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《軽井沢千住博美術館》
アート×自然×建築 そのすべてが調和した至高の空間

2022.7.5
《軽井沢千住博美術館》<br><small>アート×自然×建築 そのすべてが調和した至高の空間</small>

長野・軽井沢にある、世界的で活躍する日本画家・千住博氏の初期作品から近作までを展示する「軽井沢千住博美術館」。建築家・西沢立衛氏が設計を手掛けた建物は、明るく開放的な総ガラス張り。木々や花が美しいガーデンもあり、館内では千住氏の作品を紹介する展覧会やテーマに沿った特別展を開催。ベーカリーカフェやショップもあり、アートと自然をゆっくりと楽しむことができる。日本を代表するふたりが共作した、アートと自然と建築による独創的な空間の魅力に迫る。

自然の光あふれる、
明るい美術館

軽井沢千住博美術館は、東京、京都、ニューヨークを拠点として精力的に制作活動を続け、ヴェネツィアビエンナーレ絵画部門で東洋人として初めて名誉賞を受賞した、日本画家・千住博氏の個人美術館。

ここには、1978~2011年にかけて制作された、千住の代表作「ウォーターフォール」などを含む、約100点を所蔵。展示されているのはそのうちの50点ほど。年に1、2度、展示替えがあるが、代表作の「ウォーターフォール」、絵本「星のふる夜に」の原画は、常に展示されている。

日本画家
千住博(せんじゅ・ひろし)
1958年、東京都生まれのニューヨーク在住。崇高で巨大なスケールの滝や崖の作品で世界的に知られている。抽象表現主義に根ざしたミニマルな表現と日本古来の絵画技法を組み合わせた作品を制作している。2007年から2013年まで京都造形芸術大学学長を務め、現在は京都芸術大学教授、康耀堂美術館館長、ヴァン・クリーフ&アーペル芸術学校(レコール)マスターズコミッティー委員、公益財団法人徳川ミュージアム相談役などを務める。https://www.hiroshisenju.com/

自然地形を活かした一室空間

設計を担当したのは、妹島和世氏とのユニットSANAAにて建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞した西沢立衛氏。

西沢氏は、千住氏から「明るく開放的で,今までなかったような美術館に」というリクエストをもとに、明るい空間の中で、訪れた人が千住氏の作品世界を体験でき、また同時に、集まってくつろいだり、自分の時間を過ごせたりできる空間を創り上げた。

エントランスまでは、美術館を取り囲む「カラーリーフガーデン」があり、四季折々のカラーリーフの樹々や草花が楽しめる。入り口の扉を開けると、広々とした空間が広がり、正面には千住氏の代表作「ウォーターフォール」が出迎えてくれる。

建物は、敷地の地形をそのまま活かし、ゆるやかに傾斜していく、ランドスケープのような空間。館内は壁面自体がガラスで、なかにいても軽井沢の風景や緑、自然光が室内に射し込み、軽井沢の自然と千住氏の芸術が調和されている。ガラスには紫外線をカットする加工が施されている。レースの遮熱カーテンは透け感があり、外界を見渡すことができるとともに、展示作品を紫外線から保護する機能をもっている。

また館内からも、大小4箇所の総ガラス張りの吹抜け空間に植栽されている、カラーリーフの樹々や草花を作品のように鑑賞することができる。

館内で唯一、閉鎖された幻想的な空間「The Fall Room」には、現在、23mを超える大作「龍神Ⅰ・Ⅱ」が展示されている。作品は光とブラックライトで交互に照らされ、メインフロアとは全く異なる雰囲気を演出。

建築家
西沢立衛(にしざわ・りゅうえ)
1966年東京都生まれ。1990年横浜国立大学大学院修士課程修了。1990年妹島和世建築設計事務所入所。1995年妹島和世と共にSANAA設立。1997年西沢立衛建築設計事務所設立。2001年横浜国立大学大学院助教授、2010年より同大学院Y-GSA教授。2004年ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展金獅子賞、2010年プリツカー賞受賞。主な作品に、国際情報科学芸術アカデミーマルチメディア工房*、ウィークエンドハウス、ディオール表参道*、金沢21世紀美術館*、森山邸、House A、トレド美術館ガラスパビリオン*、海の駅なおしま*、スタッドシアター*、ニューミュージアム*、十和田市現代美術館、ROLEXラーニングセンター*、豊島美術館等。
(*はSANAAとして妹島和世との共同設計)

美術館にはカフェとミュージアムショップが隣接している。建物は安井秀夫アトリエが設計。美術館の丸みとは対照的に直線で奇抜なデザインが印象的。ミュージアムショップでは千住博氏のオリジナルグッズなどを販売。軽井沢の老舗ベーカリー「ブランジェ浅野屋」では、シンプルで上質な材料を使ったこだわりのパンを味わえる。

西沢立衛設計による緑豊かな空間と、千住博氏の芸術が融合した「軽井沢千住博美術館」で、至福の時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

軽井沢千住博美術館
住所|長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
Tel|0267-46-6565
開館時間|9:30~17:00
休館日|火曜日(祝日・GW・7~9月は無休)、冬期(12月26日~2月末日)
入館料|一般1500円、学生1000円、中学生以下・障がい者 無料※団体料金あり
http://www.senju-museum.jp/

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館

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