《岐阜市立中央図書館》
波打つ東濃ヒノキの天井とグローブが美しい
岐阜市の市内中央部に位置する「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、図書館や展示ギャラリーなどからなる岐阜を代表する複合文化施設。近未来的な建物を設計したのは、建築家・伊東豊雄氏。なかでも、大きな傘のようなグローブがいくつも配されている「岐阜市立中央図書館」は、日本家屋のような風通しの良い建築がされ、開放的で明るく、つい時間を忘れてしまうような居心地の良い空間だ。そんな伊東氏が手がけた「岐阜市立中央図書館」の魅力を紹介。
つい時間を忘れてしまうような
滞在型図書館
岐阜市立中央図書館は、「滞在型図書館」をコンセプトに、『ここにいることが気持ちいい』、『ずっとここにいたくなる』、『何度でも来てみたくなる』。この3つを合言葉として、子どもから大人まで、あらゆる世代が集い、本を通して「人」と「人」、「人」と「まち」がつながっていく、そんな居心地のいい図書館を目指している。
日本家屋のような風通しの良い建築
この建物は、岐阜駅から長良川、金華山をつなぎ、まちに緑のネットワークが広がっていくことをイメージ。地域の文化や環境にふさわしいデザインや素材にもこだわりながら明るい森のような建築が施されている。
大小の異なる建物を組み合わせ、にぎわいのある「まち」を表現。外観のファサードは木材・銅板・ガラスを組み合わせ、木材の間隔は銅板部分を狭く、ガラス部分は広くすることでガラスの表面に岐阜の青空や緑が投射され、まちと一体化した景観をつくり出す。
館内に入ると岐阜県産の東濃ヒノキが香る。ヒノキに含まれる「フィトンチッド」には、癒やしの効果があるそうだ。
2階図書館の天井には東濃ヒノキが使用され、岐阜の山々の稜線を思わせる木造格子屋根は職人の手によって一つ一つ積み上げられている。グローブ上部でむくりあがった曲面は、ヒノキ特有のしなりが活かされている。
図書館、最大の特徴でもある大きな傘が吊られたグローブは、それぞれのエリアを包み込むようにいくつも配されている。グローブの模様は地元の学生が、不織布を1枚1枚貼り付けたものだそうだ。グローブはデザインとしての美しさだけでなく、実は省エネルギーで快適な環境づくりがされている。昼間は上部のトップライトから自然光を取り込み、夜はLED照明を用いて光のドームとして演出する仕組み。また、トップライト中央が上下開閉し、寒い日は閉鎖することで暖かい空気をグローブ内に貯め、夏の暑い日には解放して熱気を外部に放出し、2階の大空間を換気することができるため、グローブの際に立つと、空気の流れを感じられる。
図書館は伊東氏のアイデアと岐阜の気候風土や県産材、そして職人の技術が詰まった空間だ。
建築家
伊東豊雄(いとう・とよお)
1941年生まれ。1965年東京大学工学部建築学科卒業。主な作品に、せんだいメディアテーク、多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)、台中メトロポリタンオペラハウス(台湾)などがある。日本建築学会賞作品賞、ヴェネチィア・ビエンナーレ「金獅子賞」、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダルなど受賞。2011年には愛媛県今治市大三島町に今治市伊東豊雄建築ミュージアムを設立。
開放感あふれる空間
中央図書館には約53万冊を超える蔵書のほか、500種類以上の雑誌も常備。本棚はグローブを中心に、渦を巻くように配置されている。座席数は約900あり、自分が居心地良く感じる場所を見つけて、それぞれの時間を過ごすことができる。
天井から吊り下げられたグローブは全部で11個あり、それぞれには異なった柄がデザインされている。総合カウンターは丸柄、親子スペースは花柄、中高生専用のヤングアダルトスペースには正方形のチェック柄など、グローブの違いを視覚的に認識でき、案内板のイラストともリンクしているので、行きたいエリアが探しやすい。
晴れた日には金華山に面してつくられた「金華山テラス」で読書をするのもおすすめ。そのほかにも「ひだまりテラス」「並木テラス」と、3つのテラス席や、図書館所蔵の視聴覚資料を視聴できる「みる・きくシート」もある。
図書館の中央には、1階の公開書庫スペース「本の蔵」へと続く階段とエレベーターがあり、新聞縮刷版や電話帳、寄贈文庫や古い資料などが保管され、自由に閲覧可能。
1階は「市民活動交流センター」「みんなのギャラリー」を中心に市民の交流の場となっている。フリースペースでは、自由に飲食することができる。
東濃ヒノキをふんだんに使った空間で、グローブに包まれながら読書をしたり、くつろいだり、交流をしたりと、それぞれの過ごし方を楽しめる「岐阜市立中央図書館」。岐阜へ訪れた際には、ぜひ足を運んでみてはいかが。
岐阜市立中央図書館
住所|岐阜県岐阜市司町40番地5
Tel|058-262-2924
開館時間|9:00~20:00
休館日|毎月最終火曜日 年末年始(12月31日~1月3日)
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