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「臼杵石仏」多くの謎を秘める国宝。
大分・臼杵の手仕事と祈りの里を訪ねて【後編】

2021.3.16
「臼杵石仏」多くの謎を秘める国宝。<br>大分・臼杵の手仕事と祈りの里を訪ねて【後編】

古くより仏教を受け入れ、戦国〜江戸時代にかけては商業都市として賑わった大分・臼杵。現代にも受け継がれるその歴史を、国宝の臼杵石仏や精進料理店などの旅スポットで見つけました。

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未来永劫
仏が見守る深田の里へ

ホキ石仏第一群の5体の像。中央は釈迦如来坐像

城下町から車で15分ほど内陸に入った深田の里には、自然の崖に仏像を彫った磨崖仏が多数存在する。岩に刻まれた仏は1000年以上もの間、里の民を見守ってきた。本格的な調査研究が行われた明治の末以降、その美しさと規模の大きさから日本最高のものと認められ、現在、61体の石仏はすべて国宝に指定されている。

臼杵石仏は、いつ誰がつくったのかは謎のままで、伝説もいくつもある。そのひとつ、真名野長者伝説は、黄金鉱石を求めて日本に渡来した百済人の子、真名野長者(炭焼古五郎)とその妻の物語だ。二人は娘の死を深く嘆く中、中国の僧侶の影響で仏教を信仰するように。僧侶は夫妻の願いを聞き、中国の建築僧や彫刻僧を呼び寄せて永久に残る仏=磨崖仏を刻む。石仏群の近くには、伝説に由来する井戸や夫妻の像が残されている。石仏観光センター2代目の宇佐美昇さん(臼杵焼の宇佐美裕之さんの父)は、著書『石仏は何を語るか』の中でこう記す。「釈迦の教えは遠い過去から未来にかけて精進せよと説く。人間は、童子、青年、壮年、老年時代へと休まず進んでいる。石仏群は人間の一生を理解させる絵文字であり、古園→山王山→ホキ(第一群)→ホキ(第二群)へ参拝するのがよい」。現在の一般的な順路とは逆回りとなるが、人の一生という時間を思いながら石仏に向き合えば、より多くの気づきがあるかもしれない。

古園石仏にある大日如来像。修復前は落ちた仏頭が下の台座に安置されており、その姿も多くの人に愛されていた

和尚さんが丹精を込める
精進料理をいただきに

臼杵の城下町、二王座の高台に、「星月庵」という精進料理の店がある。ここでは、見星禅寺の17世住職である安藤恵薫さんの手料理をいただける。肉や魚を使っていないというかたちだけの精進料理ではない。胡麻豆腐は安藤さん自ら1時間ゴマをすり、生麩は強力粉を1時間半こねてグルテンを取り出すところからはじまる。その生麩を使った数々の料理、大根餅に季節の野菜の煮物など、驚くほど手をかけられた妥協のない料理が並ぶのだ。800年来の伝統の味に創意工夫が加えられ、精進料理の本質に触れられるとあって、これまで名だたる料理人が足を運んできた。「精進料理とは、調理する者が精進して、そこからできる料理を仏さまにお供えし、そのご供養としていただくものであり、調理する者の手間と意を食べていただく料理です」と安藤さん。飽食が叫ばれる時代にあって、心身が洗われる思いがする。

禅宗の修行道場で長年修行をし、後進を指導するまでになった安藤さん。世界各地の仏跡をめぐっての法要では、シルクロードを70日間歩いて旅したことも。これらすべての経験が料理に生かされている

昔から豊後仏国といわれ、臼杵石仏をはじめ各宗派の寺院が建立され、いち早く仏教文化が花開いた祈りの地。いまもこの地を訪れる者をやさしく包んでくれる。

山王山石仏。中央は釈迦如来坐像

臼杵石仏
住所|大分県臼杵市大字深田804-1
Tel|0972-65-3300(臼杵石仏事務所 8:30〜17:00)
拝観時間|6:00〜19:00、10〜3月〜18:00
休園日|なし

季節を盛り込んだ松花堂に、名物の胡麻豆腐、大根餅、留椀などが付く「星月膳」3880円。自家製の生麩を創意工夫した料理の数々に感動する。できれば予約を

禅味料理 星月庵
住所|大分県臼杵市二王座切通132-2
Tel|0972-63-7149
営業時間|11:30〜16:00
定休日|月〜水曜(前日までの完全予約制)

まだある!臼杵の旅スポット

二王座歴史の道

戦争で空襲を受けていないために城下町の面影を色濃く残す。付近には一般公開されている武家屋敷もあり、散策が楽しい。

suzunari coffee

自家焙煎の豆を一杯ずつペーパードリップ。農園の個性が出るシングルオリジンのほか、「雪に覆われた深い森」などのイメージを表現したブレンドも。

住所|大分県臼杵市野田持田120
Tel|0972-86-9005
営業時間|11:00〜19:00
定休日|水曜

御宿料亭 春光園

臼杵藩主の家老・稲川家の屋敷跡で営む料亭旅館。臼杵フグのコース料理は圧巻。築200年の武家屋敷と、400年前に小堀遠州が手掛けた庭を堪能できる。

住所|大分県臼杵市祇園西区3組
Tel|0972-63-3128
料金|1泊2食付2万8000円〜(税・サ込)

ほんまもん農産物
うすき未来の食卓

完熟堆肥で土づくりを行った畑で、化学肥料や化学合成農薬なしで育てられたほんまもん農産物。代表の藤嶋祐美さんは、全国からの若者と畑に向き合っている。

住所|大分県臼杵市野津町
Mail|honmamon.yasai@gmail.com

全部めぐって臼杵を楽しみ尽くそう!

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text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui
2021年4月号「テーマでめぐるニッポン」


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