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秋の北海道・阿寒湖紀行【後編】
雌阿寒岳と阿寒富士、ボッケ…
自然の中にいられる喜び

2021.12.4 PR
<small>秋の北海道・阿寒湖紀行【後編】</small><br>雌阿寒岳と阿寒富士、ボッケ…<br>自然の中にいられる喜び
オンネトーから雌阿寒岳を眺める

5日間にわたって秋の阿寒湖を満喫したライターの大石始さんと写真家の鈴木優香さんのレポート後編。今回はカメラ片手に阿寒湖を旅した鈴木さんによるレポートをお届けしよう。全国各地の山々を見つめてきた鈴木さんが語る秋の阿寒湖の魅力とは?

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自然の中にいられる喜び


湖畔の一部には整備された遊歩道が続いている


秋の陽光が湖畔に柔らかく差し込む

鈴木さんにとって今回の旅は8月に続いて2回目の阿寒湖滞在となる。紅葉の季節の阿寒湖について鈴木さんは「晴れた日は街全体が黄金色に輝いているように見えて、夏とはまた違う華やかな雰囲気でした」と話す。早起きをして散歩に出かけるなど、「自然の中にいられる喜びを噛み締めながら過ごすことができました」という。

「今回は登山を予定していた日の天候が悪かったので雌阿寒岳登山は諦めて、湖畔の森を散歩しました。森の中であれば多少の雨は気にならないし、滞在していたホテルから10分ほど歩いたところに雄阿寒岳を望める良い場所を見つけていたので、そこでじっくり写真を撮るなどして過ごしました。

夏には森が全体的に緑色で木々の見分けがついていなかったのですが、黄色やオレンジや赤など葉の色付き方が違っていて、植生の豊かさに改めて気付きました。エコミュージアムセンターで植物の知識を得てから歩くと、おもしろさが増すと思います」(鈴木さん)

鈴木さんが見つけた雄阿寒岳をひとり占めできる絶景スポット
湖畔には「ボッケ」と呼ばれる泥火山も。ボコッボコッという音が静かに響き渡る

「山岳収集家」を名乗る鈴木さんは、これまでに日本全国を旅し、山のある風景を写真に収めてきた。彼女は旅をする際、旅先で何を求めているのだろうか?

「まずは登りたい山を決めてから旅を組み立てることが多いので、やはり自然に触れる時間です。あとは、観光客向けにつくられたものだけでなく、地元の人が日常的にしていることを知りたいし体験してみたい。なので、現地のスーパーで購入したものを山に持って行ったり、麓にある無人の野菜直売所を利用することもよくあります。

食はその土地のことを知るにはいちばん気軽で、会話が生まれるきっかけにもなりますよね。阿寒湖でも、前回はトウキビをお裾分けしてもらってその甘さに感動し、今回はシケレベ(キハダの実)を味見させてもらって独特の味に悶えたり。美しい景色だけでなく、人との会話や食べ物のストーリーが加わることで、その旅の記憶がより濃くなるのだなと実感しました」(鈴木さん)

香辛料や風邪薬としても使われてきたシケレベ。ミカンのような香りと刺激が特徴

さらに奥深い阿寒湖の世界へ

今回の滞在では、前回に引き続きさまざまなアクティビティーを通して秋の阿寒湖の魅力を体感することができた。アイヌ語で「老いた・大きな沼」という意味を持つオンネトーへ片道20kmの道のりをE-バイクで往復し、アイヌ民族の儀式であるカムイノミを見学することもできた。そうした数々の体験について、鈴木さんはこう話す。

「前回は劇場で『ロストカムイ』や『アイヌ古式舞踊』を観覧しましたが、今回はまりも祭りの一環で、儀式としてのカムイノミや舞踊を観ることができました。観客に向けたものではない、古くから伝わる祈りの姿を目の当たりにして、今後も残していくべき大切なものなのだと心から思いました。オンネトーまでのサイクリングはなかなかハードでしたが、堂々と聳える雌阿寒岳と阿寒富士の景色を見ることができて満足です」(鈴木さん)

高台から望む秋の阿寒湖
オンネトーまでの道のりも色鮮やか

前2回のレポートでも触れたように、今回の滞在では阿寒湖アイヌコタン関係者との会話を通じ、より深く阿寒湖の世界へと踏み込むことになった。

「前田一歩園財団の理事長である新井田利光(にいだ としみつ)さんから伺った、阿寒湖周辺の森林保全の取り組みに関するお話が印象に残っています。一度は伐採により荒れてしまった山を、もともとの原生的な森を目指して復元し、現在も樹木の育成を促すための間伐や植林をしていると聞き、人の手の入っていない自然に出合うことの難しさを思うとともに、(初代園主である)前田正名(まえだ まさな)さんが『この山は、伐る山から見る山にすべきである』として復元活動を唱えなければいまの阿寒湖の姿はなかったのだろうと思うと、人知れず消えていった森の無念さを想像せずにはいられません」(鈴木さん)

湖畔の風景。右の幹には凍裂の跡も
秋の阿寒湖では思いもよらぬ場所にも鮮やかな色彩が広がる

次回はいよいよ真冬の阿寒湖を訪れることになる。2022年2月に予定している3回目の滞在への期待を鈴木さんはこのように語る。

「やはり、凍結した阿寒湖の上を歩くことがいちばんの楽しみです。湖畔にはエゾマツやトドマツなどの針葉樹が多いので、雪がたっぷり積もった森の景色も見られるのではないかなと。あとは、木々が凍裂(幹の内部の水分が凍って膨張し、幹が縦に裂けること)する音を聞いてみたいですね。

当初は観光地のひとつとして見ていた阿寒湖でしたが、今回いろいろな人にお話を聞いたことで、次回はもはや観光ではなく人を訪ねる旅になるのではないかと思っています」(鈴木さん)

  

text=Hajime Oishi photo=Yuka Suzuki

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