水でめぐる世界遺産《白神山地》
後編|名水と北前船がもたらした青森の文化


東北の雄大な自然が広がる世界自然遺産・白神山地。東アジア最大級のブナ林を代表とする「生命の楽園」と周辺エリアは、美しい“水”をキーワードにめぐる旅で、新たな魅力を発見できる。後編では、白神山地周辺をめぐり、川や海の幸や北前船文化がもたらした銘菓など、水がもたらした青森の多彩な文化をご紹介。
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白神山地の水がもたらす食文化とは?

青森県西部では、白神山地の水を生かした食文化が楽しめる。特筆すべきは淡水魚のイトウだ。深浦町と鰺ヶ沢町では、本州で絶滅したとされるイトウの養殖に成功。一年を通して水量と水温が適度に保たれている白神山地の沢水を使用するからこそ養殖が可能となった。
“川のトロ”と称される極上の身質は、鰺ヶ沢町内や、独自にイトウを養殖しているコテージ「アオーネ白神十二湖」といった限られた場所でしか味わえない。さらに、白神山地の水は日本海に注ぎ、豊饒な海域を形成。そこで育まれる上質な魚介は「地魚屋食堂 たきわ」など地域に根ざした名店で堪能できる。

さらに、白神山地の水は日本海に注ぎ、豊饒な海域を形成。そこで育まれる上質な魚介は「地魚屋食堂 たきわ」など地域に根ざした名店で堪能できる。

またこの地は、江戸時代の商船「北前船」の寄港地で各地域の文化が流入。中でも「鯨餅」は、鰺ヶ沢名物として「村上屋」が受け継いでいる。
“水”をキーワードに白神山地をめぐる旅には、新しい発見が待っている。
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水がもたらす青森文化に浸かる
白神山地周辺のおすすめスポット
《CAFÉ 水とコーヒー》

白神山地の湧水で淹れるコーヒー
白神山地のブナの葉土にろ過された湧水をボトリングした「白神山地の水」を販売する「白神山美水舘」が運営するカフェ。ブラジルやコロンビアなど厳選された豆を使用した7カ国のスペシャルティコーヒーは、白神山地の超軟水で淹れることで口当たりはまろやかに。本格的なエスプレッソメニューを気軽に楽しめるのもうれしい。

住所|青森県西津軽郡鰺ヶ沢町本町246-4 海の駅わんど内
Tel|0173-72-7761
営業時間|9:00~17:00(L.O.16:30)
定休日|なし
Instagram|@mizutocoffee
《アオーネ白神十二湖》

幻の魚「イトウ」を味わえる宿
十二湖至近の宿泊施設。敷地内の「レストランアカショウビン」では、イトウのなめらかで上品な旨みが際立った握り(上写真。宿泊者限定のディナーコースの一品)やサラダなど、多彩なイトウ料理が堪能できる。
住所|青森県西津軽郡深浦町大字松神字下浜松14
Tel|0173-77-3311
料金|1泊2食付1万6500円~(税・サ込)
https://shirakami-jyuniko.jp
《地魚屋食堂 たきわ》

日本海でもまれた平目を堪能
海産物の宝庫として名高い鰺ヶ沢で仕入れのプロとして長年営んできた出荷問屋が母体の食堂。炭火で焼く豪快なマグロのカマ焼きや平目のユッケ丼、贅沢な海鮮丼、鮮度抜群の刺身などが味わえる。
住所|青森県西津軽郡鰺ヶ沢町本町199
Tel|0173-72-7531
営業時間|11:00~14:00(L.O.13:30) ※無くなり次第終了
定休日|不定休(12~2月は休業)
https://takiwa-ajigasawa.com ※鯵ヶ沢ヒラメのヅケ丼は価格の変動あり
《春光山 円覚寺》

船乗りが航海の安全を祈った
807年、征夷大将軍・坂上田村麻呂が建立したと伝わる県内屈指の古刹。北前船が嵐から避難する「風待ち港」として栄えた深浦で、船乗りたちの信仰を集め、嵐の中から生還した船乗りのちょんまげが多数奉納されている。
住所|青森県西津軽郡深浦町深浦浜町275
Tel|0173-74-2029
拝観時間|8:00~17:00
定休日|なし
拝観料|寺宝館/500円
www.engakuji.jp
《村上屋》

北前船でやってきた銘菓「鯨餅」
明治創業の和菓子店。江戸時代の書物に京菓子として製法が紹介され、北前船交易により鰺ヶ沢に伝わった「鯨餅」を受け継いでいる。うるち米、もち米の粉、小豆、砂糖のみでつくるシンプルで上品な味わいともちもちの食感が人気。
住所|青森県西津軽郡鰺ヶ沢町本町72
Tel|0173-72-3021
営業時間|8:30頃~17:30頃(夏期は〜18:00頃)
定休日|不定休

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Amazing AOMORI
text: Ryosuke Fujitani photo: Kazuya Hayashi
2025年4月号「ローカルの最前線へ。」