柚木沙弥郎の箱絵がかわいいビスケット
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は民芸と深いかかわりのある松本の名店・開運堂の「ウェストンビスケット」を紹介する。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍する。8年間にわたり続けている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
民藝の街として名高い長野県松本市。そして、松本を代表する名店のひとつが「開運堂」です。この連載でも以前にロールケーキと干菓子をご紹介しました。実は開運堂には、まだまだ民藝にちなんだ焼き菓子があります。
若い頃から民藝運動に深くかかわってきた染色家・柚木沙弥郎の母校は旧制松本高等学校。この学校の記念館が所蔵する作品を箱絵に起用した「ウェストンビスケット」がそれです。頂上を目指す楽しげな二人組の絵柄とパステルで描いたような色彩は、柚木の作品の中でも珍しいタッチといえます。
ビスケットの生地には、日本の中部山岳を世界に紹介した英国人宣教師で、登山家でもあるウォルター・ウェストンの偉業をたたえて、氏の胸像を刻印してあります。ウェストンの故郷イギリスの習慣であるアフタヌーンティーに欠かせないのがビスケット。
登山家に人気の上高地をテーマに、2017年の新製品として創作されたミルクビスケットはスパイスが利いて、サクサクの食感が魅力的。夏山登山のお供に最適です。
開運堂
住所|長野県松本市中央2-2-15
Tel|0263-32-0506
営業時間|9:00〜18:00
定休日|なし
https://www.kaiundo.co.jp/
text : Ricca Fukuda photo : Wakana Baba
2019年6月号 特集「天皇と元号から日本再入門」