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「オーベルジュ・ エスポワール」信州ジビエで野生生物のエネルギーを堪能

2019.11.3
「オーベルジュ・ エスポワール」信州ジビエで野生生物のエネルギーを堪能

フランスでは一般家庭でも親しまれているジビエ。野山を駆け回る鳥獣を食材にしたその料理は、自然の中で生きてきた動物たちのエネルギーが凝縮されています。長野県蓼科にある「エスポワール」では、国産のジビエが存分に堪能できます。

オーベルジュ・エスポワール
藤木徳彦さん
長野県の蓼科にある本格的なオーベルジュ、エスポワールのシェフ。「日本ジビエ振興協議会」の代表理事を務め、ジビエによる地域活性化や鳥獣被害のもととなる野生鳥獣を食肉活用するための活動も行なっている

ジビエとは何か?
「冬を乗り越えるためにたくわえた生命を感謝していただくのがジビエなんです」

夏でも湿気が少なく、日本有数の避暑地として知られる長野県の蓼科高原。ここにある「オーベルジュ・エスポワール」では、日本ではまだ珍しい本格的なジビエ料理を食すことができる。

そもそもジビエ料理とはなんなのか。エスポワールのシェフ、藤木さんはその魅力をこう語る。

「ジビエはフランス語で狩猟鳥獣料理のことを言いますが、日本では古くからマタギ料理として親しまれています。特に秋に獲れる鳥獣は、冬を越すために餌を身体に溜め込んでいるため脂がのっていて美味しいんですよ。家畜とは味の濃さや香りが全然違います」

食材としても魅力的なジビエだが、価値はそれだけにあらず。

「現在、長野県だけでも野生の鹿は10万頭を超え、多くの農家が鳥獣被害に悩まされています。年間2万頭ほど駆除していますが、そのうち食材として使われているのはわずか7%に過ぎません。ほかは破棄されているのが実情です。それならもっと食べて生かそうと。冬を乗り越えるためにたくわえた生命を、感謝していただこうと思ったんです」

そのためエスポワールでは、長野県で獲れる新鮮な鳥獣を食材として活用している。本場フランス同様、ジビエ料理の基本となる地産地消にこだわり、信州蓼科の自然をまるごと料理として提供しているのだ。

〈 アナグマ 〉
口溶けよく芳醇で
香り高い脂がのった肉

アナグマ独自の食感と味をダイレクトに生かした『アナグマの骨付き背肉のグリル フルーツ添え』。アナグマの肉をグリルして適度に脂を落とし、シンプルに塩胡椒で味つけ。ポルト酒や赤ワインビネガーを加えた酸味のあるソースで加えると驚くほどクドさがなくなり、肉と脂の旨みを堪能できる。

〈 鹿 〉
独自のコクと歯ごたえが楽しめる
鹿肉のポワレ

鹿のロースをたっぷりのバターを使いしっとりと焼き上げた『鹿肉ポワレ 蓼科産温野菜添え』。鹿の骨と筋を赤ワインで煮込みジンをプラスしたソースで味つけした鹿肉のポワレは、サッパリした味わいが特徴で独自のコクと歯ごたえが楽しめる。土の匂いすら感じさせる蓼科の旬な山野菜と相性抜群。

〈 山鳩 〉
フォアグラ、トリュフと一緒にパイ生地で

生の状態で捌いた山鳩を使用した『山鳩と里芋、フォアグラのパイ包み焼き』。山鳩の胸肉ともも肉を鳩ガラと赤ワインで煮出したソースに1週間漬け込み、サトイモとトリュフのみじん切り、フォアグラと一緒にパイ生地で包みオーブンで焼き上げている。上に飾られたもも肉も食べられる。

「野山で駆け回る野生動物には、本来臭みなどまったくないんです」

取材時に偶然エスポワールに届いた狩猟したばかりの雄鹿。なかなか獲れない70㎏クラスの大物で、これだけで40人分ほどの食材となるとか

長野県の野生鳥獣を有効活用して“信州ジビエ”として提案している藤木さん。地元で獲れた新鮮な食材を目の前にして驚いたことがあるという。

「フランスから輸入されるジビエと違い、新鮮な食材は全然臭くないんですよね。野生動物は、本来臭みなどまったくないんです」

さらに猟師とのコミュケーションも大切にし、ときには一緒に野山に入ることも。

「猟師さんと親しく接するようになって驚いたことは、彼らの野生動物の調理法です。フランス料理の概念を覆す調理法ばかりだけど、それがどれも抜群に美味しいんですよ。おかげで料理人としての幅もずっと広がりました」

そもそも野生鳥獣は、通常の調理のセオリーが通用しないことが多い。そんなひと筋縄でいかないところも夢中になれるそう。

「野生鳥獣は生活する環境や餌で個体差があるんです。さらに言えば獲った人の鉄砲の腕前や捌き方でも味が変わります。だから自分の知識や経験をフル活用して食材と向き合わないといけないんです。毎回真剣勝負ですよ。そんな食材はほかにありませんからね。料理人としても楽しいです」

調理する側さえも魅了してしまうジビエ料理。それらは地元で獲れる新鮮な自然食材という部分も大きい。信州ならではの野生鳥獣の美味、ぜひ一度ご堪能あれ。

「子猪の自家製生ハム、これが美味しいんです」

子猪はヨーロッパではマルカッサンという名前で親しまれ、成獣よりも人気が高い。肉質が淡白で猪独特の臭みがないのが特徴。背肉はメイン料理に使うが、もも肉は薫製にして生ハムと使用している。エスポワールでは野草のサラダと一緒に、前菜で出される。

「ジビエとワインは最高の組み合わせです」

信州ジビエに合うお酒は信州産のワインに限る。こちらは地元を代表する最高級ワイン。左から「井筒ワイン 2009スープリームメルロ」、「林農園 1996桔梗ヶ原メルロ」、「城戸ワイナリー 2010プライベートリザートメルロ」、「リュードヴァン 2010ソーヴィニヨンブラン」。

チーズやキノコ… 長野は山の贈り物の宝庫!

信州の食材はジビエだけではない。エスポワールでは地元の牧場でつくられた各種チーズや自家製ジャムも用意。さらに八ヶ岳は、毎年新種が発見されるほどのキノコの産地で、特に本格的なジビエのシーズンが到来する秋のシメジの味は格別。

信州ジビエを堪能したいなら
「オーベルジュ・ エスポワール」

地元食材を使ったフレンチを味わうことができる本格的なオーベルジュ。夏は避暑地として、冬は新鮮なジビエ料理が堪能できるため、年間を通して蓼科の自然を満喫することができる。

オーベルジュ・エスポワール
住所|長野県茅野市
北山蓼科中央高原
Tel|0266-67-4250
営業時間|12:00〜13:30(L.O.)、17:45〜19:00(L.O.)
定休日|木曜(8月は無休)
http://www.auberge-espoir.com/

text:Masatsugu Kuwabara photo:Kuniharu Wakabayashi
2012年12月号 特集「冬の味覚でおもてなし」


≫秋冬が旬の天然とらふぐ鍋も!名旅館と一流ホテルのお取り寄せ

≫身が引き締まってしなやかな 猪鹿庵の「シカ ロース肉」

≫新潟のジビエ料理「Restaurant UOZEN」

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