《MIHO MUSEUM》
現代の桃源郷に広がる建築美と
貴重な古代美術品の魅力に浸る
滋賀県甲賀市信楽町の自然豊かな山間に建つ「MIHO MUSEUM(ミホミュージアム)」は、日本美術から世界の古代美術にわたる約3000件のコレクションを所蔵する美術館。建築設計は、ルーヴル美術館のガラスのピラミッドで知られる、世界的建築家I.M.ペイ(イオミンペイ)氏が「桃源郷」をイメージに、信楽の自然と融合させた空間デザインは一見の価値あり。そんな国際的な収蔵品を誇る国内屈指の「MIHO MUSEUM」の魅力とは・・・・・・。
美を求める心
MIHO MUSEUMは1997年11月、滋賀県信楽の自然豊かな山間に開館。 創立者の小山美秀子氏(こやま・みほこ)が40年以上に渡り、折にふれ集めてきた茶道具、神道・仏教美術、書画、陶磁器、漆工など多彩な日本美術からはじまった。
やがて「美術を通して、世の中を美しく、平和に、楽しいものに」との想いからはじまったコレクションは、多彩な日本美術とともに世界の古代美術へと広がっていった。
世界的建築家が手がけた
美の“桃源郷”
建物は、パリ・ルーヴル美術館ガラスのピラミッドなどを手がけたI.M.ペイ氏が設計。「光こそ鍵」をテーマに、自然に包まれた遊歩道からトンネルと橋を経て美術館へと至る構想は、中国の詩人、陶淵明の「桃花源記」に描かれた理想郷である桃源郷がモチーフになっている。
しだれ桜の並木道に導かれ、トンネルと吊り橋を越えて美術館棟へと続く、銀色の壁面に覆われたトンネルは、春になれば桜が、秋になれば紅葉が映り込み、四季折々で異なった表情が楽しめる。壁には消音加工が施されていて、静まり返ったトンネルはまさに異世界のよう。
トンネルを進むと、谷に架かる橋の向こう側に、入母屋型の屋根をしたエントランスが姿を表す。
桃花源記
一人の漁師が芳香漂う桃花林に導かれるように彷徨い込んだ洞窟の向こうに、理想の楽園が広がっていたという物語。
MIHO MUSEUMで最も印象的なのはエントランスホール。丸窓のついた大きなドアが音もなく左右に開くと、ガラスの屋根から降り注ぐ光と優しいベージュ色のライムストーンの壁面に包み込まれ、彼方まで穏やかな山々が連なる大空間が広がる。さらに内側の扉が開くと、ガラスの屋根は歩調に合わせてゆっくりと上昇し、やがて木目調の細いルーバーが響き合いを始め、視界の広がりと共に複雑に角度を変えながら、まるで絵巻物のように一足ごとに変化を遂げる。あたりの空間は降り注ぐ外光の中で、微妙な律動感に満たされる。
日本から古代オリエントに渡る
3000件のコレクションたち
南アジアの世界「ガンダーラ仏立像」
ガンダーラの石仏の部屋は、ひんやりとした趣。なかには全体を包む薄闇の静謐、一番奥に佇むガンダーラ仏のバックの紅色が、天井から差し込む自然光とともに、ある種のエネルギーを噴出しているかのようだ。
実は展示室、この仏立像を展示するために設計されたんだとか。見た目は全体的に如来の特徴をとらえてはいるが、衣や顔面などにギリシア・ローマ様式の彫刻の特徴がみられる、貴重な美術品。
MIHO MUSEUMでは、そのほかに約3000件を所蔵。重要文化財は6件も含まれる。そのうち常時、約250~300点を公開し、春季、夏季、秋季に異なる切り口で特別展が開催されている。コレクションは大きく茶道具や仏教美術など“日本の古美術”と、エジプト、西アジア、南アジア、中国などの“世界の古代美術”の2つのジャンルで、稀有な展示品と建築美を見学できる。
美術鑑賞を楽しんだあとには、レセプション棟のレストランと美術館棟の喫茶へ。
レストラン「ピーチバレイ」で扱う食材は、ほぼ農薬や人為的肥料を使用せず、秀明自然農法で育てた食材、季節ごとの食材を使って、素材を活かした料理を楽しめる。
カフェ「パインビュウ」は片側がガラス張りで日当たりもよく、開放感がある。景色を眺めながら自家製のケーキ、和菓子、ドリンクなどを楽しめる。
四季の彩りあふれる現代の桃源郷で、さまざまな美に触れながら「MIHO MUSEUM」の空間を楽しんでみてはいかが。
MIHO MUSEUM
住所|滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
Tel|0748-82-3411
開館時間|10:00〜16:00(最終入館時間 15:00)
休館日|月曜
※祝日の場合は開館、翌平日休館
※春・夏・秋の季節開館
入館料|大人 1300円(1100円)、高大生 1000円(800円)、中学生以下無料
※( )内は団体20名以上料金
https://www.miho.jp/