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黒糖の魅力を引き算で表現する
沖縄初のBean to Bar専門店《TIMELESS CHOCOLATE》
|沖縄名産・黒糖を世界の「KOKUTO」に!②

2024.8.1
黒糖の魅力を引き算で表現する<br>沖縄初のBean to Bar専門店《TIMELESS CHOCOLATE》<br><small>|沖縄名産・黒糖を世界の「KOKUTO」に!②</small>

約400年もの歴史がある沖縄の黒糖づくり。その価値を再構築してものづくりをする、仕掛け人たちの熱い取り組みで、黒糖はいま「KOKUTO」として世界に大きく羽ばたこうとしている。

今回は、林正幸さん率いる沖縄初のBean to Bar「TIMELESS CHOCOLATE」へ。黒糖のテロワールを最大限に生かすためのシンプルなチョコレートづくりに迫る。

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焙煎し、旨みを引き出したカカオ豆を石臼挽きし滑らかなペーストに仕上げ、黒糖と合わせ長時間練り上げるコンチング作業。カカオに含まれている油分が均一になり、なめらかな口溶けに仕上がる

沖縄本島中部に位置する北谷町にある「TIMELESS CHOCOLATE」は、2014年にオープンした沖縄初のBean to Bar(ビーントゥバー)専門店。

オーナーの林正幸さんは、オーストラリアのメルボルンに滞在中、エスプレッソの奥深さに惹かれる。まず濃縮したエスプレッソを飲み、次に砂糖を入れて味の変化を楽しみ、さらに好みの味に仕上げるおもしろさ。しかし皆、コーヒー豆のテロワールには熱心なのに砂糖を語る人はおらず、「砂糖にもテロワールはあるはずだ。サトウキビを基幹作物とする沖縄には黒糖文化がある。沖縄で砂糖の可能性を探ってみたい」と移住を決意。

「世界のマーケットを目標としたときに、サトウキビをつくっている土壌はオーガニックなのか? という壁にぶつかると思うんです。島が丸ごとオーガニックの奄美群島の喜界島のようなことが、沖縄の離島でも実現したらいいですね」と林さん

黒糖を求めて離島をめぐるうちに、大きくふたつの分類(バニラや生クリーム、カスタードのようなタイプと、焦げたようなビター風味や塩味を感じるタイプ)があることに気がつき、テロワールによってここまで味が変わるのかと衝撃を受ける。2014年頃のことだ。当時、黒糖をそこまで深く掘り下げて、世に発信した人は沖縄にはいなかった。

カカオ豆に傷がないか、粒は揃っているかをスタッフが手作業で選り分ける

TIMELESS CHOCOLATEの製法は至ってシンプル。世界中から厳選した高品質のカカオ豆を仕入れ、豆の個性に合わせて殻を付けたまま、コーヒー焙煎で学んだ知識と技術を生かし、産地ごとに異なる味わいをもつカカオ豆を自家焙煎。旨みを最大限に引き出したカカオ豆の殻(カカオハスク)を砕いて、殻とカカオニブ(胚乳部)に分け、カカオニブをペースト状にして、黒糖を加えて練り上げ、テンパリング後、成型する。

カカオ豆には均一に火を入れることが大事

カカオと黒糖のみを原料とする、引き算のチョコレートだからこそ、味の表現に黒糖を用いるおもしろさがあると林さんは言う。

温度を均一に保ち、中の温風を循環させるコンベクションオーブンで、旨みを引き出すために殻を付けたまま焙煎する

「海外の友人に黒糖を食べてもらったときに、“これはなんのスイーツだ?”と驚かれました。砂糖を食べる文化がない外国では、黒糖はまだ未知の存在ですが、そこに可能性があると思います。以前、焚き上げたばかりの黒糖をお客さんに振る舞っていたら、『やーがなんでこの味を知ってるばー。私にとって黒糖はこの味が本物。ヤマトンチュ(大和人)がなぜこの味を知っているのか? この美味しさは沖縄の人にとっての大切なヌチグスイ(命の薬)です。ぜひ、広めてくださいね』と涙しながら話してくださって。黒糖職人・渡久地克さんとともに焚き上げた純黒糖でした。私たちは沖縄の黒糖文化をチョコレートで後世につなぎ、世界に発信していきたいと思っています」

カカオと、サトウキビからつくられる黒糖や島ざらめが、焙煎と発酵という究極の調理法によって生まれるラインアップ。左はシングルオリジンチョコレート、手前は生黒糖ボンボン、奥はカカオ黒糖
昔ながらの製法を用いた渡久地 克さんの黒糖は、手刈りしたばかりの新鮮なサトウキビから搾るジュースを、鉄製のシンメーナービ(沖縄の大きな鍋)に入れ、薪で一気に焚き上げる。薪で焚くことで、黒糖が煙の香りをほんのりとまとって独特の風味が出る

2020年に沖縄県の「県知事賞」を受賞

シングルオリジンチョコレート
自家焙煎で美味しさを最大限まで引き出したカカオ豆と、黒糖や島ざらめのみでつくるシンプルなチョコレート。酒との相性もいい

カカオ黒糖 CANDIED CACAO(写真右)
黒糖工房「上地屋」とのコラボ商品。深いコクと甘みのある西表島黒糖と、ピーナッツ風味のカカオを合わせた黒糖菓子

生黒糖ボンボンBOX(写真左)
あんのような口溶けの純度100%の黒糖を、砂糖を一切加えないガーナ産カカオ100%のチョコレートで包んだボンボンショコラ

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沖縄の老舗泡盛蔵《瑞穂酒造》が醸す
島の個性を生かしたラム

 
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外国人も多い北谷町砂辺の海岸近くにある店舗兼工房
チョコレートや黒糖に関する質問にはスタッフが丁寧に答えてくれる

TIMELESS CHOCOLATE
住所|沖縄県中頭郡北谷町宮城3-223
Tel|098-923-2880
営業時間|9:00〜18:00
定休日|なし

text: Kiyomi Gon photo: Wataru Oshiro
取材協力=沖縄県黒砂糖協同組合、まるみつこうさく

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