飛騨の新たな旅の拠点。
「オーベルジュ 玄珠(げんじゅ)」【後編】
岐阜県中部、飛騨高山と、郡上八幡、下呂を結ぶちょうど真ん中にある山懐「飛騨清見・大原」。その地に誕生したのは赤さびの鉄に覆われた建物。そこは岐阜の食、風土が感じられる、旅人が集う場所でした。今回は、飛騨のサステイナブル・リゾート「玄珠」の魅力を前後編記事にてご紹介。
四季折々の風景と調和する
パラモダン建築
「近くに川が流れ、三方が山に囲まれているのに、東側の山はそれほど高くなく、午後は光がよく入る。オーベルジュ玄珠の建築予定地を見たとき、バランスがいい場所だと感じました」
こう語るのは、設計を担当した遠藤秀平さん。次世代にパラモダンを提唱し、独自の空間設計を行う建築家だ。
山裾の土地は、よく建物を山に近づけて建築する手法が見られるが、この環境を楽しむために、あえて山から少し距離を置き、新緑から紅葉、落葉、冬は雪景色と、四季折々で変化する山の風景を、窓から楽しめる場所に建設。建物は、自身が得意とするコルゲート鋼板を使ったデザインで、極力シンプルに。Rを描いた屋根は、冬は積雪量が多いことから、厳しい自然環境より守るかたちとなっていて、雪が自然に滑り落ちるなど、デザイン性だけでなく機能面でも威力を発揮している。
エントランスの扉を開くと、頑強な外観から印象がガラリと変わる。各所に飛騨地方の杉、檜を使用し、柔らかな雰囲気。かつては敬遠されていた節が目立つ木材を組み合わせ、柱や梁に。壁はモルタルを使うなど、材料は極力ミニマムにしているが、変化と多様性に富んだ建物は、居心地がよく、非日常の幸福を享受することができる。
自然の営みと向き合い
さらなる旅の可能性を広げる場所へ
「オーベルジュ 玄珠は、空海が弟子に寄せた詩の中にある“山水を経て玄珠を磨く”という言葉から、アンバサダーでもある高野山高祖院住職の飛鷹全法氏に命名していただきました。自然の中で、ふと我に返る場所を創造できれば」オーナー・小島伸浩さんがレストラン主体型宿泊施設・オーベルジュを開業させたのはそんな思いから。高山市から購入した公園内の土地は、自然に恵まれているが、駅や高速道路、有名観光地から離れている。
オーベルジュとして食文化を満喫するのはもちろんのこと、旅の拠点とすべく、小島さんは多彩なアドバイザーを迎え入れている。オーベルジュの本拠地、フランスで暮らしてきた内藤ゆりやさん、ボルドーワイン醸造家として現在もフランスに拠点を置く篠原麗雄さんらもそのメンバーで、オーベルジュの楽しみ方を教えてくれた。
「たとえば、宿でマウンテンバイクを借りて、高山市街地や下呂方面を目指して走ってみると、途中、決して有名じゃないけれど地形や歴史がおもしろい場所が発見できると思うんです。ひとつの場所を拠点に、東西南北を動く旅はフランス人が大好きな旅のスタイル。1日じゃ足りないから、オーベルジュには数日滞在がおすすめです」
今後は敷地内にスパ施設やグランピング施設も展開予定。「未完成の部分もありますが、皆に協力してもらい、手づくりのリゾート施設をつくりたい」と小島さんは未来を描いていく。
玄珠ならではの過ごし方
遊歩道が整備された裏山でのトレッキング
宿泊者だけの特権!満天の星を独り占め
露天風呂を増設中!
2021年1月上旬、薪で沸かした地下水を、サワラの浴槽で楽しむ露天風呂がオープン。森と星空をテーマとしたスパ棟で、オリジナルのアルガンオイルやプラセンタも販売中。
大自然を満喫できる
ロングステイプランを用意
自然豊かなリゾートを体感するには、ロングステイがおすすめ。プランの詳細は問い合わせを。
1.ファスティングプログラム「食養生コース」
2.観光ガイド付きワ—ケーションプラン
3.第二回アート・オブ・レジデンスの企画開催(2021年春予定)
オーベルジュ 玄珠
住所|岐阜県高山市清見町大原801-5
Tel|0577-70-8861
客室数|15室
料金|1泊2食付2万500円〜(税・サ別)
カード|さるぼぼコイン、AMEX、Diners、DC、JCB、UC、VISAほか
IN|15:00 OUT|11:00
夕食・朝食|レストラン(和食) ※身土不二コースは+5000円〜オーダーメイドにて用意
アクセス|車/岐阜・名古屋方面から東海北陸自動車道郡上八幡IC経由、せせらぎ街道を高山方面に約35分
施設|ロビーラウンジ、テラス、露天風呂(2021年1月上旬オープン)、プライベートガーデン、トレッキングコースを有するふるさと公園(高山市管理)
ネット|Wi-Fi
photo: Yoshiharu Matsumura text: Hiroko Yokozawa photo: Kazuhiko Iwahori
Discover Japan 2021年2月 特集「最先端のホテルへ」