【漫画】第45代「聖武天皇」
|20人の天皇で読み解く日本史
126代目の天皇が誕生した2019年。今も昔も日本の歴史は天皇がつくってきたといっても過言ではありません。天皇に焦点を当ると、これまでとは違う日本の姿が見えてくるはず。今回は、大宝律令を制定し、「鎮護国家」を実践した聖武天皇を紹介します。
第45代 聖武天皇(しょうむてんのう)
生没年|701–756年
在位|724(24歳)–749(49歳)年
父| 文武(もんむ)天皇
母| 藤原宮子
妻| 安宿媛(あすかべひめ、後の光明皇后)
不安定な情勢から
何度も遷都を繰り返す
天武・持統天皇の孫にあたる42代文武天皇は、祖母の持統天皇や藤原氏に支えられながら政務を執り、天智天皇以来念願だった律令国家体制を完成させ、大宝律令を制定した。文武天皇の子である聖武天皇は、右大臣・藤原不比等の娘を皇后(光明皇后)とした。それまで皇族にしか許されていなかった皇后(天皇の正妃)を家から出すことで藤原氏が皇族並みに扱われることとなる。これは、平安時代まで続く藤原氏の台頭を考えると非常に大きな出来事である。
聖武天皇の時代には、不比等の子である藤原4兄弟がさらに勢力を伸ばしていった。不比等が没すると、天武天皇の孫である長屋王を右大臣に任命。長屋王には4人の子が誕生していたが、これが悲劇を呼ぶことになる。聖武と光明に子が生まれなかった場合、彼らが皇位継承の有力候補に浮上してくるからである。このことを懸念した藤原家は、長屋王に謀反の嫌疑をかける。追い込まれた長屋王は4人の男子とともに自害する(長屋王の変)。この事件の背景には、藤原家だけでなく聖武天皇の意思もあったとされている。
ところがその後天然痘が流行し、藤原4兄弟が次々と病没(長屋王のたたりともうわさされた)。盤石な政務体制が揺らいで不安が広まったことや、天然痘の流行もあり、平城京から恭仁京(京都府木津川)、紫香楽宮(滋賀県甲賀)、難波宮(大阪府大阪市)と、何度も遷都を繰り返した。
また、聖武天皇は光明皇后とともに仏教に深く帰依したことでも知られ、大仏造立や国分寺・国分尼寺の建立を命じ、仏教によって国を守る「鎮護国家」を実践。大仏造立には莫大な人手を必要としたため、また、仏教の布教で民から厚く信頼を得ていた行基に協力を頼み、全国から人を集めた。
聖徳太子以降大切にされた仏教だが、聖武天皇の治世は仏教が最も広まった時代でもある。こうして国を挙げた一大プロジェクトを行うも、建設ラッシュは財政難を生み、聖武の願いとはうらはらに、社会情勢は悪化の一途を辿る。
Point1
行基の呼びかけにより国民大集合
国家を挙げた一大プロジェクト・大仏造立
混乱する国を仏教の力で治めるため、大仏造立を決めた聖武天皇。大仏の大きさは、天平当時で15m以上、その大仏を収める大仏殿も合わせると相当な規模だったことがうかがえる。仕上げの段階で金鉱脈が発見されたことにより、金メッキ仕上げとなったそうで、工事人員は延べ260万人以上ともいわれる。ちなみに大仏は二度の戦火に遭い、現在の大仏は江戸時代に修復されたものである。左は大仏造立に際し尽力したものの、大仏の開眼を見ることなく亡くなった、僧・行基の肖像だ。
Point2
仏教を篤く信仰した光明皇后の施浴とは?
聖武天皇の妻、光明皇后にもまた仏への信仰心を表す逸話が伝わる。当時流行していた疫病を鎮めるため、奈良法華寺の施浴(寺の風呂)で1000人の体を洗い流すことを決めた光明皇后。1000人目に現れたのは全身から膿を出すような病人だったが、皇后はためらいなく背中を洗い、その膿まで吸い出したという。その瞬間、患者から黄金の光が放たれ仏に変化し、姿を消した。
〈天皇ゆかりの地〉
“奈良の大仏”で有名な
廬舎那仏坐像を本尊とする寺
「東大寺」
仏教に傾倒していた聖武天皇は、仏の力を借りて国を安定させようと考え、全国に国分寺・国分尼寺を建立させた。その国分寺の中心として都に建てられたのが、東大寺である。東大寺大仏殿の北に位置する「正倉院」には、聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめ、天平文化を反映する美術品を収蔵している。
東大寺
住所|奈良県奈良市雑司町406-1
Tel|0742-22-5511
www.todaiji.or.jp
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supervision: Hirofumi Yamamoto text: Akiko Yamamoto, Mimi Murota illustration: Minoru Tanibata
Discover Japan2019年6月号「天皇と元号から日本再入門」