《京都市 京セラ美術館》生まれ変わったアートの発信地へ|前編
1933(昭和8)年の開館以来、京都のアートシーンの一翼を担ってきた京都市美術館。このたびはじめての大規模リニューアルを実施し、通称「京都市京セラ美術館」に。壮麗な歴史的建築に現代的なデザインが加わった、古都の新しい美の拠点へ。
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光あふれる大空間が
来館者を迎えてくれます
日本最古の
美術館建築の面影に出合う
昭和初期の薫りが残る重厚・美麗な帝冠様式
神社仏閣や文化施設に美術館が建ち並ぶ岡崎エリアは、京都のアートシーンの中心地。中でもいま、熱い注目を集めているのが、2020年5月にリニューアルオープンした「京都市京セラ美術館」だ。
京都で挙行された昭和天皇の即位の大礼を記念して、1933(昭和8)年に関西の財界や美術界、市民の寄付でつくられた国内2番目の公立美術館であり、その本館は、公立美術館として現存する国内最古の建築として、国登録有形文化財にも指定されている。戦後駐留軍に接収された後、解除に伴って「京都市美術館」と改称。関西屈指の美術館として愛され、「ミロのヴィーナス特別展」や「ツタンカーメン展」等の大規模展も多数催してきた。
鉄筋コンクリート2階建ての堅固な洋風躯体に和風の屋根を冠した、帝冠様式と呼ばれる和洋折衷の建築で、ファサードの中央に千鳥破風を配したシンメトリーな外観は、岡崎エリアを代表するランドマークのひとつだ。しかし、建物の老朽化が進んできたことから、大規模な改修を計画。現存の建築を最大限保存・活用しながら、新しい展示スペースを設置し、動線の大胆な変更などを加え、新旧の意匠が巧みに混じる空間へと生まれ変わった。
これまで地上にあったエントランスは、かつて下足室だった地下に設けられた。来館者は、平安神宮へと続く神宮道に面した「京セラスクエア」のゆるやかなスロープから、全面ガラス張りのファサード「ガラス・リボン」を通って入館する。メインエントランスから階段を上ると、広々とした中央ホールに出る。白で統一された開放的な空間の一隅には、新設のらせん階段があり、早速撮影スポットとしても人気を集めている。その脇を奥に進めば、大理石の重厚な階段が姿を現す。開館以来数多の来館者を迎えてきた、かつての正面玄関だ。階段を上り2階に向かうと、天窓からの光が印象的な西広間が佇む。美麗な細工が施された壁やモザイクタイルが貼られた床の意匠、現在は使われなくなった入場券売場など、建築当初の面影がそのまま残っている。アール・デコ様式の影響を受けた照明器具やステンドグラスなど、館が歩んできた80年余りの歴史がしのべるディテールを味わいながら、洋風建築の中に日本建築の要素が加わった「日本趣味建築」の美意識の中に浸りたい。
京都市京セラ美術館
住所|京都市左京区岡崎円勝寺町124
Tel|075-771-4334
開館時間|10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日|月曜(祝日の場合は開館)、年末年始
料金|コレクションルーム 一般730円(市外在住者)、企画展・別館は展覧会ごとに異なる
アクセス|京都市営地下鉄東山駅から徒歩約8分
https://kyotocity-kyocera.museum
text: Yasunori Niiya, Yuki Sawai (Arika Inc.) photo: Mitsuyuki Nakajima
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