TRAVEL

工藝風向 高木崇雄さんと
九州筑後川流域へ進化する民藝と出合う。
民藝に会いに行く。vol.5

2020.8.31
工藝風向 高木崇雄さんと<br>九州筑後川流域へ進化する民藝と出合う。<br><small>民藝に会いに行く。vol.5</small>

旅先では、土地で育まれた民藝品をお土産にしたいもの。民藝に造詣の深い方々に、注目の民藝品と私的コースを伺った。今回は工藝風向 高木崇雄さんに、「民藝」の提唱者・柳宗悦に見出された小鹿田焼・小石原焼を中心に、歴史ある技法を受け継ぎ、進化する民藝を訪ねる。

高木崇雄(たかき・たかお)
工芸店主。2004年、福岡市内に「工藝風向」を開店。日本民藝協会常任理事、新潮社『青花の会』編集委員。著書に『わかりやすい民藝』(D&DEPARTMENT PROJECT)

 

九州北部を流れる筑後川は大分県に入ると三隅川と呼ばれ、その川沿いに広がる日田市の中心部から山間へ入ると、素朴な皿山の景色と出合う。静かな集落に「ギーゴトン、ゴトン」と響き渡るのは、谷水で水車を回し、その動力で陶土を砕く唐臼の音。小鹿田焼の里を代表する音の風景だ。「工藝風向」店主の高木祟雄さんは、「この唐臼の音を耳にすると、ああ、小鹿田に来たなという気持ちに誘われます」と語る。

皿山とは、焼物の産地を意味する言葉。九州では朝鮮半島の製陶技術を伝える焼物文化がいち早く花開き、有田焼や伊万里焼といった上流階級向けの上手物が高く評価されてきた。「そんな中、民衆が使う日常雑器にこそ愛すべき美しさがあると、昭和6年に柳宗悦によって見出されたのが小鹿田焼です。柳自身が『日田の皿山』という紀行文に書いていますが、久留米を訪れた際に唐や宋の時代の手法を想起させる美しい焼物があると驚き、わざわざ車を走らせて探しに行ったというエピソードがあります」。

小鹿田焼は山ひとつ越えた福岡県朝倉郡にある小石原焼の陶工が開窯した兄弟窯で、ともに300年以上の歴史をもつ。そのため、飛び鉋、指描き、流しかけなど共通した技法を見て取れるが、中でも昔ながらの仕事を守り、かつ、民藝運動がはじまった当初の志を保っているのが小石原焼の太田哲三窯だという。窯主の哲三さんは父・熊雄さんに師事した三男坊。熊雄さんは、民藝運動と出合い、家業の後継者は長男以外許されない時代に個人窯を開いた人物だ。革新的なことであり、その心を哲三さんも受け継ぐ。

「また、小鹿田焼の若い陶工からは、過去の仕事から刺激を受け、自分たちも新しい仕事を創出していこうという気概が伝わってきます。いまは小鹿田焼は飛び鉋と思われがちですが、坂本工窯の坂本創くんは、それより前から伝わる指描きなどの古い技法にむしろ新しさを見出し、意識的に取り入れて小鹿田焼のもつ可能性を広げる挑戦をしています。お隣の坂本浩二窯の坂本拓磨くんは、需要が減った大甕をあえて製作し、小鹿田焼のルーツである大物づくりの技法を未来へつないでいます」

受け継ぎ、掘り起こし、進化していく。九州では古さの中に新しさを感じる、日々をともに過ごせる民藝のうつわに会いに行きたい。

坂本創さんの「小鹿田焼の深皿」

岩井窯の山本教行氏に師事後、父である坂本工氏の窯で作陶する創さんの飛び鉋の深皿。伝統の技法の中に豊かな感性が光る。

工藝風向
価格|7700円
サイズ|φ290×H75㎜

太田哲三窯の「白流し水差」

ろくろをゆっくりと回転させ、釉薬を等間隔に流していく流しかけの技法。ぽってりとしたかたちと色合いが温もりを伝える。

太田哲三窯
価格|1万9800円
サイズ|W175(取っ手含む)×D95×H185㎜

太田潤さんの「口巻きモール小鉢」

再生ガラスを用いて手吹きする口巻きモール小鉢。料理の盛りつけ皿のほか、花器としても美しい佇まいを見せてくれる。

太田潤手吹きガラス工房
価格|1980円
サイズ|φ120×H40㎜

1泊2日のおすすめルートを紹介!

1日目
羽田空港
↓ 飛行機 110 min.
福岡空港
↓ 車 60 min.
すてーき茶寮和くら
↓ 車 30 min.
小鹿田焼 坂本工窯
↓徒歩 1 min.
小鹿田焼 坂本浩二窯
↓ 車 30 min.
小石原焼 太田哲三窯
↓ 徒歩 1 min.
太田潤手吹き
ガラス工房
↓ 車 90 min.
サリーガーデンの宿 湯治 柳屋

2日目
サリーガーデンの宿
湯治 柳屋
↓ 車 80 min.
リバーワイルド
↓ 車 15 min.
jingoro
↓ 車 60 min.
工藝風向
↓ 車 20 min.
福岡空港

すてーき茶寮 和くら
大正6年築の土蔵を改装したステーキ店。モダンな空間で和牛100%のハンバーグランチを民藝のうつわで楽しめる。
住所|大分県日田市隈2-4-13 0973-24-2728
営業時間|12:00〜14:30(L.O.)、17:00〜21:00(L.O.)、
定休日|土・日曜、祝日12:00〜21:00
https://www.wakura.com/

小鹿田焼 坂本工窯
坂本工さんと息子の創さんの親子窯。伝統の技法の中にも個性が光るうつわを制作。
住所|大分県日田市源栄町皿山(小鹿田焼の里内)
Tel|0973-29-2404
http://www.mingei-okumura.com/

小鹿田焼 坂本浩二窯
6代目当主の坂本浩二さんが息子・拓磨さんとともに営む窯元。直売も行っている。
住所|大分県日田市源栄町皿山(小鹿田焼の里内)
Tel|0973-29-2467

小石原焼 太田哲三窯
父・太田熊雄さんに師事後、昭和50年に開窯。息子・圭さんと親子で製作に励む。
住所|福岡県朝倉郡東峰村大字小石原941
Tel|0946-74-2159
https://tetsuzogama.com/

太田潤手吹きガラス工房
小石原焼の窯元の次男として誕生し、ガラスの道へ。沖縄で修業後、再生ガラスを使用した作品を製作。
住所|福岡県朝倉郡東峰村大字小石原899
Tel|0946-74-2780
https://www.hibinokurashi.com/jp/

サリーガーデンの宿 湯治 柳屋
湯治文化を受け継ぐモダンな宿。小鹿田焼のうつわで料理を提供する「オット・エ・セッテ オオイタ」を併設。
住所|大分県別府市大字鉄輪井田2組鉄輪銀座通り
Tel|0977-66-4414
https://beppu-yanagiya.jp/

リバーワイルド
自社養豚場で育てるブランド豚「耳納あかぶた」などを使った手作りハム&ソーセージのランチが人気。
住所|福岡県うきは市吉井町橘田565
Tel|0943-75-5150
営業時間|11:00〜17:00
定休日|月〜水曜
http://www.riverwild.jp/

jingoro
木工作家・山口和宏さんのギャラリーを兼ねた喫茶店。天然木の表情を生かしたうつわや椅子などの家具を販売。
住所|福岡県うきは市吉井町鷹取1557-3
Tel|0943-73-7773
営業時間11:00〜17:00
定休日|火〜木曜
http://jingoro.jp/

工藝風向
暮らしにささやかな喜びを与える品々とつくり手を紹介する工芸店。月ごとに企画展を開催。
住所|福岡県福岡市中央区赤坂2-6-27
Tle|092-716-5173
営業日|11:00〜19:30
定休日|月曜(祝日の場合は翌平日休)
https://foucault.tumblr.com/

text: Mimi Murtora photo: Norihito Suzuki
2020年7・8月号 特集「この夏、どこ行く?ニッポンの旅計画108」


≪前の記事 次の記事

《民藝に会いに行く。》
1|山田遊さんと岐阜県 飛騨高山で自由な民藝に出合う。
2|山田遊さんと島根県 出雲〜松江でうつわをめぐる冒険
3|ビームス「フェニカ」ディレクターが日本の最高の手仕事が息づく栃木県 益子へ
4|鞍田崇さんと民具、民藝の”中間”を求める旅
5|工藝風向 高木崇雄さんと九州筑後川流域へ進化する民藝と出合う。
6|お菓子研究家 福田里香さんが推薦「かわ善い民藝」

≫民藝に関する記事一覧はこちら

RECOMMEND

READ MORE

メールマガジン購読