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山田遊さんと岐阜県 飛騨高山で自由な民藝に出合う。
民藝に会いに行く。vol.1

2020.8.27
山田遊さんと岐阜県 飛騨高山で自由な民藝に出合う。<br><small>民藝に会いに行く。vol.1</small>
奥井木工舎の「飛驒の雪入道」

旅先では、土地で育まれた民藝品をお土産にしたいもの。民藝に造詣の深い方々に、注目の民藝品と私的コースを伺った。今回はバイヤーでキュレーターの山田遊さんに、深い山々に囲まれた飛騨高山エリアで、伝統的建造物が多く残り、インバウンド観光客にも人気のこの地の民藝事情を聞きました。

山田遊(やまだ・ゆう)
IDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年にmethodを設立。バイヤーとして活動をはじめる。著書に『デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド』など。「飛驒高山ものづくり実践塾」で講師を務める

山田遊さんがはじめて高山を訪れたのは高校生の頃。当時、高山で陶芸を学んでいた姉に会いに行くのが目的だったそうだ。その後、高山に足を運ぶことはなかったが、2018年から仕事で頻繁に通うようになったという。
「高山に対し、民藝の印象はあまり抱いていなかったんです。ただ大人になって日下部民藝館を訪ねたら、すごくよかったんですよ。国の重要文化財に指定された建物は見事なつくりで、“飛騨の匠”と称される職人の技術が随所に感じられる。もちろん館内には多彩な民藝品が展示されています」

山田さんは高山の民藝をどのようにとらえているのだろう。
「民藝品って、本来は非常に自由なものだと思うんです。高山の民藝は土俗的というよりフォークアート的。真工藝の木版手染ぬいぐるみなんて、まさにそうですよね。版画を布にる独自の手法を開発し、それを立体にしていくという発想が素晴らしい。さまざまな生き物がモチーフになっているのですが、僕のお気に入りは魚と鳥。生き生きしていてかわいいんですよ。製品を竹籠に入れて並べている様子もすてきなんです」
そんな中、ある種の“民藝店らしい民藝店”としておすすめしてくれたのが、朝倉圭一さんが営む「やわい屋」だ。店があるのは山間の小さな集落。ここに築150年の古民家を移築し、各地でつくられた生活道具を販売している。

「やわい屋に足を運ぶと、この土地の魅力が体感ができると思いますよ。旅先では、やっぱり地元でつくられたものが欲しいじゃないですか。やわい屋はこの役目もしっかり果たしている。取り扱うペンダントライトのつくり手である安土草多さんは、高山で活動されている注目のガラス作家。奥井木工舎の奥井京介さんが製作する木杓子や飛驒の雪入道からは、高山の風土が感じられます」

奥井木工舎では随筆家の白洲正子が“杓子の中の王者”とたたえた杓子を長年手掛けており、現在はその経験をもとに改良を重ねた新しい木杓子を製作。材料のホオノキには抗菌作用があり、丈夫で使いやすい仕上げも魅力だ。
「ホオノキの葉は朴葉味噌などの郷土料理にも多用されていますし、昔の人は生活の知恵として素材の効果を知っていたんですよね。雪入道は木杓子づくりで出る木片を使って製作された愛らしい置物。僕の勝手な妄想ですが、高山の寺院に多数残されている円空仏とオーバーラップするんです」
四季折々で美しい表情を見せる飛騨高山。豊かな自然と自由な感性で生まれた民藝品の数々は、国内外の旅人を魅了している。

奥井木工舎の「木杓子」

江戸時代から伝わる有道(うどう)杓子を、木の繊維を最大限生かし、より使いやすいように改良。ホオノキを丸太から手作業で切り出して製作するため丈夫。木肌はなめらかだ。

やわい屋
価格|大8250円
サイズ|H約300×W約90㎜

奥井木工舎の「ヒダノオセッカイ」(切匙)

抗菌作用や加工のしやすさをもつホオノキの特性を生かし、鉈(なた)と出刃包丁のみで仕上げている。湾曲した部分や背の部分も使用でき、お菓子づくりの際にも重宝する。

やわい屋
価格|大3410円
サイズ|約H270×W60mm

安土草多さんの「ペンダントライト」

吹きガラスによって製作。光のゆらめきが美しい。「やわい屋」では全種類の取り扱いがあり、ウェブページでは点灯時と消灯時の写真が確認できるため、購入時の助けになる。

やわい屋
価格|1万6500円
サイズ|約φ100×H100mm、コードの長さ約700mm、金具の長さ約50mm

奥井木工舎の「飛驒の雪入道」

雪が降った翌日の夜明け前に出るといわれる妖怪「雪入道」をモチーフにした置物。木杓子づくりの端材を使用し、木の表情を生かして製作。独自の発案によって誕生した。

やわい屋
価格|3300円
サイズ|H315×W70×D30㎜
※大、中、小などの個体差あり。価格はすべて共通

真工藝の「木版手染ぬいぐるみ」

大岩魚
四十雀

版画技術を応用して制作する手づくりのぬいぐるみ。染料を版木にのせてから生木綿に摺(す)り、高温で蒸して色を定着後、布の中にもみ殻を詰めて縫い上げていく。

真工藝 本店
価格|大岩魚2904円、四十雀968円
サイズ|大岩魚H95×W345×D65㎜、四十雀H65×W145×D35㎜

1泊2日のおすすめルートを紹介!

1日目
JR高山駅
↓ 徒歩 15 min.
日下部民藝館
↓ 徒歩 14 min.
真工藝 本店
↓ 車 11 min.
オーベルジュ
飛騨の森に宿泊

2日目
オーベルジュ
飛騨の森を出発
↓ 車 25 min.
飛騨古川を観光
↓ 車 12 min.
国八食堂
↓ 車 12 min.
やわい屋

日下部民藝館
ダイナミックな梁が天井を走る豪壮な建築。飛騨の古陶磁や花嫁籠など、各種民藝品を展示。
住所|岐阜県高山市大新町1-52
Tel|0577-32-0072
営業時間|3月〜11月9:00〜16:30、12月〜2月9:00〜16:00 3月〜11月なし、12月〜2月火曜、12月29日〜1月3日10:00〜15:00、1月は不定休あり
入場料|一般500円、中小学生300円、幼児以下無料

真工藝 本店
高山駅から徒歩約10分、高山陣屋の近くに店はある。店内には鮮やかで愛らしいさまざまなぬいぐるみ並ぶ。「干支シリーズ」が人気。
住所|岐阜県高山市八軒町1-86
Tel|0577-32-1750
営業時間|10:00〜17:00
定休日|火曜

オーベルジュ飛騨の森
自然の中に佇む館内では、季節の食材を用いたイタリアンとワインが味わえる。ウォーキングなども楽しみ存分に寛ぎたい。
住所|岐阜県高山市新宮町3349-1
Tel|0577-34-6575
料金|1泊2食付プラン1万2900円〜(税・サ込)

やわい屋
うつわや生活道具を扱う店。屋根裏は店主が選書した古書店で、ゆったりした時間が流れている。作家の個展なども随時開催。
住所|岐阜県高山市国府町宇津江1372-2
Tel|0577-77-9574
営業時間|13:00〜17:00/土・日曜・祝日 11:00〜17:00
定休日|水〜金曜

text: Nao Ohmori photo: Norihito Suzuki map: Alto Dcraft
2020年7・8月号 特集「この夏、どこ行く?ニッポンの旅計画108」


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《民藝に会いに行く。》
1|山田遊さんと岐阜県 飛騨高山で自由な民藝に出合う。
2|山田遊さんと島根県 出雲〜松江でうつわをめぐる冒険
3|ビームス「フェニカ」ディレクターが日本の最高の手仕事が息づく栃木県 益子へ
4|鞍田崇さんと民具、民藝の”中間”を求める旅
5|工藝風向 高木崇雄さんと九州筑後川流域へ進化する民藝と出合う。
6|お菓子研究家 福田里香さんが推薦「かわ善い民藝」

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