TRADITION

宮藤官九郎×歌舞伎
歌舞伎座を“ぞんび”が埋め尽くす?!
シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』

2021.8.16
<small>宮藤官九郎×歌舞伎 </small><br>歌舞伎座を“ぞんび”が埋め尽くす?!<br><small>シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』</small>
©松竹株式会社

歌舞伎を観てみたいけれど話が難しそう……そんな不安を抱える歌舞伎初心者にもおすすめしたい、宮藤官九郎が作り出した衝撃の新作歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』がシネマ歌舞伎となって上映決定。なんとこの作品、歌舞伎史上初めて“ぞんび”が登場! 笑いあり涙あり、ギャグあり、ダンスもあり? 従来の歌舞伎のイメージにとらわれない本作に、あなたもきっと驚き心を掴まれるはず。中村勘三郎、坂東三津五郎、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助ほか、豪華出演者の貴重な競演も見どころ。

2021年8月27日(金)から9月2日(木)まで全国の映画館で上映予定。まずはあらすじを紹介します!

江戸に突如現れた“ぞんび”!
カギとなるのは、新島名物の「くさや」?!

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新島で「くさや」商いの女房だったお葉は、夫の死後ひとり江戸に出て、くさや売りをして暮らしている。だが、江戸の人々はくさやの臭いを嫌い、商売は捗らない。そんな折、新島で同業だった半助が現れ、お葉が持つくさや汁を貸してほしいと頼み込む。

ちょうどその頃、江戸の町では「らくだ衆」と呼ばれる奇妙な連中“ぞんび”が出現していた。死んでも生き続ける不思議な一団。“ぞんび”に噛まれた人間は、生ける屍となって人々に襲い掛かっていく。

混乱の中くさや汁を持って現れた半助は、“ぞんび”から身を護るためには、くさや汁を体にかけるのがいいと言う。さらに、すでに死んでいる“ぞんび”に危険な仕事や人が嫌がる仕事をさせればいいと言い出し、ぞんびの派遣稼業でひと稼ぎしようと目論むのだった。

首尾よく奉行所のお墨付きをもらった半助は、想いを寄せるお葉の助けもあり、給金がいらない“ぞんび”を安く派遣する人材派遣事業で大成功! お葉との距離も次第に近づいていった。

しかし、仕事を奪われた失業者は反感を募らせ、またぞんびたちからも不当な扱いに対する不満が出始めていた。

そんな中、半助のもとに死んだはずのお葉の亭主・新吉が現れた。実は“ぞんび”の誕生には、半助と新吉の間に起きたある出来事が関わっていたのだった……。

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ぞんびメイク、ダンス、パンクミュージック…
型破りの新作歌舞伎

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本作は、テレビや舞台、映画、バンド活動など幅広い活躍で知られ、最近では日本の伝統芸能である能を題材にしたテレビドラマ『俺の家の話』でも話題を集めた宮藤官九郎による新作歌舞伎。

中村勘三郎、坂東三津五郎、松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助ほか、豪華出演者が勢揃いし、普段はなかなか演じない役柄に挑んでいる。中でも歌舞伎界きってのゾンビ映画マニアである片岡亀蔵はぞんび役(与兵衛)で出演。研究しつくされたぞんびの動きは必見だ。

「歌舞伎座の花道をゾンビで埋め尽くしたら面白いと思って……」という発想から始まった本作。ゾンビ映画に引けを取らない特殊メイクを施されたぞんびたちが大勢登場し、劇中オリジナルの唄とともに踊りだすなど、驚きの演出が満載。

落語をもとにした歌舞伎演目「らくだ」では、死者を操って踊らせる場面があるが、本作のぞんびたちは誰の力も借りずに自分たちで踊りだす。普段は日本舞踊の稽古に励む歌舞伎役者が挑戦した貴重なダンスシーンにも注目だ。

歌舞伎役者によるぞんびダンス動画

ダンスシーンで流れるキャッチーなオリジナルソングは、宮藤官九郎の映像作品でも音楽を担当しているミュージシャン向井秀徳が本作に書き下ろしたもの。同じく宮藤官九郎の映像や舞台作品の常連であるスタイリストの伊賀大介は、本作で衣裳を担当。今年話題となったテレビドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』でも衣裳を担当し、映画やドラマ、アニメでもスタイリストとして活躍している。

また、漫画家のしりあがり寿が道具幕デザインで参加し、作品の世界観を創り上げる。代表作『真夜中の弥次さん喜多さん』は、本作にも出演している中村七之助が、長瀬智也と共に出演し映画化されている。

宮藤官九郎の真骨頂!
ドタバタ喜劇だけでは終わらない衝撃の展開

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本作では、ぞんびを「派遣」することで生きている人間が職を失い不満を募らせ、ぞんびを斬りたいと願う様子が描かれている。一方ぞんびたちにも、報われない労働環境について不満の声が高まっていく。これは上演時に社会的問題となっていた「派遣切り」などの雇用問題に着想を得た展開だ。一見突飛な内容に見える本作だが、社会で話題となっている問題を敏感に取り入れ、風刺し、観客に議論を呼びかける、江戸時代から続く歌舞伎の伝統ともいえる手法が取られている。

また、前半部分はギャグ満載のコメディ展開が続くが、後半では中村勘三郎演じる新吉の登場をきっかけに雰囲気がガラリ。死んだはずの新吉が、何故ここにいるのか……? 半助を取り巻く世界の前提を覆す、波乱の展開となる。

ぞんびが登場するシネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』は、夏にぴったり。宮藤官九郎が手掛けた物語のゆく末をぜひ、映画館で見届けよう。

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月イチ歌舞伎 2021 上映作品
『大江戸りびんぐでっど』

上映期間|2021年8月27日(金)~9月2日(木)
上映館|東劇ほか全国の映画館にて(詳細はこちら
料金|一般2200円、学生・小人1500円上映時間|103分
出演|松本 幸四郎、中村 七之助、中村 勘九郎、坂東 彌十郎、市村 萬次郎、片岡 市蔵、片岡 亀蔵、井之上 隆志、市川 猿弥、中村 獅童、中村 芝翫、中村 扇雀、中村 福助、坂東 三津五郎、中村 勘三郎 ほか

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、上映期間中に上映館が休館となる可能性があります。鑑賞前は映画館の上映状況を確認ください。来場時はマスク着用等、劇場の感染予防対策にご協力ください

text=Discover Japan

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