沖縄の老舗泡盛蔵《瑞穂酒造》が醸す
島の個性を生かしたラム
|沖縄名産・黒糖を世界の「KOKUTO」に!③
約400年もの歴史がある沖縄の黒糖づくり。その価値を再構築してものづくりをする、仕掛け人たちの熱い取り組みで、黒糖はいま「KOKUTO」として世界に大きく羽ばたこうとしている。
いま、沖縄の基幹作物であるサトウキビを余すところなく用いた新しいラムが、東京や世界のバー業界から注目を浴びている。今回は、仲里彬さんが渾身の力を込めるラム造りの現場にうかがい、次世代につながる持続可能なラム造りについて探る。
1848年創業の泡盛酒造所である那覇市首里の「瑞穂酒造」は、2018年頃からジンの開発に着手。2021年にイギリスで開催された酒の品質を競う「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)」では、焼酎(泡盛)、ビターズ、ジンの3つの部門で8アイテムが受賞する快挙を遂げ、これまで無名だった泡盛という沖縄独自の酒が、世界のステージに登場した。
泡盛をベースに画期的な酒を生み出してきた商品開発室長の仲里 彬さん。若者の泡盛離れや時流もあり、出荷量が減少傾向にある業界をどうしていくべきか……。コロナ禍は、瑞穂酒造がどこを向いて進むかを、あらためて見直すタイミングになったという。
同じ頃、TIMELESS CHOCOLATEの林さんと出会い、「沖縄には世界に誇るサトウキビや黒糖がある。そのテロワールをもっと生かしていきたいんだ」という話に感銘を受けた。
「泡盛同様に需要が低迷し、コロナの影響もあって、黒糖が過去最多の在庫を抱えていることは知っていました。自社の技術で、沖縄県の課題解決に貢献できないだろうか? と考えたとき、沖縄のサトウキビと黒糖を高付加価値化する、新しいラムの開発を決意しました。沖縄のサトウキビと黒糖を原料とした世界基準のラムを造ることで、これらの原料に新たな価値を見出し、次世代につながるアクションを起こしたいと思いました」と仲里さん。
ラムはサトウキビを原料とする蒸留酒で、世界のラムの90%以上は廃糖蜜が原料。しかし、沖縄ならば、新鮮なサトウキビのジュースを100%煮詰めた黒糖がある、という優位性を生かした持続可能なラム造りができるはず。
そうして仲里さんは、ラムを通して沖縄文化を未来へつなぐことを目的とした「ONERUM」を2021年に立ち上げた。農家や大学、飲食店、研究機関など、志を同じくする仲間たちとの協同プロジェクトだ。活動は黒糖を製造する8つの離島を知るところからスタートした。サトウキビ=黒糖=甘いというイメージだが、実は、甘さ以外の要素、塩味や苦味、酸味、余韻、香ばしさなどがある。その違いがどこに起因しているのかを探究。商品のラベルにはこうして得た各離島のストーリーが描かれている。
現在は8つの離島ごと単独の黒糖から造る「Single Island Series」、8つの離島の黒糖をブレンドした「Blended Islands Series」があり、どちらも瞬く間に評判となった。
そしてONERUMプロジェクトをスタートさせた年に、自社畑に植え付けたサトウキビから造るアグリコールラム(サトウキビジュース100%を発酵・蒸留する)「One Island Series」を年内に発表する予定だ。
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アート感覚で遊ぶサトウキビ栽培
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問い合わせ|瑞穂酒造
Tel|098-885-0121
https://mizuhoshuzo.co.jp
01|黒糖を進化させる仕掛け人たちの挑戦
02|沖縄初のBean to Bar専門店《TIMELESS CHOCOLATE》
03|沖縄の老舗泡盛蔵《瑞穂酒造》が醸す島の個性を生かしたラム
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05|黒糖を進化させる仕掛け人たちが語り合うサトウキビと黒糖に見る、沖縄の未来
text: Kiyomi Gon photo: Wataru Oshiro
取材協力=沖縄県黒砂糖協同組合、まるみつこうさく
Discover Japan 2024年7月号「沖縄」