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第106代「正親町天皇」
20人の天皇で読み解く日本史

2021.2.21
第106代「正親町天皇」<br><small>20人の天皇で読み解く日本史</small>

126代目の天皇が誕生した2019年。今も昔も日本の歴史は天皇がつくってきたといっても過言ではありません。天皇に焦点を当ると、これまでとは違う日本の姿が見えてくるはず。今回は、織田信長、豊臣秀吉らとともに朝廷の権威回復に努めた、正親町天皇を紹介します。

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第106代 正親町天皇(おおぎまちてんのう)
生没年|1517–1593年
在位|1557(41歳)–1586(70歳)年
父|後奈良(ごなら)天皇
母|万里小路英子(までのこうじえいこ)
妻|万里小路房子(までのこうじふさこ)

朝廷の権威を回復させ
約120年ぶりに上皇となる

1467年に発生した応仁の乱後、室町幕府は衰退。時代は、戦国の乱世へ突入する。

この時代の天皇は乱の余波に苦しみ、朝議が行えない、即位の礼の資金が集められないなど、朝廷の財政難が続く。また、譲位ができないまま崩御する天皇が続くのもこの時代の天皇の特徴。上皇になるためには院の御所も必要だったり、改元や儀式も必要。費用がかさむことから天皇のままで崩御せざるをえなかった。貧窮する朝廷への献金元となったのが、各地で台頭していた戦国大名たちだ。父・後奈良天皇の崩御を受けて即位した正親町天皇は、毛利元就らの献金を受けて即位の礼を行う。

そんな折、新興の武士勢力として台頭したのが織田信長だ。正親町天皇は、室町幕府を討幕し、長篠の戦いで勝利した織田信長の台頭を受け、右近衛大将に任じる。これは武家が任じられる最高位の武官であった。これを信長は受けて安土城を築き、実質的に織田政権が成立した。

信長は、朝廷を盛り立てるためのさまざまな施策を行う。信長は15代将軍・足利義昭に対して「皇室をおろそかに扱ってはならない」と釘を刺したという。献金や献上品だけでなく、朝廷祭儀の復興に費用を献じ、皇室や公家の領地回復を進めていった。これによって荒れていた御所は修繕され、伊勢神宮の式年遷宮が再開されるなど、朝廷の悲願だった朝廷儀式の再興もかなう。

1581年には、正親町の要望に従い、「馬揃え」と呼ばれる軍事パレードを挙行。信長一味の豪華なパレードを見た正親町とその子の誠仁親王は大喜びだったという。

一方、正親町は信長の敵対勢力に対して講和の勅命を出すなど、天下統一に協力。ところが、明智光秀の謀反により信長は1582年、本能寺の変で死去。信長の死を最も嘆いたのは正親町だったと思われる。

その後、羽柴秀吉が光秀を討つと、秀吉は急速に力を伸ばし、信長の後継者の地位を確立。正親町はいち早く秀吉に目をつけ、信長と同様の官を授ける。秀吉も朝廷の厚意に感謝の意を表し、院御所の造営を申し出る。正親町天皇の子の誠仁親王は35歳の若さで死去したが、孫の後陽成天皇を即位させ、正親町天皇は譲位を実現する。天皇が譲位するのは、102代・後花園天皇以来のことで、実に約120年ぶりのことだった。

天下人と呼ばれる武将たちは、敵対勢力を攻める大義名分を天皇から賜り、天皇は天下人から援助を受けて権威を回復。戦国時代は、両者が持ちつ持たれつの新たな関係を築いた時代となった。

Point1
実質的な朝廷の最高官職を
信長に与える

足利義昭を追放し、室町幕府を滅亡に追いやった信長。これを機に信長に官職が与えられるが、その後、太政大臣か関白、将軍に推薦するという朝廷の意向を伝えるも信長は即答を避けた。そのまま本能寺の変を迎えることとなり、信長の回答を得られることはなかった。

Point2
正親町天皇によって
千利休の居士号が与えられた

侘び茶の完成者として知られる千利休は茶頭として信長に、信長の没後は秀吉の茶頭として仕えた。秀吉は御所において正親町天皇に茶を献じたが、利休も茶頭として出仕。商人の身分では天皇の謁見が許されないため、「利休居士号」を授けられ、天下一の宗匠となる。茶の湯は戦国時代から江戸時代にかけて流行。地方各藩には「茶道方」と呼ばれる職掌もできた。

Point3
天皇の許可なくしては持ち出せない「蘭奢待」

『蘭奢待』正倉院宝物

「蘭奢待」とは正倉院に収蔵される香木。正親町天皇は、この天下一の香木を切り取る勅許を信長に求められ、断れなかったという。当時の二人の関係がうかがえる。

〈天皇ゆかりの地〉
天皇を招く「御幸の間」が用意されていた?
「安土城」

織田信長が1576年に命じ、約3年かけて完成した安土城。現在は石垣が残るのみだが、本丸御殿には天皇を招き入れる「御幸の間」があったとされる。天皇が住む内裏清涼殿に似たつくりで、天皇行幸のための御殿だったという説も。

安土城
住所|滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6371
Tel|0748-46-6594
www.azuchi-nobunaga.com

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supervision: Hirofumi Yamamoto text: Akiko Yamamoto, Mimi Murota illustration: Minoru Tanibata
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