TRADITION

密教をより深く知るためのキーワード
はじめての空海と密教

2020.11.8
密教をより深く知るためのキーワード<br><small>はじめての空海と密教</small>

密教を日本に広めた僧侶として知られる空海。密教ってなに?空海はどんなことをした人?そんな人にもよくわかる《はじめての空海と密教》。第4回は空海や密教の世界観をもっと知るためのキーワードを紹介します。

阿闍梨(あじゃり)

密教における最高の位。弘法大師空海は阿闍梨位である
伝統的な正しい習慣を知り、実行する人といった意味をもつサンスクリット語から来た言葉で、密教では伝法灌頂(阿闍梨が修行者の頭に水をそそぎ、真理を受け継いだことを示す、密教最高の儀式)を受けた、最高位の僧を意味する。

即身成仏(そくしんじょうぶつ)

大日如来と自分はこのままでひとつであるという思想
すべてのものは大日如来が姿を変えたものであるという考え。人も仏も本質的には同じであり、すべての人はその中に仏性を備えている。本来もっている仏性に目覚めれば、生きながらにして仏の境地に至ることができるというのが密教の教え。弘法大師空海は現実を肯定し、現世における肉体のままでも、それが仏であると考える。人は内に仏性を備えているが、凡夫(煩悩にとらわれている状態)はさまざまな迷いの雲に覆い隠されている状態である。その仏性に目覚めれば仏の境地に至る。

三密加持(さんみつかじ)

即身成仏に至り仏と一体になるための修法
我々は「言葉」、「身体」、「心」の3つの働きで成り立っており、これを「三業」という。同様に、仏は「口密」、「身密」、「意密」で「三密」という。この三業と三密を一体化するために、真言を唱え、印を結び、心に大日如来の境地を観念する修行のこと。三密加持が完璧に行われることになれば、仏と自己の一体化が完成する。空海は、「真言を唱え、手に印を結び、心が静寂安穏の状態になれば、仏の三密と凡夫の三業が即ち一体化する。それこそが即身成仏である」と述べている。

真言(しんごん)

真言宗の呼称の通り空海が最も重んじた修法
真言とは、大日如来が発した言葉で、宇宙の根本や真理そのものである大日如来の言葉であり、そのままで真実を表している。梵語(サンスクリット語)の原語のまま唱えることで、仏と共鳴し、一体化できると考えられている。

梵字(ぼんじ)

梵語(サンスクリット)を表記するための文字。如来、菩薩、天部の神々の尊名を象徴的に表す一字の梵字を「種子」という

古代インドで生まれた仏そのものを表す神聖な文字
大日如来の言葉である梵語を書き記す文字。大日如来から受け継いだもので、悟りの世界を象徴的に表しているともされる。文字ながらそのものが信仰の対象にもなる神秘性を秘める。

阿頼耶識(あらやしき)

通常は意識されることのない意識の最も深い部分
仏教では人間の中に8つの意識の段階があるとされる。それが眼識、耳識、鼻識、舌識、身識、意識、末那識、阿頼耶識で、最も深層部分に位置すると定義されるのが、阿頼耶識である。個人存在の根幹にあって通常は我々が意識することのない識であり、仏教の瞑想は、この阿頼耶識にたどり着くために行われるともいわれる。

阿字観(あじかん)

一般信者が行う悟りを実現させる修法
即身成仏に至る三密加持の修法は、一般の信徒が簡単にできるものではないため、誰でもできる観法(瞑想法)として阿字観が存在する。阿字とは、梵語50字のうちの最初の文字で、すべての文字の根源であることから、大日如来を表現している。その阿字に集中することで自分自身の中に宿る仏を感じ大日如来と一体となれるとされる。

法具(ほうぐ)

後七日御修法など重要な法会に用いられるもの。特にこれは、恵果が空海に授けた霊物として尊崇される
国宝 密教法具 中国 唐時代・9世紀 東寺蔵

密教に欠かせない聖なる道具の数々
煩悩を打ち砕く武器「金剛杵」や澄んだ音を奏でる「金剛鈴」、それらを置く「金剛盤」は、セットで使われる密教の代表的法具(上)。そのほか、意思疎通を思いのままにする「如意」、修法で使用する「柄香炉」、合図や説法に使う楽器「法螺」など武器から楽器まで、密教伝来当初から変わらず使い続けられる神秘の道具のこと。

護摩(ごま)

高野山奥之院燈籠堂の 護摩壇の様子 © 栗林成城

炎で煩悩を焼き浄める密教ならではの祈祷
供物を煩悩になぞらえ、燃え盛る炎の中に供物を投げ入れながら祈る修法。護摩の炎で悩みの原因や病魔を焼き尽くして願いをかなえる意味ももつ。護摩には2種類あり、内護摩とは瞑想の中で行う護摩のことで、実際の炎に供物を捧げることを外護摩という。ふたつは同時に進行されるものであり、行者自身の内面を清浄にする。

声明(しょうみょう)

声明が中心となる高野山・常楽会の様子 © 半沢克夫

お経にメロディをつけて唱える声楽
密教儀礼の中で用いられる声楽をいう。儀式の中心となる僧が、道場で仏と向き合う際に、空間を美しいメロディで満たし、教えを授かる歓喜を表現する。インドで誕生し、仏教伝来とともに中国、日本へと伝わった。音階や表現技法、楽譜も存在しており、高度に体系化される。それぞれに細かくルールが決められている。

灌頂(かんじょう)

密教においては仏の教えを授ける「儀式」
仏の教えを授ける儀式であり、内容、目的、形式によって、「結縁灌頂」、「受明灌頂」、「伝法灌頂」などの種類がある。結縁灌頂とは、一般信者や僧侶に仏縁を結ばせる儀式。受明灌頂とは、秘密の印・真言を授ける儀式である。伝法灌頂とは、秘密の法を伝えるための儀式である。

text: Akiko Yamamoto illustration: Fumino Hisanaga
参考文献:『イラストでわかる 密教 印のすべて』(藤巻一保著・PHP研究所)、『空海辞典』(金岡秀友編・東京堂出版)、『KOYASAN Insight Guide 高野山を知る一〇八のキーワード』(高野山インサイトガイド制作委員会・講談社)、『国宝・重要文化財大全 4 彫刻(下巻)』(文化庁監修・毎日新聞社)、『仏像図典』(佐和隆研編・吉川弘文館)、『マンダラの仏たち』(頼富本宏著・東京美術)

2019年5月号 特集「はじめての空海と曼荼羅」


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《はじめての空海と密教》
1|マルチクリエイター空海の9つの顔
2|現代を生きるヒントになる! 空海の出世人生
3|密教は当時最先端のライフスタイルだった?
4|密教をより深く知るためのキーワード

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