【漫画】第96代「後醍醐天皇」
|20人の天皇で読み解く日本史
126代目の天皇が誕生した2019年。今も昔も日本の歴史は天皇がつくってきたといっても過言ではありません。天皇に焦点を当ると、これまでとは違う日本の姿が見えてくるはず。今回は、「建武新政」で独裁体制を築き上げた、後醍醐天皇を紹介します。
第96代 後醍醐天皇(ごだいごてんのう)
生没年|1288–1339年
在位|1318(31歳)–1339(52歳)年
父|後宇多(ごうだ)天皇
母|五辻忠子(いつつじちゅうし)
妻|西園寺嬉子(さいおんじきし)
流罪、敗戦にもあきらめず
不屈の精神で南朝を設立
後醍醐天皇は、幕府が提案する両統迭立の皇位継承をよしとせず、幕府に対して、自分の皇統を続ける意思を強く示した天皇だ。
後醍醐天皇はそれまで続いた院政をやめ、自らが主導権を握る親政を行った。各方面の政治の一新を進めていくも、自分の皇統を続けるためには両統迭立を推進している幕府の存在が邪魔になる。そのため、後醍醐は倒幕を志すようになった。その倒幕計画が幕府の知るところとなり、後醍醐は捕らえられ隠岐へ流罪となった。このため、持明院統の光厳天皇(後伏見の子)が即位し、後伏見上皇が再び院政を執る。
その後、吉野で後醍醐の子・護良親王が挙兵すると、諸国の反幕府運動が急速に展開。幕府の支配機構が麻痺していく中、後醍醐は隠岐を脱出し、朝敵追討の詔を諸国に発する。流罪となった後醍醐天皇の詔ながらその力は絶大で、幕府の要人だった足利尊氏は、後醍醐天皇に応じて幕府に反旗を翻した。後醍醐は幕府の京都の拠点だった六波羅探題の軍を壊滅。光厳天皇を廃位させ、後伏見上皇の院政も終わりを告げた。
鎌倉幕府の滅亡後、年号を「建武」と改めた後醍醐は、自ら政治を主導。摂政関白を置かずに後醍醐天皇がすべての採決を担っていた。世襲制度を見直し、天皇が直接、人事権を掌握。身分にかかわらず有能な人材を登用した。御所の建て替えのための増税、儀式の復活などが一存で決められただけでなく、朝令暮改を繰り返したことから、次第に混乱が広がる。
また、土地はすべて天皇のものであるという建前を利用し、勝手に武士が所有することを認めなかった。しかし、武士の領地は鎌倉幕府時代に築かれたものだったことから、激しい反発を招く。恩賞が不公平だったこともあり、いわゆる建武新政は混乱を極め、わずか3年で幕を閉じた。
尊氏が弟の足利直義とともに、鎌倉を攻撃した北条時行を破って鎌倉を奪回すると、尊氏らは後醍醐側の新田義貞の誅伐を掲げ、義貞軍を破って京都に入った。このとき後醍醐は比叡山に逃れていた。その後、尊氏は光厳とともに入京し、光厳の弟である光明天皇を即位させる。ここに、大覚寺統の後醍醐天皇と、持明院統の光明天皇とが並立した。さらに後醍醐は三種の神器を持って吉野へ移り南朝を設立したことから、半世紀にわたる「南北朝時代」が幕を開けた。
Point1
菩薩や神のように描かれる
後醍醐天皇の天皇像
後醍醐の肖像画は、唐の皇帝になぞらえて、天子であることが強調されている。また、右手に五鈷杵、左手に五鈷鈴と呼ばれる密教用具を持っていることから、密教の菩薩の姿を強調。後醍醐のカリスマ性が表現されている。
Point2
南朝の拠点となった笠置寺
倒幕計画が幕府に漏れると、後醍醐は笠置山に逃げ込む。ところが幕府軍に攻め込まれ、1カ月で陥落。幕府軍に捕らえられ、隠岐へ流罪となった。
Point3
三種の神器を持って延暦寺に逃れる
足利軍が再入京すると、後醍醐は三種の神器を持って比叡山延暦寺に逃れた。和睦に応じて三種の神器を引き渡すも、それはなんと偽物。その後、吉野で南朝を開く。
〈天皇ゆかりの地〉
島流しからのリベンジ決戦地「船上山」
隠岐に流された後醍醐天皇は島からの脱出に成功。天皇を逃すという失態を犯した隠岐守護の佐々木清高らを、船上山で撃退し、後醍醐天皇の復権が達成。
船上山
住所|鳥取県東伯郡琴浦町山川
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supervision: Hirofumi Yamamoto text: Akiko Yamamoto, Mimi Murota illustration: Minoru Tanibata
Discover Japan2019年6月号「天皇と元号から日本再入門」