徳山鮓/とくやまずし
滋賀県余呉町へ日本伝統の発酵食、究極の”鮒鮓”を訪ねて。【後編】
「徳山鮓」は、琵琶湖の北端の余呉湖の湖畔、豊臣秀吉らと柴田勝家らの合戦で有名な賤ヶ岳の麓に位置し、周囲は山々と田園風景に囲まれている。日本の原風景を愉しみながら、発酵料理、自然の恵みに満ちあふれた食事を味わえる和風オーベルジュ。今回は、発酵の世界へと導かれた料理人・徳山浩明さんが生み出す“究極の鮒鮓”の魅力を前後編でご紹介。
翌朝にも幸せが待っている
「徳山鮓の滞在は三度美味しい」
徳山鮓は、予約必須だが昼食のみの利用も可能である。しかし、かなうのならば宿泊することをおすすめしたい。理由はふたつある。
ひとつは、夕食後に待っている「晩酌セット」。取材時は、鹿肉のハムと燻製チーズ、紫霞の湖一合をご用意いただいた。極上の食事を堪能した後、客室に戻ってからもなお美酒美食を楽しむことができるのだ。そのまま眠りについてしまうのも、また贅沢。余呉湖を望む露天風呂には、翌朝6時から入浴できる。朝焼けを浴びて輝く湖面は絶景である。
もうひとつは、宿泊客だけが味わえる「朝食」。山と湖の恵みをふんだんに用いた会席が、朝からいただけるのだ。徳山鮓の宿泊者には、初日の夕食にはじまり、夕食後の晩酌、翌朝の朝食と、三度幸せが訪れるのである。
これからの季節、宿を訪れる楽しみは、アユ。そして鰻。また冬の間、夏に向けて仕込んだ料理の数々がある。しかし、それらはもちろん“自然まかせ”。
「自然に対して人間は無力ですから。山や湖の恵みがあって、いまの自分や徳山鮓がある。10年、20年、もっと先まで環境を守り、次世代につなげたい」と浩明さん。
「来年も再来年も恵みをいただくには、どうしたらいいか、常に考えています。乱獲しても仕方ない。使う分だけ採らないと、結局ロスになります。ここまではいいけど、ここからは採らない。いまたくさんあるように見えても、この山はあと5年寝かす必要があると判断したら、手をつけません。材料が足らなければ、違うものを考えればいい。それも、なくなったときに考えるのでなく、なくなる前にレシピを考えておく。そして、すぐには出さず、しまっておく。“続けていく”ことが大切なのです」。
いま山に入るときには、お節料理の材料も採っているという浩明さん。お節は一年間の集大成。心待ちにする人々のためにも、妥協は一切しない。
「いまは子どもたちも食材集めや調理に携わってくれています。いま何ができるか、未来に向けてどうすべきか。考えて、考えて、料理と向き合っていたいです」
宿の各所から余呉湖が望める
信楽焼の展望露天風呂は、宿泊客のみ6:00〜23:00で利用可能。ひとっ風呂浴びてからの食事もおすすめ。
余呉湖を一望できるウッドデッキもある。夜に星空を眺めるのもよし、穏やかな日の朝は“鏡湖”が望める。
食事処は全3室。
テーブル席|2~5名
テーブル席|8~10名
日本間|2~6名
昼食
時間|12:00〜14:30
料金|1万6500円~
夕食
時間|18:00〜21:00
料金|2万2000円~
客室は全6室
1名での宿泊も相談可能。今回利用したのは、インディゴブルーの色彩を基調とした和洋折衷の客室「藍の部屋」。落ち着いた雰囲気が魅力だ。
徳山鮓
住所|滋賀県長浜市余呉町川並1408
Tel|0749-86-4045
料金|昼食/1万6500円〜、夕食2万2000円〜 宿泊/1泊2食付3万8500円~(食事利用の場合も予約制)
※予約はお電話のみ。
※宿泊は2名から宿泊可能。
※1グループ最大10名まで。
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAほか
チェックイン|16:00
チェックアウト|10:00
夕食・朝食|和食
アクセス|電車/JR北陸本線「余呉駅」よりタクシーで約5分 車/北陸自動車道木之本ICから約15分
施設|展望テラス、露天風呂
インターネット|Wi-Fi有
www.zb.ztv.ne.jp/tokuyamazushi
text: Discover Japan photo: Sadaho Naito
Discover Japan 2018年7月号「とっておきの秘密の夏宿」