日本固有の魚・シシャモを求めて鵡川(むかわ)へ〈後編〉
北海道の魚を知る旅
世界中で北海道太平洋沿岸の一部でしか漁獲できない稀少な魚・シシャモ。実は鵜川のアイヌ民族においてシシャモは神聖なものとして扱われていた。アイヌとシシャモの深い関係とは?
アイヌに伝わるシシャモの祭り
「シシャモは、アイヌ語で『ススハム』といい『柳の葉』を意味します。その昔、飢餓に苦しんでいた鵡川のアイヌの人々を救うため、天の神が柳の葉に命を与え鵡川に流したところ、魚となってアイヌ民族を救った、といわれています」
鵡川アイヌ文化伝承保存会の佐渡日出男会長が、この地域に伝わるシシャモの伝説を教えてくれた。「冬がはじまる前に捕れるシシャモは、甘露煮やシシャモ汁などの料理にするほか、干物にして保存し、冬の間に食べる大切な食料でした」と佐渡さん。
一般的にアイヌ語で「カムイチェプ(神の魚)」といえば鮭のことをいうが、鵡川地域ではシシャモを指すというくらいに、神聖なものだったことがうかがえる。このため古来、鵡川のアイヌ民族は、シシャモ漁の前に「シシャモカムイノミ」と呼ばれる伝統儀式(祭り)を行い、神々に感謝すると同時にシシャモの豊漁を祈願してきた。
保存会では、集落ごとに不定期で続けてきたこの祭りを1992年から毎年10月に鵡川河口で開催している。(2020年、2021年は中止)古式にのっとって、ペオイ(囲炉裏)を囲んで最初に「アペフチカムイ(火の神)」に祈りを捧げ、水の神や祭壇の神などへ感謝と豊漁を祈る。かつて祭りの後は、シシャモの遡上を妨げたり汚したりしてはならないと、人々は河口に近づかないなど厳格な神事だったという。
「シシャモカムイノミ」は、いまもむかわ町の人々にとってシシャモが特別な魚であることを象徴する祭りなのだ。
産地だから食べられる「シシャモ寿司」
シシャモの漁期限定で、シシャモ寿司(2500円)を提供する「大豊寿司」。透き通るように輝くシシャモの身はあっさりとした旨みがあり、シシャモの子をたっぷりのせた軍艦巻きはプチプチとした食感。
シシャモをめぐる旅案内
太平洋沿岸でしか捕れないシシャモを訪ねる旅。ぜひ立ち寄りたいスポットを紹介します!
生のシシャモ寿司が名物
「大豊寿司」
2代目大将の鈴木佑介さんが腕を振るう寿司店。シシャモ漁期には「シシャモ天ぷら(2本900円)」「シシャモ酒(900円)」など期間限定のシシャモ料理を提供。
大豊寿司
住所|北海道勇払郡むかわ町文京町1-8
Tel|0145-42-5222
営業時間|10:00〜14:00
定休日|月曜
生干し本シシャモはココで
「カネダイ大野商店」
1923年創業、むかわ町で最も老舗のシシャモ加工販売店で、「本物であること」にこだわった商品展開で人気。店頭の「シシャモのすだれ干し」が目印。
カネダイ大野商店
住所|北海道勇払郡むかわ町美幸2-42
Tel|0145-42-2468
営業時間|10:00〜17:00、10〜12月9:00〜
定休日|日曜、10〜12月なし
text: Tomoko Honma photo: Yoshihito Ozawa
2022年2月号「美味しい魚の基本」