TRADITIONS

ダンサーSAMさん 能楽師に弟子入り!?

2019.12.21
<b>ダンサーSAMさん 能楽師に弟子入り!?</b><br class=“none” />
宝生能楽堂で開催された「芝宝会 佐野登師同門会」で初舞台を踏んだSAMさん。今日の日のために、青錆色の紋付袴を一式揃えた。足さばきの所作一つひとつに苦労したという。「まだまだこれから修練です」

TRFのメンバーとして、日本のダンス界を牽引してきたSAMさん。いま挑戦しているのが日本の伝統芸能・能だ。なぜ能なのか?2019年9月末に行われた初舞台を追った。

SAMさん
TRFをはじめ多数のアーティストの振付、コンサートプロデュースを行う。次世代ダンサー育成、リサーチのため、ダンサーオーディションも手掛けるほか、2016年2月には年齢を問わずダンスに触れる機会の拡大を目指し「一般社団法人ダレデモダンス」を設立。自らレッスンやワークショップを行うなど幅広く活動

入門半年、『鞍馬天狗』で初舞台

天狗と牛若丸の間に結ばれる、師弟の絆を描く『鞍馬天狗』
源義経の幼少期を題材にした物語。花見に来ていた鞍馬寺の僧と子どもらの前に、怪しい山伏が現れる。一行は退散するも一人取り残された子がおり、それが牛若丸。平家の世に源氏として寂しい思いをする牛若丸に、山伏は天狗である身分を明かし、兵法を教えるというあらすじ。今回の舞囃子は秘儀を授け立ち去る天狗に、牛若丸が別れを惜しむ場面

能の動きはとても理にかなっている
原型は奈良時代にまでさかのぼる能は、1300年もの歴史の上に継承されている伝統芸能。落語や歌舞伎など日本の芸能の多くは、実は能に影響を受けており、格の高さはまさに別格。そんな古典中の古典に、15歳でダンスに目覚めて以来ストリート、ジャズ、バレエとあらゆるダンスを吸収してきたTRFのSAMさんが挑戦している。

SAMさんが能に興味をもったきっかけは、自らのルーツにある。「同じ身体表現者として日本の芸能には関心がありました。あるとき遠縁に宝生流の能楽師の方がいると知ってからは、自分でやるなら能だと直感していました」。漠然とした興味のまま、幾年かを過ごしたSAMさん。小誌が後援した2018年の「未来につながる伝統─能公演─」で登壇したことが能との出合いになった。そのときのメイン曲『道成寺』の所作を、トークショーでまねしたのが能入門へと続く第一歩だった。

舞台を終え安堵した表情のSAMさん(右)と、宝生流能楽師・シテ方の佐野登さん。「稽古半年で舞囃子は少し早いのですが、SAMさんの上達具合を見て勧めました」

その後半年ほど経った頃、SAMさんは催しの主催者であった宝生流能楽師・シテ方の佐野登さんに正式に入門を果たす。弟子入りの背景には、能とコラボレーションして新しい舞台をつくってみたいという想いがあった。しかしまずは自らが能の世界に入ってみないと、何ができるかわからないと一念発起、行動した。能の所作でダンスと最も違うことは、重心の動かし方だという。SAMさんによると、ダンスでは右足から左足へ体重を動かすとき、上下の垂直方向の運動になる。それが能の場合は、すっと水平方向に移動するようなイメージなのだそう。それはとても「理にかなった動き」とSAMさんは言う。

だが能とダンスの間に共通点がないかというと、決してそうではない。師匠の佐野さんはこう話す。「身体を動かし慣れていて、いま重心はどこか、手がどう動いているか、SAMさんは的確に把握されている。共通言語があると感じました」。

初舞台の翌日、SAMさんと佐野さんが向かったのは都内某所のスタジオ。全身の3Dスキャンを撮影することで、データ化された二人のアバターにさまざまな動きがインプットできる。どんなかたちでのコラボになるのか? 期待が高まる。

文=編集部 写真=工藤裕之

2019年12月号特集「人生を変えるモノ選び。」