FOOD

福田里香の民芸お菓子
「お菓子は食べる民藝です」。

2021.12.30
福田里香の民芸お菓子<br>「お菓子は食べる民藝です」。

『民芸お菓子』は雑誌連載から抜粋した、88の民芸銘菓を1冊にまとめた書籍です。北は北海道から南は沖縄まで、ジャンルは和菓子から洋菓子まで、各地のお菓子を収録しています。元になったのは、ディスカバージャパン誌で12年続く「民芸お菓子巡礼」です。

また、本書をきっかけにNHKの特別番組「「かわ善い民藝いとお菓子~古くて新しい暮らしのヒント~」Eテレに出演します。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。本誌で「民芸お菓子巡礼」を連載中。書籍や雑誌で活躍し、食品関連の商品開発も多く手掛ける。秋にレシピを担当した焼き菓子が発売予定。著書に『民芸お菓子』『新しいサラダ』『いちじく好きのためのレシピ』など

たとえばこちら。大津絵をモチーフにした滋賀県「鶴里堂」麩焼き煎餅の「大津絵おどり」。大津絵の魅力を再発見して世に知らしめたのは、宗教哲学者で思想家の柳宗悦でした。柳は大津絵を蒐集し、著書でも「美術というよりも、むしろ工芸」と論じ、激賞しています。

はじまりは民藝男子の甘党っぷりから。

食後にくずきりを取り寄せて楽しむ民藝同人たち。
柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」より「十二段家におけるくずきり会食」1955年頃 写真提供:河井寬次郎記念館

この連載は「民藝運動に関わった人々って実は甘党だった」と気がついたことからはじまりました。好物のお菓子が判っていたり、食事の後にデザートを食べている写真が残っていたりと、菓子好きの痕跡が残っています。

柳宗悦に至っては名著『手仕事の日本』の中で、その地方のおすすめ菓子を複数書き記しているほどの甘党です。

くずきり会食の写真にも登場する「くずきり」のためのうつわ
柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」より《螺鈿くずきり用器「鍵紋」》黒田辰秋 1932年 鍵善良房
※前期展示:2021年10月26日~12月19日(12月21日からの後期展示は「善紋」の展示となります)

現在開催中の柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」でもその甘党ぶりがわかる写真などが展示されているのでぜひ足を運んでみてください。

写真提供=河井寬次郎記念館

河井寬次郎記念館で寬次郎自身が彫り上げた脇息(肘掛け)。実は中をくり抜いてあり、物入れになっています。寬次郎は好物の「きり飴」などのお菓子を入れて晩年までそばに置いていたそう。

栃木県益子町にある「赤羽まんぢう本舗」の「赤羽まんぢう」。種類は、ユズ、きんとん、茶の3つです。中でも濱田庄司の大好物は、沖縄産の黒糖の皮で包まれた小豆あんの“茶まんぢう”だったと伝わっています。

菓子好きが高じて
いくつものパッケージを手がける

中心人物たちにお菓子好きが多いせいもあってか、版画や型染めなど平面作品が専門の棟方志功、芹沢銈介、柚木沙弥郎などは、多彩なお菓子のパッケージを手がけていて、見応えがあります。

写真は兵庫県神戸市「亀井堂本家」の「瓦せんべい」。棟方志功は1960年に包装紙の依頼をされた際、快諾したそうです。以来、棟方の版画はお店の顔として親しまれています。「亀井堂本家」の文字も歌うように楽し気です。

 

福田里香の民芸お菓子巡礼の記事一覧
 

実は建物や料理よりもお菓子の現存率って高いと思っています。

ひとつには、適当に応用が利く料理と違い、お菓子のレシピはg単位で割合が決まっている場合が多く、無理に変えると膨らまない、固まらない、日持ちがしないといった問題が生じやすいということもあるでしょう。

その上、お菓子は味とかたち、包装がセットなので意外と当時そのままに残っているのです。

今回『民芸お菓子』の本がご縁となり、モデルで女優の菊池亜希子さんが民藝ゆかりの地を旅する、NHKの特別番組「かわ善い民藝 いとお菓子 ~古くて新しい暮らしのヒント~」([Eテレ]2022年1月3日17:00~放送)に、ちょこっと出演いたします。

番組では菊池さんと一緒に「使ってこその美」を体験出来る街・京都を旅して来ました。民藝を見て、触って、使って、食べられる菓子舗やカフェをご案内します。

またスタジオでは濱田、棟方、芹沢、柚木など、民藝の巨匠たちがかかわった各地の銘菓をご紹介します。

お菓子はタイムマシンです。
食べることで生まれる前の時代に、憧れの巨匠たちの時代に一瞬で連れて行ってくれます。
きっと旅に出たくなる、お取り寄せしたくなる、お気に入りのお菓子が見つかります。
ぜひ、番組をご覧ください。

NHKの特別番組「かわ善い民藝 いとお菓子 ~古くて新しい暮らしのヒント~」
放送予定日|
2022年1月3日(月)Eテレ17:00~
2022年1月8日(土)BS4K 18:00~(再)
2022年1月16日(日)Eテレ14:30~(再)

柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」
会期|~2022年2月13日(日)
会場|東京国立近代美術館
住所|東京都千代田区北の丸公園3-1
時間|10:00~17:00(金・土曜は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜(1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(12月8日(火)〜1月1日(土・祝))、1月11日(火)
観覧料|一般1800円、大学生1200円、高校生700円、中学生以下無料
Tel|050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://mingei100.jp

 

text=Rika Fukuda

RECOMMEND

READ MORE