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ビームス「フェニカ」ディレクターが
日本の最高の手仕事が息づく栃木県 益子へ
民藝に会いに行く。vol.3

2020.8.29
ビームス「フェニカ」ディレクターが<br>日本の最高の手仕事が息づく栃木県 益子へ<br><small>民藝に会いに行く。vol.3</small>

旅先では、土地で育まれた民藝品をお土産にしたいもの。民藝に造詣の深い方々に、注目の民藝品と私的コースを伺った。今回は、ビームス「フェニカ」ディレクター テリー・エリスさんと北村恵子さんに、濱田庄司が残した気風がいまも残り、毎年の陶器市で知られる益子を案内してもらった。

テリー・エリスさん/北村恵子さん
「フェニカ」のディレクションとバイイングを担当する二人。ロンドンと東京に拠点をもちファッションアイテムからインテリアまで、独自の審美眼でセレクトする。全国の産地を飛び回り、益子には20年以上通う

イギリス・ロンドンを拠点にバイヤーとして活躍していたテリー・エリスさんと北村恵子さんが、民藝の扉を開いたのは柳宗理のバタフライスツールがきっかけだった。柳宗理に教えを請うた二人は、つくり手に会うべく日本各地へと旅に出ることになる。「沖縄の読谷村からはじめて、次に訪ねたのが栃木県の益子町でした」とエリスさんは振り返る。

益子で作陶がはじまったのは、江戸時代の後期頃からといわれる。益子焼のスタイルは“スタイルがないこと”といえるくらい自由。中には益子の土や釉薬を使わない作家もおり、多様なつくり手を許容する土壌がある。よそから移り住み窯を開く人も多いのが特徴だ。

そんな現在の益子のもつ自由な雰囲気は、柳宗悦、河井寬次郎と並んで民藝運動の中心人物であった濱田庄司が礎を築いた。1923(大正12)年、イギリスから帰国した濱田庄司は、創作活動の拠点として益子を選んだ。自邸の一部は、現在「濱田庄司記念益子参考館」として公開されており、蒐集品や濱田庄司自身の作品を通して町の歴史を知ることができる。「雑誌『民藝』をはじめ、貴重な書籍も充実しているので、ゆっくり時間を取ってみてください」とエリスさんは話す。

現在、使われている登り窯を見学できる窯元もある。「大誠窯では登り窯のほか、併設されるギャラリーも見応えがあります。7代目の大塚誠一さんは、スリップウェアの名手で知られる丹波篠山の柴田雅章さんの下で修業されていて。彼自身かなりの古物コレクターでもあるのですが、そうした影響を感じさせる独自のスタイルを追求されています」と北村さんは話す。

このエリアで活躍するのは陶器のつくり手だけではない。隣の茂木町には木漆作家・松崎修さんの工房(一般公開なし)があり、ビームスでも販売されている。また栃木木綿を使って藍染をする日下田藍染工房では、築200年以上の建物にずらっと並ぶ藍甕を見ることができる。運がよければ実際に染めの工程も見学できるという。

また益子では、地域の店が町の歴史や価値観を伝える役割を担う。「民芸店が益子の外から来た若い作家に古いうつわを見せたり、昔の話を口伝えに教えたりされているそうです」と北村さん。
益子で最初の民芸店「民芸店ましこ」や、来客が絶えなかった濱田庄司邸に、若かりし頃に饅頭を届けていたというお母さんが店番する「赤羽まんぢう本舗」など、町の至るところから益子らしさは感じられる。

東京からならものの2時間で到着する益子の絶妙な距離感は、旅行者にもありがたいものだが、つくり手たちにとっても自由に創作に没頭できる理想的な環境なのだ。

大誠窯の「丸皿」

柿釉・糠白釉・黒釉・飴釉・糠青磁釉といった益子伝統の釉薬を用いる大誠窯。益子最大規模の登り窯で焼かれた丸皿は、底に自然な模様が浮かび上がる。6代目・大塚邦紀氏の作。

価格|本人私物
サイズ|H40×φ150㎜

大誠窯の「マグカップ」

北村さん:エリスさんが毎朝コーヒーを飲んでいるマグカップ。「こちらは6代目の作ですが7代目・誠一さんもまた雰囲気がぜんぜん違って魅力があります」。

価格|本人私物
サイズ|H85×W120(取手含む)×D95㎜

濱田窯×fennica 「別注 六角皿」

濱田庄司が生前に作陶していたかたちを基にした角皿。濱田窯は現在、濱田庄司の孫にあたる濱田友緒さんが3代目を継ぐ。

ビームス ジャパン
価格|1650円、2200円、2750円
サイズ|H25×φ120㎜、H30×φ140㎜、H35×φ145㎜
Tel|03-5368-7304

日下田藍染工房の「益子木綿マフラー」

益子で自家栽培された綿花を藍で染めたマフラー。そのほか、ハンカチやTシャツ、暖簾などさまざまなアイテムを製作している。

日下田藍染工房
価格|2万3600円
サイズ|H1710(ふさ85〜110)㎜×W350㎜

おすすめルートを紹介!

JR宇都宮駅
↓ 車 50 min.
益子駅
↓ 車 10 min.
濱田庄司記念益子参考館
↓ 徒歩 5 min.
大誠窯
↓ 徒歩 5 min.
日下田(ひげた)藍染工房
↓ 車 10 min.
道の駅 ましこ
↓ 車 10 min.
中心部で買い物
①「民芸店ましこ」
②「陶庫」
③「うつわのみせ佳乃や」↓ 車 5 min.
陶芸メッセ・益子
↓ 車 5 min.
赤羽まんぢう本舗
↓車 45 min.
宇都宮

濱田庄司記念益子参考館
国内外、古今東西にわたる濱田庄司の蒐集品や自身の作品が展示される。濱田庄司の孫・濱田友緒さんが自ら手入れする庭も見どころ。
住所|栃木県芳賀郡益子町益子3388
Tel|0285-72-5300
営業時間|9:30〜17:00(入館〜16:30)
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休)、臨時休館あり
入場料|一般800円、高中生400円、小学生以下無料
https://mashiko-sankokan.net/

大誠窯
1861年に創業。益子の土と材料を用いて日常のうつわをつくる。別棟にはギャラリーを備える。
住所|栃木県芳賀郡益子町城内坂92
Tel|0285-72-2222
営業時間|8:00〜17:00
定休日|火曜
https://www.hibinokurashi.com/jp/pottery/54

日下田藍染工房
寛政年間に創業した工房は、栃木県の文化財に指定される美しい茅葺きが目印。現役で使用される72個の藍甕が並ぶさまは壮観。
住所|栃木県芳賀郡益子町城内坂1
Tel|0285-72-3162
営業時間|8:30〜17:00
定休日|月曜
http://www.mashiko-kankou.org/

道の駅 ましこ
益子産の農産物や地域の食材を購入できる道の駅。「ビルマ汁」というトマトやナスなど夏野菜でつくる名物も食べられる。
住所|栃木県芳賀郡益子町長堤2271
tel|0285-72-5530
営業時間|9:00〜18:00
定休日|第2火曜
http://m-mashiko.com/

①民芸店ましこ
エリスさん:濱田庄司デザインの暖簾が掛かる。「売り場の編集が素晴らしい。あらゆるものが確かなセレクトで並びます」。
住所|栃木県芳賀郡益子町益子2901
Tel|0285-72-2231
営業時間|10:00〜16:00
定休日|火曜

②陶庫
北村さん:大谷石蔵を改装し1974年にオープン。「現代作家の展示会を開催したり、焼物以外の郷土玩具なども扱われています」。
住所|栃木県芳賀郡益子町城内坂2
Tel|0285-72-2081
営業時間|10:00〜18:00
定休日|年末年始

③うつわのみせ佳乃や
益子のメインストリートからは少し離れた位置にあるので、ゆったりうつわを選べる。日常のうつわのほか、作家ものも取り扱う。
住所|栃木県芳賀郡益子町大字益子3169-1
Tel|0285-72-8717
営業時間|10:00〜17:00
定休日|木・金曜

陶芸メッセ・益子
北村さん:濱田庄司邸を移築公開するほか、登り窯も復元。「丘の上にあるので季節の花や木々を見ながら下から歩くのがおすすめ」。
住所|栃木県芳賀郡益子町大字益子3021
Tel|0285-72-7555
営業時間|9:30〜17:00、11〜1月〜16:00 ※入館は閉館の30分前まで
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休)
入場料|一般600円、中小生・65歳以上300円
http://www.mashiko-museum.jp/

赤羽まんぢう本舗
北村さん:地元で愛されるシンプルな饅頭はお土産にも。「濱田庄司は来客が多かったため毎日100個注文していたという逸話も」。
住所|栃木県芳賀郡益子町益子2910-2
Tel|0285-72-3153
営業時間|8:00〜19:00
定休日|月曜
http://www.mashiko-museum.jp/

一泊するならココ !
益古時計
北村さん:「関東近郊なら日帰りできてしまう益子ですが、ギャラリーも併設される益子時計さんは益子らしさも味わえるお宿。石造りの露天風呂にゆっくり浸かれば疲れが取れます」。
住所|栃木県芳賀郡益子町益子4283-5
Tel|0285-72-7201
宿泊|1泊素泊まり1名5700円〜(税・サ込)
営業状況は変更の可能性あり。各施設のウェブページ、SNSを確認してください。
http://mashiko-dokei.com/

text: Nao Ohmori photo: Norihito Suzuki map: Alto Dcraft
2020年7・8月号 特集「この夏、どこ行く?ニッポンの旅計画108」


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《民藝に会いに行く。》
1|山田遊さんと岐阜県 飛騨高山で自由な民藝に出合う。
2|山田遊さんと島根県 出雲〜松江でうつわをめぐる冒険
3|ビームス「フェニカ」ディレクターが日本の最高の手仕事が息づく栃木県 益子へ
4|鞍田崇さんと民具、民藝の”中間”を求める旅
5|工藝風向 高木崇雄さんと九州筑後川流域へ進化する民藝と出合う。
6|お菓子研究家 福田里香さんが推薦「かわ善い民藝」

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