滋賀県大津市 鶴里堂の「大津絵おどり」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は大津絵十種と呼ばれる画題が描かれた、滋賀県大津市 鶴里堂の「大津絵おどり」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。民芸一家に生まれ、布芸展名義で、青森の民芸刺繍を新しく展開した『こぎん刺しの本』(文化出版局)がある
大津絵は滋賀県大津市・逢坂関の追分で発祥した民俗絵画です。
江戸初期から東海道を行き交う旅人たちの土産物や護符として人気でした。以前ご紹介した「大津画落雁」をつくる藤屋内匠も大津の和菓子店で、今回の鶴里堂もやはり大津のお店です。大津絵は、護符とは思えないくらいユーモラスで陽気な絵柄ですから、地元店がこぞってお菓子のモチーフに採用するのも納得ですね。
大津絵の魅力を再発見して世に知らしめたのは、柳宗悦でした。柳は大津絵を収集し、著書でも「美術というよりも、むしろ工芸」と論じ、激賞しています。
鶴里堂の「大津絵おどり」は、砂糖衣で着色して大津絵の色彩までも再現したかわいらしい麩焼き煎餅です。さまざまな図柄がある中で、鶴里堂は大津絵十種と呼ばれる画題を採用しています。鬼の寒念仏は子どもの夜泣きを止めて悪魔を払う、釣鐘弁慶は身体剛健にして大金を持つ……などとどれも縁起のいい柄で、麩焼き煎餅のパリッと軽い口当たりと相まり、ついもう1枚と手が止まりません。
鶴里堂
住所|滋賀県大津市京町1-2-18
Tel|077-523-2662
営業時間|9:00〜18:00
定休日|日曜
https://kakurido.com/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2017年7月号「この夏、島へ行きたい理由」
≫民衆が生み出した無名の絵画展示会『もうひとつの江戸絵画 大津絵』