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タイムスリップ気分を味わえる
レトロな銭湯4選
|続々と進化を遂げる東京銭湯④

2024.4.4
タイムスリップ気分を味わえる<br>レトロな銭湯4選<br><small>|続々と進化を遂げる東京銭湯④</small>

現代の日本において、銭湯はインフラとしての役割から、地域に根ざした交流拠点へと存在意義を変えつつある。
 
今回は東京の銭湯の撮影をライフワークとする写真家・今田耕太郎さんに、宮造建築でタイムスリップ気分を味わえるクラシック銭湯4つを挙げてもらった。

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01|東京・上野《燕湯》

地下水を46℃のあつ湯で提供。富士山の溶岩でつくられた岩山を模した、迫力あるデザインも人気

朝湯が楽しい有形文化財
 
1950年に建てられた建築は、東京の銭湯ではじめて国の登録有形文化財に登録されたもの。「かつて秋葉原にあった青果市場で働く人々や、上野駅の利用者が早朝に利用していた歴史があり、朝6時から営業する銭湯として知られています」(今田さん)。現在も3代目女将・橋爪雅栄さんと長男が夜明け前から仕込みを続け、江戸っ子好みのあつ湯を提供している。

ビルの谷間に佇む入母屋造の木造2階建て。細工の施された、脱衣場の折上格天井も見どころだ

住所|東京都台東区上野3-14-5
Tel|03-3831-7305
料金|大人520円、小学生200円、未就学児100円
営業時間|6:00〜20:00
定休日|月・火曜
 
<銭湯Data>
風呂の種類|あつ湯、薬湯 
備品|貸しバスタオル60円、貸しフェイスタオル30円、ドライヤー3分20円
※シャンプー、コンディショナー、ボディソープは備え付け

02|東京・南雪谷《明神湯》

歴史ある銭湯の代表格「明神湯」。創建時の趣を保つ宮造建築は、まるで戦後にタイムスリップしたよう。ペンキ絵は銭湯絵師・丸山清人さんの作品

ロケ地として銭湯文化を未来に伝える
 
威風堂々とした宮造建築を、1957年の創業時からほぼそのまま残す。「若い頃から銭湯に携わってきたご主人の大島昇さんは、手先が器用で、職人さんと一緒に仕事をしているうちに技術を会得し、自ら修繕もされてきたそうです」(今田さん)。天井の高い折上格天井、富士山のペンキ絵など趣深い空間は、映画やドラマなどの撮影にもよく使われている。

風呂の湯は薪火で沸かして提供。男湯の脱衣場には坪庭を眺められる縁側、女湯の脱衣場にはレトロなお釜型ドライヤーも

住所|東京都大田区南雪谷5-14-7
Tel|03-3729-2526 
料金|大人520円、中学生420円、小学生200円、未就学児100円 
営業時間|16:00〜22:00   
定休日|5・15・25日(日曜、祝日の場合は翌日休)
※月1回連休あり
 
<銭湯Data>
風呂の種類|中温湯、薬湯
備品|手ぶらセット(フェイスタオル、シャンプー、リンス、ボディソープ)140円、お釜ドライヤー3分20円など

寺社のような風格が漂う建築。土塀も風情が豊かだ。唐破風屋根にある、2羽の鶴を彫刻した「懸魚(げぎょ)」も美しい

03|東京・東日暮里《帝国湯》

鯉が泳ぐ、手入れの行き届いた庭園も帝国湯の魅力。湯上がりに縁台に腰掛けて庭園を眺めながら涼むことができる。この写真は今田さんがツツジの季節に合わせて撮影したもの

復活を遂げた名建築と庭園
 
創業は1916年。営業を続けてきたが、2022年に前女将・甚五君枝さんが亡くなり休業。存続が危ぶまれていたが、甥の與司直さんが6代目を継承し、前番頭の長女・石田綾子さんも新番頭となり、2023年4月に復活を遂げた。「1952年竣工の宮造建築が特徴で、東京銭湯の横綱的存在。折上格天井や庭園など、細部まで工夫が施されています」(今田さん)

故・早川利光の富士山のペンキ絵や錦鯉のタイルが彩る浴室。地下天然水を薪窯で沸かし、こまめに温度管理を行う

住所|東京都荒川区東日暮里3-22-3
Tel|03-3891-4637
料金|大人520円、小学生200円
営業時間|15:00〜22:00
定休日|月曜
 
<銭湯Data>
風呂の種類|あつ湯、中温湯、薬湯
備品|ドライヤー3分20円
※貸しフェイスタオル無料。シャンプー、ボディソープは備え付け

番台から眺めた脱衣場。見上げるほど高い折上格天井は城郭のよう。歳月を経た柱や床の風格も、創建時を想起させる

04|東京・石神井台《たつの湯》

ピンク色が特徴の建築に高貴さが漂う。「私は“練馬の将軍”と呼んでいます」と今田さん。建物脇には薪のストックが

薪で沸かす鉄骨×宮造銭湯
 
1964年に創業。初代主人・龍五郎にちなんで名づけられた「たつの湯」。宮造建築は一見木造に見えるが、躯体に鉄骨が使われた先見性ある建物。3代目・本橋正季さんは、地下天然水を手間暇かけて薪で沸かすことにこだわる。「災害時にも、蓄えた薪でお風呂を提供できるように、との想いから。脱衣場で販売される自家栽培野菜も新鮮で人気です」(今田さん)

銭湯絵師・中島盛夫さんによるペンキ絵も見どころ。大胆な構図の富士山は迫力満点。現在は男湯に巨大な赤富士、女湯に紅葉景色の華厳の滝が描かれている

住所|東京都練馬区石神井台6-19-26
Tel|03-3922-0753 
料金|大人500円、未就学児200円
営業時間|14:00〜22:00(土・日曜は13:00〜)
定休日|月曜
 
<銭湯Data>
風呂の種類|あつ湯(土・日曜は薬湯)
備品|お風呂セット(フェイスタオル、石鹸、シャンプー、カミソリ、歯ブラシ)300円、シャンプー40円、ボディソープ40円、ドライヤー3分30円(男性無料)など

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text: Miyo Yoshinaga photo: Kotaro Imada
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