名所
「PLAY!」

写真提供=PLAY!

2020年6月、東京・立川駅北側の新街区グリーンスプリングスに誕生した文化複合施設。「MUSEUM」と「PARK」からなり、MUSEUMは絵と言葉がテーマの美術館、PARKは子どもが自ら遊びを見つけられる新しい遊び場になっています。どちらも大人と子どもがともに楽しめて、ワークショップや五感で味わえる展示など、体験型のコンテンツが重視されています。知育の観点でさまざまな仕掛けが考えられており、子どもたちへの教育的効果も期待できそうです。

PLAY!
住所|東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟
開館時間|〔MUSEUM〕10:00〜18:00
〔PARK〕10:00〜17:00(土・日曜、祝日は、〜18:00)
※入館は閉館の1時間前まで
休館日|不定休
料金|〔MUSEUM〕一般 1800円、大学生 1200円、高校生 1000円、中小生 600円、小学生未満無料
〔PARK〕一般 1100円、3〜12歳 2200円、3歳未満は 1700円 ※事前予約制
Tel|〔MUSEUM〕042-518-9625、〔PARK〕042-518-9627
施設|カフェ、ショップ
https://play2020.jp/

五感を刺激するアートで感性を磨いてみない?
「感覚ミュージアム」

写真提供=感覚ミュージアム

人間の五感をテーマにした珍しいミュージアム。見るだけではなく、五感で体感するうちに人間の身体や認知の仕組みが学べるようになっている——といった小難しい話はさておいても、光や音、匂いなどを駆使したユニークで多彩なメニューにワクワク、ドキドキしながら、大人も子どももリラックスしたココロを取り戻せること請け合いです。帰る頃にはリフレッシュ!

感覚ミュージアム
住所|宮城県大崎市岩出山字下川原町100
開館時間|9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)
料金|一般 600円、高中生 300円、小学生 250円、小学生未満無料
Tel|0229-72-5588
施設|カフェ
http://www.kankaku.org/

土と焼物に触れ合えるテーマパーク
「INAXライブミュージアム」

写真提供=INAXライブミュージアム

焼物の街・愛知県常滑市にあり、土と焼物をテーマにしています。子どもたちが特に目を輝かせるのが「土・どろんこ館」。土の魅力に触れる体験教室で、ものづくりのおもしろさを知ることができる施設です。「光るどろだんごづくり」は子どもだけではなく大人も夢中に。世界のタイルをはじめ、日本の古便器コレクションなどもあり、楽しみながら学びが得られます。

INAXライブミュージアム
住所|愛知県常滑市奥栄町1-130
開館時間|10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|水曜(祝日を除く)
料金|一般 700円、大高生 500円、中小生 250円、小学生未満無料
(「光るどろだんごづくり」は1個 900円。事前予約制)
Tel|0569-34-8282
施設|レストラン、ショップ
https://livingculture.lixil.com/ilm/

森の中で音楽に親しむ癒しのひととき
「ROKKO森の音ミュージアム」

写真提供=ROKKO森の音ミュージアム

神戸市の北西・六甲山にある四季折々の自然とさまざまな「音」の展示を楽しめるミュージアム。19〜20世紀前半につくられたアンティーク・オルゴールなどの自動演奏楽器があり、実演コンサートが楽しめます。オルゴールの組立体験では、世界にひとつ、自分だけのオルゴールを制作でき、タンバリンやカスタネットの組立体験では、子どもも楽しめるよう工夫されています。

ROKKO森の音ミュージアム
住所|兵庫県神戸市灘区六甲山町北六甲4512-145
開館時間|10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|木曜(〜11月17日、2月23日を除く)
料金|一般 1300円、4歳〜小学生 600円、3歳以下無料
Tel|078-891-1284
施設|カフェ、ショップ
https://www.rokkosan.com/museum/

 

全国各地のマニアックな美術館
 
≫次の記事を読む

 

text: Discover Japan, Rei Fujita
Discover Japan9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

RECOMMEND

READ MORE