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全国で楽しめる
教科書で見た“アレ”と美術館【後編】
《テーマ別ミュージアムガイドカタログ55》

2022.11.2
全国で楽しめる<br>教科書で見た“アレ”と美術館【後編】<br><small>《テーマ別ミュージアムガイドカタログ55》</small>
写真提供=SOMPO美術館

日本人なら誰もが一度は見たことがある名作や、自然と調和した屋外作品、スーパーマニアックなコレクションなど、この夏はどんな作品を楽しみたい気分ですか?全国の美術館や博物館を知り尽くしたマニアの方々に、テーマ別におすすめしたいミュージアムを教えていただきました。ミュージアムに行くのは、興味のある企画展が開催されているときだけ。そんな方にこそおすすめしたい、もっとミュージアムめぐりを楽しむための完全保存版です。

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古墳に描かれた飛鳥美人に出合える
『高松塚古墳壁画』/国宝高松塚古墳壁画 仮設修理施設

写真提供=奈良文化財研究所 掲載許可=文部科学省

「飛鳥美人」で有名な『高松塚古墳壁画』は、現在は古墳から石材ごと取り外され、文化庁の国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設で年4回程度公開されています。天文図や神獣が描かれた『キトラ古墳壁画』(国宝)も、キトラ古墳壁画体験館「四神の館」内で年4回程度公開されており、こちらは石室から漆喰を取り外して再構成した状態で保存。いずれも予約が必要なので、公開日をチェックして見逃さないように。近くにある墳丘も合わせて見に行きたいものです。

作者不明『高松塚古墳壁画』
制作年|7世紀後半〜8世紀初頭
材質|凝灰岩、漆喰、墨、岩絵具
サイズ|W780×D1160㎜
公開期間|次回は10月15日(土)〜10月21日(金)

国宝高松塚古墳壁画 仮設修理施設
住所|奈良県高市郡明日香村平田444
開館時間|9:00〜16:30
休館日|年4回、各7日間のみの公開。公式サイトを要確認
料金|無料 ※事前予約制
Tel|06-6281-3040(申し込み期間中のみ)
施設|なし
https://www.takamatsuzuka-kofun.com/

あの名画と本物のカキツバタを同時に鑑賞できる
『燕子花図屏風』/根津美術館

根津美術館は、1941年に東武財閥の創設者・根津嘉一郎のコレクションを元に開館しました。建築家・隈研吾さんが設計した新展示棟は、2009年にオープン。同館では、庭園のカキツバタがいっせいに開花する毎年4月半ばからの1カ月間、尾形光琳の『燕子花図屏風』を展示しています。5000円札にも描かれている“アレ”です。美術館で国宝を鑑賞し、庭園でモチーフとなった満開のカキツバタを楽しめる年に一度のチャンスをお見逃しなく!

尾形光琳(おがたこうりん)『燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)』
制作年|18世紀
材質|金、紙、藍銅鉱、孔雀石など
サイズ|右隻、左隻ともにW3588×D1512㎜
公開期間|4月半ばから1カ月間

根津美術館
住所|東京都港区南青山6-5-1
開館時間|10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(祝休日の場合は翌日休)、ほか不定休あり
料金|一般1500円、大高生1200円、中学生以下無料(特別展の場合。展示内容によって異なる) ※日時指定予約制
Tel|03-3400-2536
施設|カフェ、ショップ
https://www.nezu-muse.or.jp/

旧長州藩主の名宝が眠る大豪邸
『四季山水図(しきさんすいず)』/毛利博物館

写真提供=毛利博物館

旧毛利家本邸(重要文化財)の一部を利用している毛利博物館では、旧長州藩主・毛利家伝来の国宝・重要文化財を含む美術工芸品や古文書など、約2万点を収蔵しています。約2カ月ごとに展示資料の入れ替えが行われており、毎年秋には国宝を特別公開する展覧会を開催。室町時代、山口の守護大名であった大内政弘に献上された画僧・雪舟による『四季山水図(山水長巻)』は圧巻で、大内氏の滅亡後に毛利家の所有となった作品です。

雪舟等楊(せっしゅうとうよう)『四季山水図』
制作年|1486年
材質・技法|紙本墨画淡彩
サイズ|W16023×D408㎜
公開期間|11月

毛利博物館
住所|山口県防府市多々良1-15-1
開館時間|9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|12月22日〜12月31日、ほか不定休あり
料金|一般1000円、中小生500円(特別展「国宝」の場合は一般1200円、中小生600円)
Tel|0835-22-0001
施設|庭園
http://www.c-able.ne.jp/~mouri-m/

アジアで唯一、“ゴッホのアレ”を公開
『ひまわり』/SOMPO美術館

写真提供=SOMPO美術館

1976年に、西新宿の安田火災海上本社ビル内に開館した東郷青児美術館が、2020年7月に「SOMPO美術館」として新築移転オープン。同館では、ゴッホが描いた『ひまわり』をアジアで唯一見ることができます。なお、徳島県鳴門市の大塚国際美術館では、阪神大空襲で焼失したものを含む、花瓶に入った『ヒマワリ』7点すべてを陶板で原寸大に再現して展示しており、こちらもおすすめ。(大塚国際美術館については、https://o-museum.or.jpをチェック!)

フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』
制作年|1888年
材質・技法|油彩、カンヴァス
サイズ|W765×D1005㎜
公開期間|通年

SOMPO美術館
住所|東京都新宿区西新宿1-26-1
開館時間|10:00 〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(祝日を除く)、ほか不定休あり
料金|一般1600円、大学生1100円、高校生以下無料(10月10日まで開催の「スイス プチ・パレ美術館展」の場合。展覧会によって異なる)
Tel|050-5541-8600(ハローダイヤル)
施設|ショップ
https://www.sompo-museum.org/

自然に囲まれた“ミレーの美術館”
『種をまく人』/山梨県立美術館

写真提供=山梨県立美術館

芸術の森公園内にある山梨県立美術館は、1978年の開館から3年足らずで入館者数が100万人を超え、その後全国から視察が引きも切らない「ミレーの美術館」として有名になりました。同館の目玉であるミレーの『種をまく人』は、置県100周年記念事業として1億700万円で購入したものです。同館には、モナリザを連想させる同じくミレーの描いた作品『ポーリーヌ・V・オノの肖像』もあり、こちらも見逃さないようにしましょう。

ジャン=フランソワ・ミレー『種をまく人』
制作年|1850年
材質|油彩、麻布
サイズ|800×997㎜
公開期間|通年

山梨県立美術館
住所|山梨県甲府市貢川1-4-27
開館時間|9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(祝日の場合は翌日休)、祝日の翌日、ほか不定休あり
料金|一般520円、大学生220円、高校生以下無料
Tel|055-228-3322
施設|レストラン、ショップ
https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/

エコール・ド・パリ作品が充実した名美術館
『おさげ髪の少女』/名古屋市美術館

写真提供=名古屋市美術館

1988年に開館。建物は同県出身の建築家・黒川紀章の代表作のひとつ。郷土の作家から現代美術まで幅広く収蔵していますが、いわゆるエコール・ド・パリ(20世紀前半にパリで活動した外国人画家たちの総称)を代表する藤田嗣治、シャガール、ユトリロ、ローランサンなどの作品が有名。美しい髪に彫りの深い端正な顔立ちが魅力のモディリアーニ『おさげ髪の少女』は逸品で、開館前々年当時の購入価格は3億6000万円。

アメデオ・モディリアーニ『おさげ髪の少女』
制作年|1918年頃
材質|油彩、カンヴァス
サイズ|W454×D601㎜
公開期間|通年

名古屋市美術館
住所|愛知県名古屋市中区栄2-17-25
開館時間|9:30〜17:00(9月23日を除く。金曜は〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(8月15日は開館、祝日の場合は翌日休)、9月26日〜10月7日、11月28日〜3月31日
料金|一般300円、大高生200円、中学生以下無料
Tel|052-212-0001
施設|カフェ、ショップ、図書室
http://art-museum.city.nagoya.jp/

 

日本で堪能できる「印象派」美術館
 
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text: Discover Japan, Yuji Kurihara
Discover Japan9月号「ワクワクさせるミュージアム!/完全保存版ミュージアムガイド55」

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